第16話 検査入院と孤独な夜6
翌日は、朝食が終わり、10時ごろに検査の為に移動した。
心電図の電極を貼り直し、ここで測りながらするらしい。
まず、歩くのみ。ただひたすら真っすぐ歩くのみ。
「心拍数も順調に、上がっているよ。」
100回を超えても、歩く。
と
「はい、休憩。」
と言われたので器具から降りて息を整える。
くらっと目眩がする。
心電図を見ながら、先生が顔をしかめる。
次に、踏み台昇降運動みたいに、登ったり降りたりするだけだ。
また、順調に数値が上がっている。
130回を越えたあたりで、
「はい、止めて休んでいいよ。」
と、心電図を眺める先生たち、看護師さんから
「どお、気分は悪いとか無い?」
聞かれた事に、
「大丈夫です。」
と言った所で酷い目眩で、倒れ込む。
看護師さんが受け止めて、椅子へ掛けさせてくれると、
「顔色が真青よ」
と教えてくれる。
先生から、
「原因は、分からないけど、普通はゆっくりと心拍数は落ち着いていくけど、貴方の場合は急にストンと落ちて行ってしまう。」
首を傾げながら悩む先生、看護師さんにサポートされ、酸素を吸いながら、ゆっくりと落ち着く。
電極の貼り替え、酸素チューブを付けて、着替えると部屋へと戻った。
電話が鳴る。
実家からの様だ。
おそらく、母からであろうと、「もしもし」
と出ると、やはり母であった。
瞳から、連絡が合ったのだろう。
「大丈夫なの。どんな病気なの。」
と色々と聞いてくるが、わたしも分からないことばかりなので、
「大丈夫だし、まだ何もわからないよ。」
しかし、僕の声は
「ごめんね。」
と母の言葉と泣き声でかき消されていく。
「丈夫な体で産んでやれなくて。
わたし(母)が至らないせいで、『うぁぁぁ・・・』」
最後の方は、もう言葉も何を言っているのか良くわからない。
僕には、兄がいた。
そう、『いた』である。
不幸な事故だった。
今の母には、また子が先に逝くことは耐えられないだろうと分かっている。
それを、ただただ自分を責めているのだと言う事を理解した。
僕は
「お母さんは、何の責任も関係も無いことだから、心配しないで、今度の帰ったら、寿司でも食べに行こう。」
僕が話しても、少し落ち着いた泣き声と
「ごめんなさい。」
と謝り続ける声は嚙み合うことは無かった。
僕はこれが、先天性でも遺伝でもどうでもいい。
産んで育ててくれた親に、何の責任があるのか。
親不孝者は、僕なのだから
「こっちが、ごめんね。」
まだ、逝ってはだめなのだと、改めて思い直す。
それから、残り僅かな検査と今年の終わりに不安を覚えながら横になる。
今は、会えない瞳と聖也、母たちに
「おやすみなさい」
と呟く。
大丈夫だと、伝わるといいなぁ。
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