第25話 サンタと年末と
いつものように、朝が来る。
薬の方は、変わらないが普通に生活がしたいだけなので、このくらいは我慢である。
あれから、見舞いを兼ねて様子を見に来た上司からも、お菓子を貰った。
(流石である。終始、笑わせてくれる。適度に長居せずに帰っていく。)
「無理はしないようにな。」「皆に、よろしく伝えて下さい。」
手を上げながら部屋を後にする。
診察で、未だに変化が脈に無いが、意識が無くなるようなこともなく。経過を維持観察であった。
僕は、「年内には、何とか帰りたい。何か方法は、ないですか?」
「今の状況で、退院は危なくて無理です。不整脈が改善し脈が上がって来れば、外来対応でもいいでしょうが。」「自宅療養から、来年は仕事も復帰したいので諦めたくない。」
と一方的な言い分を、ぶつけてしまった。
「お薬を選択したのだから、調整も時間もかかるのも分かって下さい。効果が出ない、可能性だってあるのだから。」
しかし、仕事をしなければ生活が成り立たないし、家族との時間を大切にしたいという想いが勝ってしまう。
「それでも、外来でお願いしたいです。仕事も家族も大切なんです。」
「ギリギリまでは、見ておかないと、それで最終的に判断をしましょう。」
ありがたいことに、聞く耳を持ってくれた先生で良かった。
しかし、頭痛も吐き気も副作用が出たのだから、脈もちょっと上がってくれても良いのに。
胸痛との関係性もわからないのに、とボヤいてしまう。
※ ※ ※ ※
今年も、後10日で終わる。
調子がいいと思う。思うのは自由なので、勝手に思い込むようにしている。
瞳と聖也は、相変わらず寒いのに見舞いに良く来てくれる。
「いつも、ありがとう。」「いいわよ。調子は、どうなの?」「おかげさまで、最近はいい感じ。」「早く、退院出来るといいね。」
勿論、早く帰るつもりだ。
それにしても愛の言葉を、わたしは余り口にする事がない。
態度と行動で表現してきたつもりなのだが、今はそれすら出来ていないじゃないか。
瞳は、凄く親身になってくれている。
僕は、どう報いていけるのかなぁ。と考えてながら1日1日と過ぎていく。
イブの日、「明日は、診察がある見たいね。」と看護師さんに言われた。
「今年も終わりですもんね。来年は、良い年になります様に(南無南無)」「まだ、早いわよ。」笑いながら少し話した。
翌日は、朝から診察で先生に呼ばれた。
今年、最後のかと思いながら椅子に座る。
先生から、
「ここ数日だけど、少し脈が上がって来ていますよ。不整脈も、来た時ほど酷くない。」
少し笑いながら、ちょっと驚きながら話が続く。
「正直、まだ早いと思うけど条件付きで退院を29日で認めてもとなってね。」「ホントですか!」僕は心底ビックリした。(南無南無した会があった。)
「昼間で、50あるかもで夜は、30は超えたけど40は無いそうだ。」「そんな数値でいいの?」「駄目ですよ。条件付きです。薬の方は続けて服用すること。心電図を定期的に受けること、年3、4回でお願いします。返事と紹介状を書いておきます。掛かり付けのクリニックの先生に、渡して下さいね。情報はこちらでも共有させて貰いますよ。」「はいっ」
思い掛けない、状況に只々嬉しくてニヤけてしまう。
「気をつけて生活をする様に」、ここに来るまで言われていたことと同じだった。
「倒れてここに運ばれたら、手術だからね。」「あ~、あと分かってるだろうけど、運動禁止ね。心臓に負荷を掛け過ぎると危険だから。息切れしない様にして下さい。」
注意事項など聞きながら、帰れる事に舞い上がる心が、体にも落ち着かない様で、
「最後までちゃんと聞いて下さい。取り消しますよ。」と怒られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます