第13話 検査入院と孤独な夜3
朝陽が差す病室で、酸素マスクがとれた僕は、窓の外へ視線を送る。
向かいの建物と雲の残る青空に、気分も幾らか晴れていく。
お昼過ぎに、瞳がやって来た。
聖也は、保育園でお留守番だ。
『ガラガラ』と扉が開くと
「どお?」
と言いながら入っくる瞳。
なんだか、目元が赤く感じるのは、気のせいだろうか?
「何もないよ。
布団も2枚あるし、エアコンも付いてるので寒くもない。
我が儘を言うなら、枕が低いかなぁ。」
笑いながら答えると、
「持ってきたよ。」
とおにぎりが3個ベッドの台に置かれた。
「梅に鰹節にツナ、あとお茶の予備を買ってきた。」
「ありがとう。
見つからない内に、棚の引き出しに隠しておこう。」
とベッドから立ち上がる。
暫くすると、看護師さんがやって来て
「明日はCT検査を午後から、予定してます。
お昼は、検査で食べられないけど、水分は取っていいですよ~。」と言って検査の説明をしてサインしたら、戻っていった。
「同伴は、いらないみたいだね。
カテーテルの時は、ごめんけど頼むね。」
と話をする。
瞳は、「これは何?」と指を指した。
「・・・
あ~、これは酸素だよ。
念の為に準備してるみたい。」
(既に、使っている事は言えなかった。)
「早く帰りたいなぁ。」
「まだ、来て何日も立ってないでしょ。」
「こんなに寝れる時間があるなんて、使い道に困るなぁ。
聖也は、泣く、食べる、洗われる、そして、具合も悪くなるのが当たり前で仕事だから、どお?
大変じゃない。」
「こっちは、大丈夫。心配しなくていいよ。」
笑顔を見せる瞳だった。
僕は、エレベーターまで見送る
(心電図を測っているので、出歩けないのです。)
と廊下で目眩を起こし手摺りに掴まりながらしゃがみ込む。
近くの看護師さんの肩を借り、ベッドに横になる。
自然と涙が流れて耳をつたう。
夜、電話をかける事が出来なかった。
(おかしいな。
ゆっくり安静にしているのに、症状が悪くなっているのか?
まだ動けるよなと呟く。)
瞳と聖也と一緒にいたい。
『何もなくてもいい、お願いします。』
と神様にお願いする。
無宗教なので虫の良い話ではあるが、心を落ち着けさせるのに何でもよかった、それで少しでも安心できるなら。
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