第7話 冒険者登録

 冒険者ギルドの中で、俺は、全身筋肉に覆われた、身長二メートルはあろう大男に絡まれていた。

「お前みたいな細い奴が、ランクアップ試験を受けるだって?ちょうどいい。俺様が新人研修をやってやる。感謝しな」

 イベント多すぎ。メンドくせ。


 何があったかというと、時は少し戻り、

 あの後、ようやく解放された俺は、冒険者ギルドの前にいた。

 やっぱり、異世界と言ったら、冒険者ギルドだよな。


 中に入ってみると、冒険者ギルドの中には、酒場が併設されている。

 そこで酒を飲んでいるグループが何組かと、ほかに何人かの冒険者がいるだけであった。まぁ昼過ぎだからな。そりゃ少ない。

 さっさと冒険者登録をしてしまおう。

 そう思い、空いているカウンターへ向かう。

 ちょうどよく一つのカウンターが空いている。

 そこには、腰までありそうな赤髪をおろした受付嬢がいた。

「こんにちは。本日はどのような要件でしょうか」

「冒険者登録を頼みたいんだが」

「冒険者登録ですね、かしこまりました。あ、私はカリノと申します。それではこちらの用紙に、名前、年齢、戦闘で使える特技などがありましたら、お書きください」

 へぇー、この世界の紙は、羊皮紙なのか。植物紙は高いのかな?

「あのー代筆は必要ですか?」

 なんて紙を見てたら、文字が書けないのではと心配されてしまった。

「いや、大丈夫」

 さっさと書いてしまおう。

 えー、名前はレイ。年齢は16歳。特技は近接戦闘、魔法、テイムモンスターあり。

 こんなものだろう。名字を書くと面倒なことになるからな。

「・・はい。記入に漏れはありません。冒険者カードが出来上がるまでに、ギルドの説明をいたします」


 カリノの話をまとめるとこんな感じである

 冒険者ギルドに登録した冒険者はランク制となっており、そのランクはG~Sとなっている。Sランクは、コーズモスの中の冒険者でも2人しか存在していない程の狭き門らしいので、実質的には、Aランクが一番上という扱いになっている。


 最下級ランクのGランクは街中で済む依頼を専門に受ける者達専用のランクであり、街の外に出る依頼を受ける場合は最低でもFランクを得なければならない。

 GからFに上がるには、ギルドの試験官が戦闘可能であると認めれば登録初日にでもランクアップ可能。


 依頼は依頼ボードに貼られている依頼用紙を受付に持っていくと、依頼が受領される。依頼用紙に書かれている報酬金額は既に街に収める税金やギルド側の手数料といった諸経費を抜いた額を表示しているので、そのままの金額が依頼を受けた者に報酬として払われる。また規定日数以内に依頼を達成出来なかった場合は報酬の3割を違約金として冒険者ギルドに支払わなければならない。


 尚、依頼については自分のランクの一段階上まで受けることが可能で、下限はない。


 基本的には規定回数依頼を成功した後に申請することでランクアップが可能。ただし、EからDに上がる時と、Bより上に上がるときは毎回、ギルドが出すランクアップ試験を受ける必要がある。


 これらを見ても分かるように、E、Fが駆け出し。C、Dが一人前。A、Bが腕利きという目安になっている。


 複数人でパーティを組んでいる場合はメンバーの平均ランクがパーティランクとなり、その旨がギルドカードに明記される。また、パーティを組んでいる場合もパーティランクより1段階上のランクの依頼を受けることが可能。


 冒険者としての登録は無料だが、ギルドカードを紛失した場合は再発行手数料に金貨5枚が必要。


 モンスターの素材は冒険者が自分の判断で得意先等に販売しても構わないが、その際に何らかのトラブルがあっても冒険者ギルドは関与しない。


 尚、冒険者ギルドでもそれ等の素材の買い取りは行っているが、基本的には街にある武器店、防具店、魔導具店といったような店で買い取る値段より1~2割程安い買い取り金額となる。ただし、買い取り査定が素早い、市場に同じ素材が大量にあっても買い取り金額は一定といった利点もある。


 冒険者ギルド同士はマジックアイテムにより密に連絡を取ることが可能なので、違う国、違う支部の冒険者ギルドでもギルドカードとランクは使用可能。


 依頼やその他の関係で冒険者同士が何らかの揉め事を起こしたとしても冒険者ギルドは関知しない。


「以上となります」


 ちなみにこの世界の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、 聖貨、神貨、の五つである。

 銅貨が一番安く、神貨が一番高い。

 銅貨100枚が銀貨1枚となっている。これ以降もすべて同じらしい。

 銅貨一枚が、大体地球の1円と同じである。


 話長いな。

 二匹は、俺の足元でおとなしくしていた。

 俺ですら限界ぎりぎりだったのにえらいな。


 それでは、さっさとレベルを上げたいがどうすればいいのだろう。

「あと、ランクアップ試験を受けたいのだが」

「ランクアップ試験ですか?それでしたら」

「ちょいと待ちな。」

 ここで冒頭に戻るのである。


「おい、この俺様直々に新人研修をやってやるぞ。ありがたいだろう」

 なぜこういうイベントがあるのだ?

 可能性の一つとしては、俺の着ている服だろう。

 今着ている服は屋敷から出て来た時に着替えており、黒の長袖長ズボンに、黒を基調に、白い布で模様が端についているローブを着ている。どれも山奥の魔力が多い場所でしか取れないスパニ繊維を使って作られているため、伸縮性はとてもよく、汚れもつかない優れものだ。

 これのせいでいいところのボンボンに見えているのだろう。

「いや全然。さっさとどっかに行ってくれ。お前みたいな奴とは、数秒も一緒にいたくない」

「な、なんだと!?」

 断られたのが意外だったのか、男は顔を真っ赤にしている。

「おい、俺様の誘いを断るんじゃねえ。」

 多分この男は、こうして今まで我を通してきたのだろう。

 新人にすごめば、その体も相まって大抵はうまくいっただろうからな。

 だが、今回話相手が悪かったな。

『主よぉ、殺してもよのだろぉ』

「そうだな別に倒しても」

 いや待てよ。

「ねえ、ランクアップ試験てって相手は誰でもいいの?」

 カリノに聞くと、予想通りの答えが返ってきた。

「え、ええ相手に一定の戦闘力があれば」

「そう。それでこのおっさんのランクは?」

「バレットさんのランクは、Dランクです」

「ちょうどいい。それでおっさん。目的は?」

 俺はこのおっさんの目的が知りたい。

「お前みたいな奴に新人研修を」

「御託はいいから。本音は?」

 こんなやつが親切心からやっているわけがない。金をせびっていたのだろう。

「召使いが欲しかった」

「バレットさん。なんてことを」

 全然違った。いや、あんまり変わらないか?まあ、俺にとっては都合のいい理由だ。

「よし、分かった。俺と戦え」

「レイさん!?」

「お前は何を賭ける」

 俺が賭けるもの?

「お前が俺に勝ったら、一生奴隷として生きてやる」

「いったな。表へ出な」

 まあ、俺が負けることなど、万に一つもない。

「そうだ、ランクアップを申請する。試験官を表に呼んでおいてくれ」

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