第24話 変化と延長線

 夕方からの服薬量は、言われた通り半分になっていた。(何故わかるのか?プチッと出す前に、裏が100が見えなくて5が見えたからだ。半分の大きさではなかった。)


 翌日は、ギリギリ朝から我慢できる程度に、副作用は治まっていた。


 頭痛はしても、寝込むほどではない。吐き気はするけど、吐いたりしない。


 食欲は殆ど無いが、食べようと思えば、流し込むことができそうな気がした。


 薬とは恐ろしい物だと思った。


 半分とはいえ、同じものでも量でここまで、違うのだから。今日は、久しぶりに心が落ち着いて過ごせそうだ。


 そう言えば、痛みも苦しみも殆ど感じない。


 この日、頭痛薬もなくなった。


 お昼になると、瞳と聖也がやって来た。


『ガラガラ』いつもの瞳だ。


「来たかぁ。」「来たよ(笑)」

「調子は、大丈夫?」「薬も飲んでるし!大丈夫だよ。」

 点滴もして無いし、苦痛で寝込んでもいない。


 僕は、今年1番の笑顔で答えた。

「もうそろそろ、帰れるかなぁ。」

「まだ、わからないでしょ。」

「大丈夫だよ。そんな気がする。」

「気がするだけでしょ。」

「瞳のご飯が食べたいんだ。もう、病院食は、懲りごりだよ。」


 瞳は、こっちで3人暮らしを始めて、レシピを集めてバランス良く手料理を作ってくれる。

 そして、レシピノートなる物が、引き出しに存在することを僕は知っている。


「ちびっ子と一緒に寝られないのも寂しい。」

「もう直ぐなんでしょ。」

 瞳の言葉に、聖也も可愛い。夜泣きがなくなり、纏まって寝ることが出来るようになると、体も精神的にも楽になる。


 朝の保育園が、なかなか慣れない。


 泣き出し、しがみつかれると、置いていくことに罪悪感が芽生える。


 瞳と、いままでの事やこれからの事を話しながら楽しい時間は、早く過ぎていく。


 また、瞳と聖也との暫しの別れである。


「またね。」

「またね。気をつけてね。」

 と言葉を交わし、扉が閉まる。


 夜の、食事の後に看護師さんと話をした。


「今日は、調子がよかった。思いの外、早く帰れるかも。」

「それは、良かったね。でも、脈は相変わらず低いから焦らないでね。」


「大部屋にでも、移ろうかなぁ。話し相手もいない。」「それは、良いかもしれないけど、面会は場所を変えるか短時間になるわよ。」

「嗚呼、そうか。」

 と言いつつ、現状で治療しよーと思った。


 翌日、朝から職場へ連絡をした。


 仲の良くしてもらっている上司へ、簡潔に全てを話し

「部長、まだ入院が少し伸びそうです。」と申し訳ない思いで報告した。

「もう、後2週間くらいだし、今年は療養でええやろ。上とか他には、俺から言っとくから、何も心配線でええ。」

「上はともかく、皆へ全部言うのはちょっと。」

「分かっとるわ。変に気ぃ使われるのもやり辛いやろ。近い内に、様子を見に行くわ。」

「ありがとうございます。」


 ちょこちょこと、お見舞いに来る会社の同僚や、友人に(ありがとう)と呟く。


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