第17話 検査入院と孤独な夜7

 体調も良く、顔色も悪くないと朝から言われた。


 瞳も、お昼過ぎには来るだろう。


『コンコン』

 ノックをしながら、入ってくる。

 寒さのせいか、顔が白い。

 コートにマフラーをかけると、僕の横に座る。


 暫くすると僕と瞳は、明日のカテーテル検査のことで、再度説明を受ける。


 ちょっと違ったのは、カテーテルを検査後に1部分を残しておくことであった。


「何のために残す必要があるんですか?」

 と聞くと、ペースメーカーの取り付けの際に使えるようにしておくとの事だった。と記憶にあるが正確な分からない。

(残すと言われたように覚えているだけである。)


 僕も、瞳も、もう聞くのを止めて、先生に

「宜しく、お願いします。」

 と終わることにした。


 部屋に2人、今日は、聖也を保育園に預けてきていた。


 僕は

「ペースメーカーだけが、治療法に決まった理由じゃ無い。

 別の方法が有るかも知れない。」


 僕の言葉に、頷く瞳。


『何としても、回避したい。

 迫る現実に、抗う方法を僕は持っていなかった。

 しかし、認める理由にはいかなかった。』


 ※ ※ ※ ※


 その夜、僕は新たな現実に抗えないでいた。


 それは、20時ごろに

[いつもの同じくらいの年の]

 看護師さんが来て

「ごめんね~、忘れてて。明日の検査で、剃らないといけなかったぁ。」


「何を?」

 と一応確認する。


 笑いながら、

「下の毛!」

 と言う。


(何おう!)と思ったら、

「止血や感染症の為に毛は剃っておかないといけないの。」

 確かに、足の付根からカテーテルをいれると聞いていたが、そんなトラップが潜んでいようとは思はなかった。


「大丈夫よ、慣れているから。切ったりしないから、安心して寝てていいよ。」


 カミソリと剃った毛を入れるトレイを手に近づいてくる。


(いやいや、わたしの心が大丈夫じゃない。しかも、わたしは、初めてで慣れていないからぁ。)


「あっ、自分で、綺麗にちゃんと出来るなら、それでも良いけど、とうする?」


「やった事ないので、綺麗とか分からないし、ちょっとは切ってしまうかも知れないけど。」


「なら、任せてそんなに時間もかからないし、おじいちゃん達の何回もしてるからね。」


「いやいや、まだ20代だよおじいちゃんじゃないし、何の罰ゲームなん?」

 最後の抵抗で声を上げるが、もう、すぐ横でわたしのパジャマのズボンは下げられそうだった。


(瞳と聖也にしか見られたことないのに~。)心の声が叫びを上げるが、淡々と進める看護師さん、『ジョリ、ジョリ』と音が聞こえる。


 手を顔に当て、見ないように視界を防ぐ。

 色々と、これからの事など考えなきゃと思っていたのだが、とんだ羞恥プレイである。


「終わりましたよ(笑)」


 座り下を見ると、綺麗に剃られ顕になっていた。

「やっぱり、恥ずかしかった」

「当たり前じゃん、ふーっ」

 と息をつき、片付けをしながら少し話して、

「じゃ、今日は早く寝てくださいね。」

 と部屋を後にしていく。


 違和感しかない。手を入れて確認しても、あったはずのものが無く、ツルツルとした感触に深刻に考えてたのに、急に笑いがこみ上げてくる。

 今日は、最後にリラックス出来たように感じ、余り悩んでもしょうがないと少し気持ちが楽になった。

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