音量を小さく
伏見 明
夕日
高校生の頃通った道、夕陽に照らされる。
ニワトリがなぜか歩道の真ん中にいた道を今もまた通る。
最後に歩いたのはもう10年も前になる。
ニワトリがいないかと少し期待しながら、梅雨前の何とも言えない涼しさを感じていた。
祖父が死んだ。
東京に行ってもう3年になる。まだ3年か。
葬儀の前日、従兄弟と地元のバーで飲もうと言う話になった。
彼の用事が終わるのを待つのも面倒だったので歩いて40分の地元のバーまで歩みを進めている。
一頻り夕日と草の匂いを堪能した後、イヤホンを付けて音楽を聴く。
最後のこの道を歩いた時より不思議と音量が小さくなっている。
自分の歩く音、車が通り過ぎる音をメインに、音楽がBGMとして流れている。微かに聞こえる音楽は変わらず僕の胸を揺さぶる。
音量を小さく 伏見 明 @fushimiaki
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