第27話 新年と願う未来

『ゴーン ゴーン・・・』「明けましておめでとうございます。」「おめでとうございます。」

「今年も、宜しくお願いします。」「宜しくお願いします。」

 瞳は、僕の後に続いて言葉を紡ぐ。聖也は、コタツでグッスリと涎が垂れていた。


 笑いながら、今年も新年が明けた。人混みは避けたいと、今日は寝正月である。瞳と夜更かししながら、テレビを見て寝たので、遅めのお節を食べる。


 親からの電話が来た。まだ本調子じゃないので帰省しないと伝えると父が出てきて

「鍛え方が足りんから、病気になる。」

 と怒られ、兄弟からは、

「何でも病気の所為にするなよ。」

 と怒られる。理不尽であろうと話が長引くので「分かった。」と答えて電話を切る。


 3日になり、昼前から初詣に出かける。人が多い、そして、寒い。


 体重が減ったこともあり、わたしのお肉の防御力では無力のようであった。


 参拝したら、カフェに寄って帰ろうと考えながら順番を待つ。


「早く参拝して、温まりたい。」「寒いの?」

「寒いよ〜。そっちは、大丈夫なの。」「いつもと同じじゃないかなぁ。冬だから、寒いのは当たり前じゃない。(笑)」

「温室育ちだから、寒いと枯れるのよ。(笑)」と会話しながら、笑い合う。


 ちびっ子は、ほっぺたが冷たくなっているけど笑っている。抱っこしてみると、『温かい?』背中は汗をかいてやがる!モコモコに着せてきたが、暑いのか?と思いながら、タオルで拭く。


 ようやく、日常を取り戻したのだと実感した。


 順番が来た、「パンパン」手を合わせ(順調に、完治しますように。普通に家族と居られますように。)僕は願いながら瞳を見た。


 黒い髪、白い肌、白い手袋で掌を合わせている。僕は、最後に(彼女が、幸せであります様に。)と祈った。


 お祈りが終わったのか、瞳は顔を上げて「お待たせ、行きましょ。」と3人で、手をつなぎ引き返して行く。


 ※ ※ ※ ※


 仕事始めも、上司からは

「よかったのか?」「手術の事でしたら、よかったです。」

 そして、僕は「ペースメーカーなんて入れたら、皆で心配されて、哀れまて居た堪れなくなりますから。」「そうか、ならいいが無理はするなよ。」と言われた。


 帰りに、井長クリニックへ寄る。


 久しぶりに、井長先生に会った。


「明けましておめでとうございます。」「おめでとう」

「今年も宜しくお願いします。」「あぁ。よろしく。」

 紹介状以外にも、やり取りしていた様で、「うん。投薬治療ね。まぁ、日常生活が送れるか様子を見させてもらうよ。毎日、朝や寝る前でも脈を測っといてね。」「はい。」

「後、年に最低2回は検査をして問診以外でも数値を確認するからね、3回から4回で、調整しましょう。」「ちょっと多くないですか?家族に心配させたくないし、頻繁に検査はするのは避けたいのですが。」

「いやいや、無理して退院して状態も完治に程遠いから仕方ないでしょ。でも通院間隔は、月1でもいいよ。」「ありがとうございます。」

「あ~、薬は余り見られたくないなら、一包化してもらうといいよ。後は頓服で鎮痛剤ね。じゃ、出しておくね。」「ありがとうございました。」


 僕は、病院を後に帰宅した。


「ただいま~。」「おかえりなさい。」と温かいご飯に、お風呂。


 最高なのである。当たり前がそうでなくなると、辛いのだと実感する。


 こうして、僕らの新年は明けていった。

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