第4話 カレー店の陰謀 ④
翌朝、香織と涼介はカレーパラダイスに戻り、再び成瀬龍之介に話を聞くことにした。店内は忙しい朝の準備が進んでいたが、スタッフたちはどこかピリピリとした緊張感を漂わせていた。
香織が成瀬に声をかけた。「成瀬さん、もう一度お話を伺いたいのですが。」
成瀬は一瞬ため息をつき、香織たちに冷たい視線を送った。「またですか?何度も同じことを聞かれても、答えは変わりませんよ。」
「私たちも仕事なんです。協力していただけますか?」涼介が静かに言った。
成瀬はさらに不機嫌そうな表情で、「何が知りたいんですか?」と答えた。
香織はメモを見ながら尋ねた。「あなたが昨日話していた、シェフが怯えていたという話について詳しく聞かせてください。具体的にどんな状況だったのか。」
成瀬はしばらく沈黙してから口を開いた。「最近、シェフは誰かからの電話や手紙を気にしているようでした。特に、ある夜、彼が一人で厨房にいる時、誰かが彼の背後に立っていると感じたと言っていました。でも、その時は誰もいなかったんです。」
涼介は眉をひそめ、「つまり、シェフは誰かに脅されていた可能性が高いということですね。具体的な内容について何か知っていることはありますか?」
成瀬はため息をつき、視線を逸らした。「シェフはそのことについてあまり詳しく話してくれませんでした。ただ、特製スパイスミックスのレシピが狙われているようでした。」
その瞬間、店の奥から田村花音が近づいてきた。「成瀬さん、もう隠さないで。叔父の死について何か知っているなら、話してください。」
成瀬は花音の言葉に応えるように、少しずつ話し始めた。「実は、シェフはそのレシピを守るために何かを隠していました。でも、それが何なのか、僕にも分からないんです。」
「具体的にどんな手紙や電話だったのか、もっと詳しく教えてください。」香織が迫った。
成瀬は目を逸らしながら、「手紙の内容はほとんどが脅迫文でした。『レシピを渡さなければお前の命はない』というような内容が書かれていました。電話は無言で、ただ息をする音だけが聞こえることが多かったです。」
涼介はメモを取りながら、「それらの手紙はどこにありますか?」と尋ねた。
花音がすぐに答えた。「叔父の部屋に行けば、彼が保管していた手紙やメモが見つかるかもしれません。私がお手伝いします。」
香織と涼介は花音の案内で、森田シェフの自宅に向かうことにした。そこに行けば、シェフが何に怯えていたのか、真実に迫る手がかりが見つかるかもしれない。門司港の静かな朝に包まれながら、二人は新たな手がかりを求めて動き出した。
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森田シェフの自宅に到着すると、花音は彼の部屋に案内した。部屋には彼の日常の生活が感じられる家具や小物が並んでいたが、その中に異様な緊張感が漂っていた。
「ここが叔父の部屋です。彼が最後に使っていた机の引き出しを調べてみてください。」花音が言った。
香織と涼介は机の引き出しを開け、書類や手紙を一つ一つ確認し始めた。すると、何通かの脅迫めいた手紙が見つかった。
「これを見て。」香織が一枚の手紙を取り出し、涼介に見せた。
手紙には、森田シェフに対する明確な脅迫文が書かれていた。「レシピを渡さなければ、お前の命はない」といった内容が綴られていた。
「やはり、彼は誰かに脅されていたんだ。」涼介が深刻な表情で言った。「この手紙を基に、誰が森田シェフを脅していたのか調べる必要がある。」
香織は手紙を慎重に折りたたみ、「これが決定的な証拠になるかもしれない。警察に連絡して、さらに調査を進めましょう。」と言った。
その時、花音がもう一つの手紙を見つけた。「これも見てください。これも脅迫文です。叔父がどれだけ怯えていたかがわかります。」
香織と涼介は、花音の協力を得て、脅迫文を警察に提出し、事件の解明に向けて新たな一歩を踏み出した。門司港の風景が彼らの背後で静かに広がり、二人の探偵は真実に近づくための新たな手がかりを求めて動き出した。
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