第3話 カレー店の陰謀 ③

香織と涼介は、カレーパラダイスの厨房に戻り、割れたスパイスミックスの瓶を慎重に取り上げた。瓶の中には、通常のスパイスに混じって見慣れない粉末が含まれていた。


「これはただのスパイスではないわね。」香織が眉をひそめながら言った。


「確かに。何かが混ざっている。」涼介も同意しながら瓶を覗き込んだ。


香織は小さなスプーンを取り出し、瓶の中の粉末を少量取り出した。「これをラボに送って、成分を調べてもらいましょう。毒物の可能性があるわ。」


涼介は頷き、「すぐに手配しよう。」と言いながら、香織からサンプルを受け取り、専用の容器に慎重に入れた。


数時間後、香織と涼介は探偵事務所でラボからの結果を待っていた。電話の音が鳴り響き、香織がすぐに受話器を取った。


「こちら、三田村・藤田探偵事務所です。」


電話の向こうから、ラボの担当者が話し始めた。「三田村さん、送っていただいたサンプルの結果が出ました。これは確かに毒物です。非常に特殊な植物から抽出されたものです。」


「特殊な植物ですか?」香織が問い返した。


「はい、この植物は通常、一般には出回っておらず、特定の専門家や研究者しか手に入れられないものです。その成分を調べたところ、非常に強力な毒性を持っています。」ラボの担当者が説明した。


香織は電話を切り、涼介に結果を伝えた。「毒物は特殊な植物から抽出されたものだそうよ。一般には手に入らないものだから、犯人はこの植物についてかなりの知識を持っているに違いないわ。」


涼介は深く考え込んだ。「つまり、犯人はこの毒物を手に入れる方法を知っていて、それを利用して森田シェフを殺害したということか。」


「そうね。私たちはその植物について詳しく調べる必要があるわ。」香織は決意を新たにした。


その日の夕方、香織と涼介は図書館に向かい、毒物に関する資料を集め始めた。彼らは古い書籍や最新の論文を調べ、その植物の特性や入手経路について詳しく調べた。涼介は植物学の専門書を開き、香織はインターネットでその植物に関する最新情報を検索した。


「この植物は、主に南米の熱帯雨林に生息しているらしい。」涼介が一つの書籍を指差しながら言った。「非常に珍しい種で、通常は研究目的でしか利用されない。」


「つまり、犯人はその植物を研究しているか、もしくは研究者から手に入れた可能性があるわね。」香織はメモを取りながら答えた。「この情報を元に、さらに絞り込んでいきましょう。」


香織と涼介は、門司港近辺でその植物を扱っている人物や施設を調査することにした。彼らは地元の大学や研究機関に問い合わせをし、その植物を扱う専門家のリストを作成した。


「これで少しずつ犯人に近づけるかもしれない。」涼介がリストを見ながら言った。


「そうね。次はこのリストに載っている人物たちに話を聞いてみましょう。」香織は力強く頷いた。


こうして、香織と涼介は特殊な植物から抽出された毒物の手がかりを元に、犯人を突き止めるための新たな調査を開始した。門司港の風景は彼らの背後で静かに広がり、二人の探偵は次なる一手に向けて動き出した。

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