第10話 初対面
食堂の扉は豪華絢爛の一言に尽きた。
高さが3メートルほどもあり、細かい彫刻が細部に至るまで隙間なく彫られている。
これ一つ作るだけで神貨が数枚動くだろう。
しかもこれ、ファンタジー定番の金属、純度90%越えのミスリル制である。
ちなみにイリアの腕輪のミスリルは、純度100%である。
ミスリルには、魔力親和率によって特性が変わっていくという特徴があったりする。つまり、ミスリルを使ったマジックアイテムの効果が強まるのである。
純度数%程度の差では誤差程度でしかないが、純度が80%を超えてくると、無視できない程度に大きくなってくる。
さらに、純度95%を超えると、魔力親和率が劇的に上がる。この一線を超えることがすさまじく難しい。
閑話休題
レトリアさんがドアを開けてくれる。
扉をくぐると、奥にも二人のメイドさんがいた。
つまり合計三人でこの巨大な扉を開けたのだ。
すごいな、タイヤがついているとはいえこれを開けるんだもの。
メイドというのはすごい人の集団なのだろうか。
そして食堂の中央には、長机が置いてある。
片側に五人が座れ、上座に一人の配置だ。
上座には父が、入って左側の上座に一番近い位置に第一夫人が座っている。
俺たちが入ってすぐに、父親が息をのんでいた気がするが、あまり、関係ない。
俺たちは、右側の上座に一番近い場所を一つ開けた場所に座る。
「おい、遠慮せずに近寄っていいんだぞ」
俺たちに話しかけてきたのがレイの父親だ。名はアステニア。
仕事のし過ぎだろう。頬骨が見えるほど瘦せ、もともとはきれいであっただろう金髪はくすんでしまっている。
しかもたまにせき込んでいるので、病気なのだろう。
そしてその後ろに立っているのが執事長のユペイロ。くすんだ灰色の髪を七三に分け、モノクロに執事服を着こなした、できる男という印象の男だ。
「いえ、ここで大丈夫です」
「そうか、いつもはもう一個、こっちがわに座っていたのに」
「ほんとほんと。そんな妾の子なんかはそこでいいのでざます」
そしてこのざます口調のおばさんこそ、第一夫人のヒーロス。
丸々太ってまるで豚だ。ふさふさの赤髪をしており、そこら中に宝石がついている趣味の悪いドレスを着ている。
こいつがフランゼル家の金を無駄使いしている犯人でもある。
「ふんっ」
そして威張り散らかしながら俺の対面に座ったこいつこそ、フランゼル家長男のオーヒオス。
こいつも母親の遺伝子を継ぎ、赤髪で、丸々太っており、油でギトギトである。こいつもなぜか見てわかるほどの悪趣味な服を着ている。そんな服の何がいいんだか。
しかも好色家でもあり、メイドに手を出そうとしては、執事長かメイド長に止められている。
そこの執事長とメイド長がすごく、オーヒオスも今は逆らえないのだが、なぜかはまた今度。
多分こいつは当主になったらすぐにこの二人を首にするだろう。
フランゼル家の家系の現在の家族はこんな感じだ。
「おい、お前」
オーヒオスがこっちを見ながら何かを言っている。
「なんだ」
「な、なんだ、だと?」
オーヒオスが顔を真っ赤にした。
「お、おまえ!誰に向かって口をきいている!僕はフランゼル家長男のオーヒオスだぞ!」
うるさい。息も切れてるし、つばも飛んでて汚いし。
「それで何の用だよ」
「だ、だからぁ。いや、今回は許してやろう。はぁ、はぁ、僕の寛大な心に感謝するんだな」
「はいはい。それで何の用ですか」
早くしてほしい。これから来る飯がまずくなるじゃないか。
「お前良い服着ているな、その服を僕によこせ。それで今までの無礼を許してやる」
その若さでぼけたのか?人のものをよこせ?駄目だと思うが、一応もう一度聞いてみよう。
「今なんて?」
「だからその服をよこせと言った。そんな良い服、妾の子には「あーもういい黙れ」何?」
こいつら、ただの馬鹿だ。
「ここは飯を食べるところだ。お前ごときの汚い声と唾で汚すな」
オーヒトスの顔が真っ赤になり、額の青筋まで浮かんでいる。
「おまえぇぇぇーーー。僕になんて口をぉ。僕はフランゼル家長男だぞ!それが分かってそんな「だからうるさいって」なっ」
対面で立たれて唾を飛ばされながら怒鳴られるなんて煩わしいこと限りない。
「お前はボケ始めたのか?人に向かってそれが欲しいから僕によこせ?寝言でも言っているのか?そうじゃないならただの頭がおかしい奴だぞ?なんだ自分が世界の中心だとでも思っていたのか?やはりお前は豚か。その程度の知能しかないのだろうよくそんなんでフランゼル家の当主を継げると思っていたな。頭はお花畑か?一度医者に診てもらったほうがいいぞ。ちょっと普通に近づける。よかったな」
言ってやった。あ~すっきり。
オーヒオスは怒りで何も言えないようだ。
「何なんざますか。妾の子ごときが」
「その妾の子に言われて何も言われなくなっているのはあなたの子供だと思うんだけど。母親が豚なら子供も豚か。良かったなオーヒオス。豚仲間がもう一匹増えたぞ」
「な!?私を豚だといったざますか?」
ヒーロスもこっちは羞恥かな?顔が真っ赤だ。
「お前ぇーーー。本当に「うるさい、飯が来たぞ。黙って食え」」
それからは、まるでお通夜のような雰囲気での食事となった。
父親は顎が抜けそうなほど何かに驚いてるし、豚二人は起こってるのか話さない。
しかしご飯は普通においしかった。ここの料理長の腕の良さがわかる。
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