第11話 レティシアとフラワービューイング!
始まりは不確かだけど、シンプルで圧巻で、美しいのは間違いない。この「お花見」というものを考えたオヤジは天才だ!
「オヤジとは限らないでしょ?でもまあすごいわね。こんなに一斉に花が咲いて花が散るものなのかしら。不思議」
毒舌マリーでも素直にさせる。
我々は今桜のお花見に来ている。キモノという服を着て、だっ!
「レティシア、どうして着物?で、何でそんなに色っぽいの!お姉さんたまらんよ、うなじとか」
舞い散る桜の花びらの中で桜柄の服装はどうかと思ったけど、悪くはない。こういう時もう少し髪の色が濃ければなぁなんて思う。
「んー、いつものスタジオの前通ったら、襲われた。なんか私を襲うの流行ってるわけ?」
「国民の三大義務なのよ」
これがマリー流のボケである。突っ込みにくい。
「後で撮影に来るってよ?皆可愛くて良い画が撮れるんじゃない?」
学校からサンカク山へ向かう途中の川の河川敷と土手が、お花見会場になっている。
ご先祖がこの星に来てしばらくして植えられたそうだ。なん百年も丁寧にお世話されてきて、今年もきれいな花を咲かせてくれる。
「レティシアは花より酒だよね」
「馬鹿なことを言わないで。私は美味しいものが好きだけど、美しいものはもっと好きなの。たとえば自分とか」
私が人の中の至高であるなら、桜達は花の中では究極。敬意を払うべきだわ。ってなにソフィア!引っ張らないでって!ヤメロ~!緩んだらコレ、一人じゃ着られないの!ドコニテヲイレテイル!
「成敗!」
「ソフィアのバカ!ヘンタイ!痴漢!」
なんとか、ギリギリ耐えた。
バカソフィめ、脱げたらどうすんだ。
「レティシア……着物の下、下着……」
「着とるわバカァ!」
バカはおいといて……。
「先行ってて良いよ、私ゆっくりしか歩けないから」
いつもみたいな歩幅では歩けない。きものは着るだけでおしとやかレティシアの出来上がり。
「そう言うわけにもいかない。私らも重いし」
特製サンドイッチのフルコース、デザートのフルーツサンド四人分!カトラリーのセットとソフトドリンク四人分!
「レティシアのが一番要らないよね」
「何を言うか、花見に必需品じゃろうが!罰よ大事に持ってなさい」
ソフィアと私はニホンシュ一升瓶を1本ずつ。
「私、レティシアみたいに力持ちじゃないのに……」
みんなでヨタヨタ歩いて、確保している場所に着いた。
「お待たせ~」
既に五人来ていた。あと三人かな。
一団体につき桜一本という贅沢仕様だ。木をぐるっと囲うと対面とはお話しできなくなるから、自然と片側に集まる。
「来たね~うわ、レティシアちゃん今日はお着物!?めっちゃ美人」
「薄い金髪も良いね。桜の景色にとけ込んで、桜の妖精だ」
「ありがとう。服はなんか動きにくいけど……」
「ちょっと来てみ」
友達のひとりに呼ばれた。何だろう。
「少し緩めてあげる。キミはいっぱい食べるだろうから、あらかじめね」
そうなんだ。実は着ているだけで結構苦しい。スタジオの姉さん達、ウエストが思ったより締まるって楽しんでたし。
「ほら、息吸って。……こんなものかな?苦しくない?」
「うん、すごく楽になった」
「ちょっと固定が怪しいか?キミの体型って和装向きじゃないもんね。それでも似合うってどうなんだ」
上手なもんだ。ソフィアが私も緩めてあげようと思って引っ張っていたのよって言ってるけど、絶対胸を揉みたかっただけだと思う。
「ありがとう。お礼にこちらを……」
復刻肉肉サンドをひと切れ献上する。
「うむ。ありがたく頂戴する」
「ささ、こちらも一杯」
香りは二の次のきりっとしたヤツだ。
「肉の味を邪魔しない、しかし協調しない。さすがレティシアのチョイスだ」
「あ、もう始めてる」
「あ、お肉も焼くの?」
「花見だし」
「そうなの?」
焼いたお肉!誰か冷たいシュワッとしたの持ってきてないの!?
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