第3話 魔王の初動

 俺の1つ目にやることは決まった。

 この弟を幸せにするということだったが、方法はいくつかある。

 1、国外逃亡

 2、新しく爵位をもらう

 3、どこかの家の養子としてもらう

 4、この家の当主にする

 大体この4つだ。


 そしてまず、1はない。リスクが高すぎる。

 今はまだ父親が生きているからしてこないが、あいつが当主になれば、すぐに追っ手を差し向けられるだろう。

 それにここ、アンドラスは国土が広いため、多くの種族が住んでいるが、ほかの国には、その種族しか住んでないことが多いため、訪ずれる分にはいいが、そこに永住することは難しい。


 次に2だが、これは1よりはましたが、時間がかかるし面倒くさい。

 この世界で貴族になるには大きな手柄を立てる必要がある。

 俺ならできなくもないが、それはそれで面倒だ。


 そして3、この案も悪くないが、もらってくれる家があるかどうか。

 弟も疫病神の弟として名が通っていそうではある。


 最後に4、これが一番楽で、簡単だ。

 今、父親は病で伏せてるが、彼はレイや弟の才能に気が付いていた。

 父親は俺か弟に家督を継ぎ個々の領主になるように遺言を残すだろう。

 だが、兄が文句を言い、決闘などになるだろう。


 兄とその母はどうやってでも当主の座を手に入れたいだろう。

 今やあの二人は今や贅沢三昧な生活をしている。

 どちらも丸々太って豚のようである。

 そんな贅沢な生活を守るために当主の座を手に入れようとするだろう。

 ここの家督を継ぐということは、街を収める領主になるということだ。

 そしてここは、辺境にある街、シーノア。

 ここでしか取れない素材があるため、大量の金がある。

 奴らなら、いくらでも税金を手に入れようと税率を上げるだろう。


 しかしここは辺境、強力な魔物が数多く生息しているだ。

 国が軍隊などを一気につぎ込んで、多数の死者を出しながら街を完成させた危険なところだ。

 そんなとこにいる冒険者は、当然のように腕利きばかりなのだ。

 そのような者たちが素直に従うわけもなく、当然反抗するだろう。

 そうなってしまえばこの町は終わりである。

 冒険者がいなくなれば、この街は危険にさらされまくるからな。


 まあ、この街はどうでもいいが、兄では終わってしまうなら弟が当主になればいいのだ。


「よし。方針は決まったな」

 あとは状況が動くまでは自由時間だ。


 まずはこの目にかかる長い前髪を切ってしまおう。

 そうして、大きな鏡がついてる机に座り、ストレージからはさみを取り出す。

 このはさみは切れ味がいい。前世から愛用していた

 さぁ、切ろう。


 ひとまず切り終わった。

 長かった前髪は目にかからないぐらいにした。

 後ろの髪はうなじにかかるぐらいである。

 今の容姿は、魔王時代と一緒で、金の髪と銀の髪が混ざった髪に、右が青で左が赤のオッドアイ、さらに透き通るように白い肌を持つ、絶世の超絶美男子であった。

 そして俺の耳には八芒星を丸で囲った形をした飾りが両耳から下がっている。


「うにゅー?お兄ちゃん?」

 どうやら弟が起きたようである。


「おはよう。弟君」

「ちがうよ!イリアはイリアだよ」

 どうやら弟の名前はイリアのようだ。

「おはようイリア」

「うん!おはよう!」

 言い直すと輝くような笑顔になった。

 か、可愛い。

 この俺にダメージを与えただと?

 この世界で俺に対抗で出来るのは、神とイリアだけではないか?

 イリアはレイの記憶によると5歳らしい。ちなみに俺は今、16歳。

 イリアは、青黒い髪と、エメラルド色の目を持つ子供である。

 そのイリアはとてつもない天才で、政務の手伝いが出来るほど。


 その時ドアがノックされた。

「はーい。どうぞ―」

 返事をするイリアもかわいい。

 するとドアが開いた。

「おはようございm」

 20歳ぐらいのメイドさんが口をポカーンと開けたまま俺たちを見て止まってしまった。

 どうしたのだろうか。

「あ、あの!レイ様ですよね!」

「あ、はい。そうですよ」

 どうやら俺が何かダメだったらしい。

「どうかしましたか?」

「い、いえ!なんでもありません!し、失礼しました!」

 そういってメイドさんは出て行ってしまった。

 なんだったんだろう。


 ***


「やばい、やばい。」

 さっきレイたちの部屋に入っていたメイドは扉の前で一人悶絶していた。

「どうしたの。そんなところで」

 通りかかった別のメイドが話しかける。

「レイ様がすごいイケメンだったのよー」

「は?」

 彼女はレイがイケメン過ぎて悶えていたようである。

「よくわからないけど、仕事の後に話、聞かせてね」

 そういってメイドは通り過ぎていった。

「そ、そうだ。仕事だ」

 そう言って彼女は覚悟を決めてから、もう一度ドアをノックするのだった。


 ***


 もう一度、ドアがノックされる。

 今度は何だろう。

「はーい。どうぞ―」

 数分前と同じセリフを口にするイリア。ヤッパリかわいい。

 そうして入ってきたのは、先ほどのメイドさんである。

「先ほどは取り乱してしまい、誠に申し訳ございません」

 さっきのことを謝っているようだ。

「別に大丈夫ですよ。ねー、イリア」

「うん。大丈夫!」

 イリアの笑顔は可愛すぎると思う。

 ほら、メイドのお姉さんも胸を押さえているし。

「か、寛大なお心に感謝します。もうすぐ朝ごはんですので、食堂に行きましょう」


 こうして俺たちは食堂に行くことになった。

 その後はやりたいことがいくつかあるから自由行動だ。

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