37

 いまから、七九年まえ――


 ドイツ、アメリカ、ソ連の枢軸国と、日本、イギリス、フランスの連合国が激突した二次大戦が終戦をむかえた。


 敗戦国となった日本は枢軸国によって、ふたつに分断された。


 東にはアメリカ、ソ連により、日本王国(通称・東日本)が建国され、

 西にはドイツにより、大ゲルマン太平洋共和国(通称・西日本)が建国された。


 ふたつにわかれた日本はまじえることなく、現在にいたるまで独立をたもっている。



「おはようございます」


 私とブリッツは色々準備をして、皆がいる部屋にきた。

 そこはおちついた和室だった。


 畳に障子、そとにひろがるのは本格的な枯山水。

 真ん中に西洋風のテーブルがおいてあるのがどうかと思うが、まぁいいだろう。


 部屋にならべられた座布団のうえに皆はいた。


「おはようッス」と元気よくあいさつしてくれたのは阿部淵ホムラ。


「おはようだし、春姫ちゃん」と笑顔であいさつしてくれるのは中部十花。

 彼女は私たちが所属する『特別佩刀課』の課長。


 特別佩刀課とは凶悪な犯罪やテロリストに対抗するために、特別に佩刀および犯罪者の殺害をみとめられたチームのこと。


「よーし、これで全員そろったしっ!」

 中部が私たちを見まわした。


「ちょっとまて……木梨田がいないッスよ」

 ホムラがわざとらしくキョロキョロとまわりを見わたす。


「ここや、ここ!」

 声がした方向をむく。

 そこには背のたかい女性が座布団にすわっていた。

 つばのおおきい黒い帽子と、黒いコートをきている。


「いつのまにッス……!」

「いつのまにもなにも、ずっとここにいたわボケカスゥ!」

 女性は機嫌がわるそうに、ぼやいた。


 彼女は木梨田青伊。なにかと目立つ格好をしているが、影が超薄いのだ。


「木梨田、ホムラ、おまえたちあいかわらずだな」とブリッツがぼやくと「「ふん!!」」とふたりは同時に顔をそむける。


「はいはい」中部の手を叩く音で、まわりが静まり返った。

「全員そろったし、そろそろはじめよう」


 中部は神妙そうな面もちで手を合わせると……。

「いただきます」と威勢よく放った。


 そう。これから、朝食なのだ。

 西洋風のテーブルの上にはご飯と味噌汁と焼き鮭の食事が並んでいる。


「米粒ひとつ残さないで食べるんッスよ」

 今週の食事係はホムラ。彼女の料理は比較的美味しく、彼女が食事係の週は楽しみなのだ(少なくとも一週間、三食レーションになる中部よりはマシだ)。


「はい、春姫」

 ブリッツが箸でご飯をつかんで、あーんをしてくれる。


「いつもありがとう」

「いえいえ」


 ご飯を口に含むとほっかりしていて、美味しかった。

 私の笑顔を見てか、ブリッツも笑顔になる。かわいい。


「今日はワカメか……」

 ブリッツがお味噌汁に手をつけた瞬間だった。


 チーン――チャイムが和室中にひびきわたる。

 この音は……エレベーターの……。


 その場にいたみんなはゆっくり――おなじタイミングで、和室の入り口をむく。


 入り口の扉が開くのと同時に、軍服を着た女たちがなだれ込んできた。

 その手には銃を持っており、私たちに向けている。


「動くなッ!」


 女のひとりが叫び、私たちは手をあげたまま動けなくなる。


 この人たちは――『国防軍』!


 国防軍とは、この国、西日本を守護する軍隊のこと。

 それがどうして、ここに……?


 軍隊の中から、黒い背広の女がでてくる。

 おとなしそうで清楚な雰囲気だ。


「党首閣下!」

 中部が叫ぶ。


 そう。

 彼女はこの国の元首である党首閣下だ。


 閣下は私たちを見わたした後、口をひらいた。


「警視庁特別佩刀課の皆様。あなた方を党首官邸へ連行します」


 閣下の言葉が理解できなかった。

 理解できないまま私たちは連行された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

剣をもてなくなった天才剣士がブロンドの少女に恋をする話 セクシー・サキュバス @Succubus4443

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