第16話 月光の刃

 俺はお仕置きをしようとした時、トルカと名乗る男に止められた。俺はなぜか彼に気に入られたようだ。

「お前さんを俺のパーティーメンバーに紹介させてくれや」

「まあ、いいか」

 彼のパーティーメンバーも強そうではあったからな。

「それより兄ちゃん。この剣、放ったままでいいのかよ」

「別に特別な付与はなにもされてない普通の剣だが?」

「この剣、鋼で出来ているだろ?それも結構良質な。マジックアイテムほどじゃないが、相当な強度を持ってそうだぞ?この剣を普通というのはちょっと」

「そんなことないと思うが、まあいい」

 そういって俺は指を鳴らす。そうするとその剣は霧散した。

『なっ!?』

 事の成り行きを見ていた冒険者たちが皆驚きの声を上げた。剣が消えるというのはそれほど非常識なことなのだろう。

「さあ、行こうか」

「あ、ああ。そうだな」

 こうして、決闘に向けた準備が整い始めたのだ。


 俺が今座っている机には、俺とイリア以外に4人の人間がいる。


「それじゃ、もう一回自己紹介と行くか。俺はAランクパーティー、月光の刃のリーダーをやっているトルカだ。武器はこの大剣で前衛だな」

 子供のような笑顔だな。銀髪を短く刈り込んでいる。先ほど並んだ時の感覚だと、身長は2メートルほどであった。全身に筋肉がついていてその上にハーフプレートアーマーをまとっている。この身長で大剣を使うのか。イポーレスのようだな。

「Aランクなのか」

「その通りだ。これでもまあまあ名は通っているぜ」

 Aランクパーティーとなればそりゃそうだろう。なんせ冒険者の実質的な頂点なのだから。

「その大剣はマジックアイテムだな」

「おう。そうだ」

「その効果は?」

「魔力を通すと一撃の威力を上げることが出来る」

「なかなかな効果だな」

「だろ?自慢の武器なんだよ」

 一撃の威力を上げるという効果だが、地味なように見えて、実は結構、効果が大きかったりする。普通の状態で一撃を入れた後に、この効果を発揮して振るって相手が止めれば、相手はダメージを負うか、戸惑って隙をさらすことになるだろう。


