第10話 レティシアと初夏の日
「マリアちゃん、どう?」
「わかんない。誰もいないし」
「それもそっか。一回降りようか」
「ヤーダ!」
私は幼女を肩車している。
ポツンと独りで、おそらく迷子になっていたので仕方なく声をかけた。彼女にとって運が良かったことは、私が
仕方なしに肩車は続けるが、どうにも人がいない。そりゃ昼間はね、住民が減ることは分かるけど、この半時誰にも会わない。
「そういえば、この街で誰かにあった記憶がない」
たぶん住民の皆さんは隠れて暮らす必要があるのだ。気配を消し、私たちが通り過ぎるのをじっと待ってる。きっと魔族とかの生き残りなんだわ。
「お母さんと歩いてて、公園にイッヌがいたから見てたらお母さんいなくなった」
「何?そのイッヌって」
「お姉ちゃん知らないの?イッヌ見たこと無い?ワンワンって鳴くのよ。シッポ振って、小癪に可愛いの」
犬か。
「まあいいや。じゃあお姉ちゃんとその公園で待ってよか」
「いいの?ヒマジンなの?」
幼女、ヒマジンとフリーウォーカーを一緒にするなよ。
「まぁとにかく降りなよ」
「ヤーダ」
「嫌かぁ」
座るとか、坂のぼるとかやりづらいんだよな。
とにかく公園へ向かおう。
体力だけは無駄にある。マリアも軽いし、やけに軽いな。
「マリアちゃん、あなた……」
「あ、お母さんだ!」
えっ?
マリアは器用に肩車を解除して私の背中を滑り降りる。
「お母さ~ん!レティシアちゃんありがと!またね」
ええ?お母さんってどこ?何で私の名前……。急いでマリアが走っていった先の角に行って、曲がると、誰もいなかった。
「あんたが私の家に来るなんて、珍しい」
「あはは……そうだよね~」
私はマリーのお家にお邪魔していた。
あの後冷静になると、どうにも怖くなったのだ。
あの子、つまりは幽霊って事、だよね!
助けてほしくて、もうマリーしか思い浮かばなかった。電話するとマリーは驚いてはいたが、何も聞かずに今晩は泊まっていくように言ってくれた。
マリーは家族暮らしで、優しそうなご両親と可愛い弟がいる。
「お邪魔します……」
「あらレティシアちゃん、久し振りね!また美人さんになったんじゃない?」
「いらっしゃい。狭い家だけどユックリしていくと良い。娘に聞いたけど結構イケるんだって?」
「パパ、レティシアにあんまり飲ませないでよ。ただでさえ依存症じゃないかって疑ってるんだから。まあ……、今日は良いけど」
あ~何かあったのやっぱり分かってる。サスマリ。
「弟君は?」
「照れて出てこないだけ。晩ご飯の時には出てくるわよ。また一日外にいたんでしょ?シャワーしてきて。着替えは私の……チッ」
舌打ちされた!
「ママ、レティシアにママの着替え貸してあげていい?」
「そうね、良いわよ」
なんか、スイマセン。
「で、どうしたの。何があったの」
何故か二人でお湯に浸かってます。ソフィともたまに入るから、そんなものと思ってた?ナルホド。
理由も話さずお世話になるわけにもいかず、たぶん私の何か勘違いか何かなんだけどと前置きしてから今日のことを話す。
「それって」
マリーの顔色も心なしか青ざめてる。そうだよね怖いよね。
「私小さい頃、三歳くらいのときかな……グリーンヒルズで迷子になったことがあるんだ」
「え?」
「その時一緒にいてくれたお姉ちゃんが、すごく綺麗で天使様みたいで……」
ちょっと待て!お湯は温かいのに鳥肌が……
「しばらくしたらママが見つけてくれて。お姉ちゃんにお礼を言おうとしたら、すって消えちゃって……」
「マ、マリー?」
その時、浴室の外に人の気配がして、二人してビクッとなった。
『マリアンヌ、着替え置いておくわね、そろそろ出てきなさいご飯にするわよ』
「マリアちゃん!?」
マリアンヌママのご飯はおいしかった。あんまり覚えてないけど。私とマリアンヌはマリアンヌパパのとっておきウイスキーを一瓶ほぼ飲み干して、よけいなことを考えず,ベッドで一緒に眠った。
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