第15話 出会い
俺はあの後、朝食を食べ、外出した。行先は当然、冒険者ギルドだ。アヌとイシュタルはお留守番だ。眠そうだったのでゆっくりしていてもらう。
俺たちの魔物退治に参加してくれる冒険者を探しに来たのだ。イリアは俺の腕の中だ。
イリアは大興奮である。見慣れないものが珍しいのだろう。
「あ、あれおいしそう」
イリアがおいしそうと言って指差したのは、串焼きの屋台だ。冒険者ギルドに通じる大通りには、屋台が多く出ている。正門に近づくにつれて増えていく。貴族街の方に近づくにつれてなくなっていく。
「店主、串焼きを2本くれ」
「あいよ、ちょっと待ってな」
そういって店主は串焼きを焼き始めた。焼いてあるのがちょうど売り切れたようだ。屋台の前で待っているとおいしそうなにおいがしてくる。たれのにおいだろう。
「あいよ、串焼き2本だ」
俺はそう言ってもらった串焼きの片方をイリアに渡す。
「ん!」
イリアが口に入れたら驚いた。
「どうした?」
「おいしい、すごくおいしいよお兄ちゃん!」
「ハハハ。坊やにそう言ってもらえると嬉しいね。ほら、もう一本やろう」
「!ありがとう。おじちゃん」
イリアは新しいのにかじりついた。最初のはもう食べ終わっている。早くね?
「いいのか?」
「いいんだよ。そんなかわいい坊やにうまいって言ってもらえりゃ、宣伝効果は抜群だ。ほら見ろ、どんどん人が集まってきそうだ」
「そうか」
大胆なのだろう。気の良いおっさんだ。確かに人は集まってきている。
俺も食べてみる。口に入れた瞬間、肉のうまみとタレのうまさが口の中に広がる。
しっかり脂がのっている。だが、くどくもないようにされており、ずっと食べていたいと思わせる味だ。
もう一口食べようとしたとき、イリアがじっとこっちを見ているのに気付いた。こっちというよりは串焼きに視線は向いている。
「ほら、あげるよ」
「いいの?」
「ああ、いいよ」
花が咲いたような笑顔を浮かべる。俺が持ったまま串焼きを食べた。相当おいしかったのだろう。
「帰りにまた買いに来るよ」
「お?今じゃなくて良いのか?」
俺は後ろに視線を向ける。
「大量に頼みたいからな。後ろで待っている人を待たせたままにするわけにはいかないからな」
「そうか。なら何本買う?焼かずに待っていてやる」
「お、それはありがたい。では30本で頼む。これは先ほどの代金だ」
そういって俺は銀貨三枚を渡した。
「おい、兄ちゃん。これは少し多いぞ」
「手間賃だよ。じゃあまた」
「そうかい、待ってるぞ」
そういって俺は進みだした。
「おいしかった!」
イリアは満足したようだ。だがな、
「口元にたれがついてるぞ」
俺はストレージから出したハンカチでイリアの口元を拭いた。
「ありがと」
「はい、どういたしまして」
などと話していたら俺は冒険者ギルドに着いた。
冒険者ギルドの中は、昼前ということもあり、そこまで混んでなかった。中に入って周りを見回してみる。強者というのは、立ち振る舞いやその人の雰囲気などで大体わかる。
依頼ボード前には強そうな奴はいなさそうだな。酒場のほうには、おっと、
「おい、お前」
あの男二人に女二人のパーティーは
「おい、無視するな!」
何だよ五月蠅いな。
声がしたほうを向くと、身長二メートルはあるだろう男が立っていた。全身に筋肉がついているが、どちらかといえば、見せるための筋肉だな。
「ここはガキを連れて来て良い場所じゃねえんだよ」
俺がイリアを連れていることにご不満なようだ。だが
「お前、邪魔だよ」
邪魔なことに変わりはない。なんで俺はこういう奴らによく絡まれるんだか。
「何だとこのクソガキが、いいだろう。その傲慢、身をもって悔いるがいい!」
そういいながら男はこぶしを振りかぶってはなってくる。
だが、顔めがけて来たので、イリアを持っていない右手で止める。
「なあ!?」
男はつかまれたことが意外だったのか驚いた後、手を動かそうと頑張っている。顔が力んで真っ赤だ。
「お、お兄ちゃん」
イリアの声で下を向くと、俺の胸に顔をうずめて泣いていた。
「怖いよ」
「大丈夫だよ」
この男、
「イリアを怖がらせたな?」
男のほうを向く。
「ひっ!」
男と目が合った瞬間、男が情けない悲鳴を上げた。男のこぶしは俺に握られて、ミシミシと音を立てている。
「どうした、情けない声を上げて。先にケンカを売ったのはそっちだろう?このまま見逃してもいいが後腐れがあると面倒だからな。しっかりと処理をしておこうか」
男の腕をひねる。そうすると男は腕と連動して地面に転がった。そうすると俺は男を上から見下ろす形になる。
「さあ、後始末を始めようか」
固有魔法〈創世〉を使い、手に普通の剣を生み出す。それを逆手に持ち替え、男の顔に刺そうとした瞬間、
「ちょっと待ちな、兄ちゃん」
別の男に止められた。手にしていた剣は、男の顔の横に突き刺さった。
この男、さっき俺が強そうだと思ったパーティーの男だ。全身に筋肉がついているが、目の前で転がっている奴とは違い、実戦で鍛え上げられたものだろう。
そして歩き方からも相当な強者であることが分かる。
「なんだ?」
「いくら何でもやりすぎだ。そいつを見ろ。気絶してるぞ」
男を見ると本当に気絶していた。まだ何もしていないのだが。
「じゃ、いっか」
「ああ、もういいだろう。お、そうだ。俺の名前はトルカだ。よろしくな」
「ああ、よろしく」
こうして俺は、パーティーと接触した。
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