「次は私だな。私はそこのトルカの妻でミレールだ。魔法使いで後衛になる。得意属性は風だな。回復魔法も少々使うことが出来る」

「それはすごい」

 ミレールは、緑色の髪を肩ほどで切っている。魔法使いらしく、ローブに杖という出で立ちだ。

 この世界では魔法使い自体が少ない。回復魔法も使える魔法使いはさらに少なくなるだろう。その二つができるのだ。賞賛に値するだろう。


「次は俺だ。俺はトルカとミレールの息子でグランと言う。武器はこの長剣だ。直接的な攻撃力には自信があるぞ」

 グランは銀髪を現代風に言えばツーブロックにしている。多分髪は父親譲りだろう。こちらもハーフプレートアーマーを着ている。

「その剣は普通の剣か?」

「ああ、マジックアイテムではないな」

「だが相当な業物だろう」

「ああ。長年使ってる」

 確かに使い込まれている。だが研ぎすぎのためだろう。やせ細ってしまっている。そろそろ折れてもおかしくはない。


「最後に私ですね。私はマーリンといいます。グランの妹で、弓術師をしています」

 マーリンは、母親譲りの緑色の髪を肩より下ほどに伸ばしてある。邪魔にならない程度にレーザーアーマーをつけている。

 ふむ、家族でパーティーを組んでいるのか。

「バランスがいいパーティーだな」

「だろう?それもこのパーティーの取り柄の一つなんだよ」

「それで?そちらも自己紹介をしてはどうだ」

 グランに唆された。確かにそうだな。


「レイだ。一応、レイ・フランゼルと名乗っておこう。冒険者ランクはEだな。それで武器は「ちょ、ちょっと待て。お前領主の家系かよ」ああ、そうだが?」

「まじかよ」

 グランが放心してしまった。

「おいグラン。大丈夫か?」

 返事がない。

「続けていいか?」

「ああ、続けてくれ」

 グランはまだ戻ってきていないが、トルカがいいと言っているから続けるか。

「武器は、この刀だな。それと全属性の魔法を使うことが出来る。あとテイムモンスターが二体いるな」

 ストレージから刀を取り出すと全員の目が刀にくぎ付けになった。

「お、お~い。大丈夫か?」

 手を振りたいが両手が埋まって居るため、刀を振りながら呼び掛けてみる。

「おい、おい!すごい武器持っているじゃねえか。相当すごいマジックアイテムだろこれ」

「ああ、そうだな」

「いや~、こんな目を奪われるようなマジックアイテムは久しぶりに見たわ。なあ、ミレール」

「あ、ああ。だが前回見たハルバードよりもこっちの剣のほうがすごそうだな」

「え!?父さんたちは、これに匹敵するマジックアイテムを見たことがあるのかよ」

「ああ、お前たちが生まれる前だけどな」

「は~、すごいです」

 家族団欒か、いいものだな。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。それより君は今、全属性の魔法が使えるといったかい?」

 今度はミレールさんに問い詰められる。俺は固有魔法〈創世〉のおかげであらゆる事象を作り出すことが出来るので、属性などあまり関係ない。

「ああ言ったぞ。別に変ではないだろう?」

「いや、すごくおかしい」

「は?」

「そこからか?はあ。いいだろう。この際だ、教えておこう。この世界には全部で七つの属性がある。それはいいか?」

「火、水、風、地、雷、光、闇の七つだろう?」

「ああその通りだ。ではその中に相反する属性があるのを知っているか?」

「相反する属性?火と水とかか?」

「まあそれもそうだ。ほかには、地と風、光と闇もそうだな。属性が相反するのだから、一つの体に相反する属性があるというのはおかしいと思わないか?」

「そうか?反対の属性を同じ規模で混ぜるて魔法を作ると威力が跳ね上がったりはするけどな」

「それは普通の人間できたりしない。つまり、普通の人が持てる属性は大体1~3個が限界だったりする。3属性以上を持っていることが判明したら天才なのだよ。その人たちは国の管理下に入るか、冒険者にでもなる人が多いわね」

「別にそれほど珍しくないようだな」

「三属性以上を持っている人はここ50年近く確認されていないけどね」

「・・・まじかよ」

 超希少じゃねえか。

「さらに、全属性が扱えるものは歴史上、古の魔王たるラヴィレスだけだな」

 おお、ここで前世の俺が。

「まあ、神話なのだから、尾ひれがくっついているのだろう」

 すみません、事実です。

「もう、そのことはいい。君は非常識の一言で済ませれば諦めがつく。それより、そこの君の自己紹介をしてくれないか?」


「ああ、イリア。自己紹介だぞ」

「うん!」

 イリアは俺の膝の上に立った。

「イリア・フランゼル、5歳です。よろしくお願いします!」

 イリアがこっちを向いて、ドヤ~としてくる。褒めて欲しいのだろう。

「良くできたな。上手だぞ」

 頭をなでながら褒める。

「か、可愛い」

 今の発言はマーリンさんのようだ。

「撫でます?」

「い、いいんですか!?」

 うお、急に近づかないでほしい。

「良いよな、イリア」

「うん!」

「ということでどうぞ」

 そう言うと、マーリンさんは、椅子に座ったままイリアをなで始めた。隣の席だったからでいることだろう。

「うわ~可愛い~」

 マーリンさん口角が緩みまくっている。

「イリア、マーリンさんのほうに行ってきな」

 そういうと、イリアは俺の膝から降りて、マーリンさんの膝の上に座った。マーリンさんはイリアの頭をずっと撫でている。イリアも気持ちよさそうだ。


「それで、Aランクパーティー、月光の刃に依頼したいことがあるんだが」

 俺は、そのまま話を聞いだした。

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