第6話 カレー店の陰謀 ⑥
香織と涼介は、高城雅人の自宅を訪れることに決めた。高城はカレー評論家として名を馳せており、彼の評判は「カレーパラダイス」にとっても重要な存在だった。しかし、彼の名前が成瀬から出てきたことで、二人は彼の背後に隠された真実を探る必要があった。
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高城雅人の自宅は、門司港の静かな住宅街にあった。香織と涼介がドアベルを鳴らすと、しばらくして高城が現れた。
「おや、探偵さんたちですね。どうぞ、お入りください。」高城は微笑みを浮かべながら彼らを迎え入れた。
二人はリビングルームに通され、ソファに座った。高城はコーヒーを用意しながら話を始めた。「どうぞ、コーヒーでも飲んでください。何かお話があるんでしょう?」
香織が切り出した。「高城さん、森田シェフの死についてもう少し詳しくお話を伺いたいのです。特に、彼が最近誰かに脅迫されていたという話を聞きました。その中で、あなたの名前が出てきました。」
高城は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。「私の名前が?それは驚きですね。でも、私は何も知りませんよ。」
涼介が質問を続けた。「成瀬さんから聞いたのですが、シェフが脅迫されていた時にあなたの名前を口にしていたと。それについて心当たりはありませんか?」
高城はコーヒーを一口飲み、考え込んだ。
「確かに、私は森田シェフと親しかったし、彼のスパイスミックスに強い興味を持っていました。でも、脅迫なんてとんでもない。私はただ、彼の料理を愛していただけです。」
香織は高城の目を見つめ、「高城さん、私たちは真実を追求しています。何か知っていることがあれば、話していただけますか?」と静かに言った。
高城はしばらく沈黙し、やがて重い口を開いた。「実は、私も脅迫されていたんです。森田シェフのスパイスミックスのレシピを盗むようにと。もし断れば、私のキャリアが終わると言われました。」
涼介は驚いた。「それは誰からの脅迫ですか?」
高城は肩をすくめた。「正直、分かりません。手紙が何通か届いただけで、誰が送ってきたのかは全く分かりませんでした。でも、私はそれに屈しませんでした。シェフのレシピを盗むなんてできなかった。」
香織はメモを取りながら、「その手紙を見せていただけますか?」と尋ねた。
高城は頷き、リビングの一角にある引き出しから数通の手紙を取り出した。「これがその手紙です。」
香織と涼介は手紙を一つ一つ確認した。それらには明確な脅迫文が書かれており、シェフのスパイスミックスのレシピを盗むように強要する内容だった。
「これで、シェフと高城さんの両方が脅迫されていたことが確認できましたね。」涼介が言った。
香織は手紙を慎重に折りたたみ、「この手紙を警察に提出し、筆跡やその他の証拠を分析してもらいましょう。犯人を特定する手がかりになるかもしれません。」と言った。
高城は深いため息をつき、「私も協力します。シェフの死の真相が明らかになることを願っています。」と答えた。
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警察に手紙を提出し、筆跡やその他の証拠を分析してもらった結果、いくつかの新たな手がかりが浮かび上がってきた。その中には、ある特定のインクが使われていることや、手紙の紙質が特定の場所でしか入手できないものであることが判明した。
「このインクと紙質を調べれば、犯人の手がかりに近づけるかもしれないわね。」香織が言った。
「そうだな。このインクと紙質を使っている人物や場所を特定しよう。」涼介が同意した。
二人は再び門司港の街を巡り、インクと紙質を調べるために文房具店や印刷所を訪れた。やがて、一軒の古い文房具店で手がかりを見つけた。
「このインクと紙質を扱っているのは、私たちの店だけです。」店主が言った。「最近、大量に購入された方がいますよ。」
「その購入者の名前を教えていただけますか?」香織が尋ねた。
店主は記録を確認し、
「確かにありました。購入者の名前は…成瀬龍之介です。」
涼介は驚きの表情で香織を見つめた。
「やはり、成瀬が関与しているのか…」
香織は深く頷き、「これで決定的な証拠が揃ったわね。警察にこの情報を伝えましょう。」
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警察に情報を伝えた結果、成瀬龍之介は逮捕され、取り調べの結果、彼の関与が明らかになった。成瀬は最初は否認していたが、最終的には罪を認めた。
「シェフの成功に嫉妬していました。彼のレシピを手に入れ、自分がトップになりたかった。でも、こんなことになるとは思っていなかったんです…」成瀬は涙を浮かべながら告白した。
香織は静かに言った。
「あなたの行動は決して許されない。でも、真実が明らかになったことで、森田シェフの名誉は守られるでしょう。」
涼介も頷き、
「これで事件は解決です。門司港の平和が戻ることを願っています。」
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事件が解決し、香織と涼介は再び「カレーパラダイス」を訪れた。店は再び賑わいを取り戻し、スタッフたちは日常の業務に戻っていた。森田シェフの特製スパイスミックスは再び生き、彼のレシピは店の看板料理として続いていた。
「森田シェフの遺したものは大きいわね。」香織が言った。
「そうだな。彼の情熱と技術は、この店と共に生き続ける。」涼介が答えた。
香織は微笑みながら、「次の事件に向けて、しっかりとエネルギーを蓄えましょう。」と言った。
こうして、門司港のカレー店での陰謀は解明され、新たな平和が訪れた。香織と涼介は次なる挑戦に向けて、新たな一歩を踏み出す準備を整えていた。
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