第18話 検査入院と孤独な夜8
「ふー」
そろそろ、検査の時間だ。
瞳と聖也に手を振り
「ちょっと、行ってくるね。」
ヒンヤリした台に横になると、準備が始まる。
麻酔は部分麻酔だ。
痛覚の確認も終わり、足の付根から何か伝う感じがする。
(あ~、見られてる。恥ずかしい思いがよみがえる。)
「今、入れてますからね。何かあれば教えてください。」
と言われる。
何かお腹のあたりが、モヤモヤする感触があるがそんなのは思い込みだろう。
しばらくすると、挿入位置まで到達したのか、
「では、始めます。」
と言われる。
一気に流れる電流に、胸が跳ね上がる感じがする。
鼓動が早い。
「上げていきます。」
聞こえる言葉に反応できないが、さらに鼓動は早くなる。
すると、スーっと体が楽になる。
電流が止まったのだ。
だが、終わりではなかった。
「はい、流します。」
の言葉で最初と同じ感じだが、「まだ、こらえてね。」
さっきより鼓動が早くなる。
(息がしにくい。)
「だめ、まだ頑張って!」
聞こえる言葉に目配せで何とか合図する。
「もう少しだから」
看護師さんも
「もうちょっとだから」
と声が聞こえる。
(限界みたい、意識が保てないと思った。)
「もう、終わるから。」
「ダメダメ」
「眠っちゃ駄目」
周りが慌ただしく動いている。
もう、無理と意識が薄れる瞬間、「はい、終わりましたよ。」
と聞こえる。
楽になる体が汗で、寒気がする。
気持ち悪い程、汗をかいていた。
「楽にして貰って良いですよ。」と言われ(ボーっと)天井を眺める。
やっと終わったと実感した。
後処置の途中で、止血の為に重石を乗せること、今日は安静にして過ごすこと、これが取れるのは明日の術部の確認をしてからになることを聞いた。
(忘れていた、わたしはトイレはどうなるのか?それは仕方がない。どっと疲れたので、そこまでの余裕が無かったのであった。)
病室へ戻ると
「只今、戻ったよ。」
瞳は、
「おかえりなさい、お疲れさま。」
術後のことを話し、一息ついていると、先生が様子を見に来た。
ずっしり重い物が乗っているし、動けないので、止血の確認も今は問題ないといわれた。
『あっ』わたしは、大事な事をここで思い出した。
先生に
「あの、トイレはどうすればいいですか?」
「あ~、今日は、歩く事は出来ないから、方法は2つあるよ。
1つは、尿瓶だけど使ったことある?もう1つは、チューブを入れてパックに溜めてまとめて処理する方法だけど、どっちがいい?」笑いながら言ってるが、どちらも拒否したいに決まっている。
先生から、
「特に痛くもないからね。」
笑っている。
『くそっ』と思いながら、
「尿瓶でいいです。」
と答えた。
(見られたくないと思った選択ミスであった。)
それじゃと行ってしまう先生、持ってくるねと一緒に看護師さんが出ていくと、瞳と聖也に昨夜の出来事を話す。
瞳は、動けないわたしをいいことに、タオルケットを捲りその下も捲り、覗いていた。
「くくく、あはははっ」
何の壺か分からないが、変な壺にハマったらしい。
なかなか、止まない笑い声に、くそっと恥ずかしいのを我慢してるのはこっちだよ、と思いながら「もう、いいでしょ」
と瞳をなだめる。
それから、尿意がやってきて、初の尿瓶の出番であった。
致し方ない、瞳にちょっと外へ出ていてと話し、尿瓶を取ってもらう。
(想像が足りなかったのだ。決して悪気があった訳では無い。)
起き上がれないわたしは、股に手が届かない!
「あれっ、ちょっとやばくない。」どうしようかと、手を伸ばした時、手から滑った瓶は足と足の間に挟まりもう、手に取ることは出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます