第24話 その名はAngelic Crusaders
暗転したステージに、観客の期待と興奮が渦巻く中、一筋のスポットライトが中央に射し込む。その光の中に現れるのは、圧倒的人気を誇る3ピースバンド「
ベースヴォーカルのシエルこと竹本 秀斗が颯爽と現れる。中性的な顔立ちと美貌に観客の視線が集まり、その姿はまるで天使のように輝いている。彼はベースを手に取り、低音のリズムを刻むと同時に、深く澄んだ声で歌い始める。その声は観客の心に直接響き渡り、会場を一瞬にして引き込む。
そしてギターヴォーカルの「ジュディ」こと雪村 芽愛莉がギターを抱えて登場する。長い黒髪を揺らしながら、ギターのストロークを一気に走らせる。彼女のギターソロは鋭く、力強く、そして美しい。彼女の声はシエルの声と見事に調和し、ツインヴォーカルとしての圧倒的なハーモニーを生み出す。その声と音楽は、まるで天使のコーラスのように観客を包み込む。
ドラムのミッシェルこと千葉 遊星がドラムセットの後ろにドシッと構える。その細い体型からは想像出来ないくらい力強く、そして精密にドラムを叩く彼の姿は、まさにバンドのリズムを支える心臓部だ。彼のビートは観客の胸に直接響き、ステージ全体に一体感を生み出す。特に彼のドラムソロは圧巻で、その激しさに会場は熱狂する。
そして、Angelic Crusadersのその技術とエネルギーに観客は圧倒されてゆく。
曲が進むにつれ、シエルとジュディのツインヴォーカルが重なり合い、観客を次第にクライマックスへと導く。シエルのベースが深みを増し、ジュディのギターが燃え上がるように響き渡る。ミッシェルのドラムがそのエネルギーを更に引き上げ、観客全員が一体となって音楽の波に飲み込まれる。
ステージの照明が変わり、色とりどりの光が三人を照らし出す。観客はその光景に息を呑み、音楽と共に感動を共有する。最後の一音が鳴り響いた瞬間、会場は大歓声に包まれ、Angelic Crusadersの演奏は永遠に記憶に残るものとなる。
彼らの演奏はまさに神聖な儀式のようであり、観客はその瞬間、現実を忘れ、音楽の魔法に魅了されているようだった。
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「ふぅー今日も疲れたぜ。早く家帰ってメシ食ってクソして寝たい気分だぜ」と上半身裸で床に寝転びながら悪態をつく彼はステージネーム「シエル」こと秀斗。
「あんた、そんな綺麗な顔してるのに相変わらず口が悪いわね。ファンの子が知ったら幻滅するわよ」とステージネーム「ジュディ」こと芽愛莉が床に転がる秀斗を見て説教する。
「はいはいはいはい。気をつけます、気をつけます」といつもの事かとばかりに聞き流す秀人。
「もう、返事は一回。何回言ったらわかるの」と少し呆れ気味の芽愛莉。
「ガッハッハッハッ。芽愛莉殿はかーちゃんみたいだな」と豪快に笑うのはステージネーム「ミッシェル」ことドラムの遊星だ。
「いや、あんたもその見た目でオッサンっぽい話し方は、どうにかならないの?」と芽愛莉は遊星に冷ややかに言う。
遊星の見た目は線が細く知的で端正な顔立ちをしており、一見するとどこかの王子様のようだ。
「ガッハッハッハッ。ワシはワシじゃ」と豪快にパンパンと腹を叩き一向に気にしない遊星。
すると「コンコンコン」とドアをノックする音がし控え室のドアがガチャっと開く。
「まいどどうも」と軽い調子で入ってきたのは闇商人のフェレスである。
「なんだテメェか…」秀斗はフェレスの顔を見るなり、フイッと顔背ける。
「何やとは冷たいですな…こんなところまでわざわざ足を運んだって言うのに」フェレスはやれやれと手を挙げ、怪しい笑みを浮かべる。
「で、
「いやいや、もちろん今や飛ぶ鳥を落とす勢いの人気バンドの『Angelic Crusaders』を見に来たに決まってますやん」とヘラヘラといつもの調子で答えるフェレス。
「で?」とフェレスの答えに苛立ちを隠せない芽愛莉。
「ガッハッハッハッ」と大笑いの遊星。
「いやぁ、すんまへん。今日来たんは例の
「でしょうね。あなたが
「いやいや、そんな事ありまへんよ。『Angelic Crusaders』を見に来たって言うのもほんまですもん」とフェレスは芽愛莉から玉を受け取り調子のいい言葉で返す。
「あ、そう言えば…耳寄りな情報を仕入れて来たんですけど…聞きたいですか?」と怪しげな笑みを浮かべるフェレス。
「イラねぇ」「必要ないわ」「ガッハッハッハッ」と3人共全く興味がないようで即答で答えた。
「あらら…残念。せっかくのいい話しやったんやけど…。ほんま
「ケッ、胡散臭せぇヤツだぜ」と悪態をつく秀斗。
「でも、私達があの世界に帰る為には、今のところ、怪しくてもあの
「ガッハッハッハッ。そうだそうだ」となぜか大笑いの遊星。
「ケッ」と不服そうに背中を向ける秀斗。
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ライブハウスを出て怪しげな路地裏を歩くフェレスの前にスゥーっと現れる謎の陰。
「おや?まいどどうも」とフェレスは陰に軽く挨拶をする。
「あんさんの大事な騎士さん達、あんな事があったっていうのに元気にやってましたよ」フェレスはいつもの調子で話す。
「………」
「はいはい。その辺は上手いことやっていきますんで、何の心配もあらへんさかいに」とまあまあと
「………」と何かを話したあと、謎の陰はスゥーっと消えた。
「おーこわ。やっぱスゴイ威圧感やで。まいどまいどビビりますわ」
「…様には…」とフェレスはニヤリと不適な微笑みを浮かべ呟き闇へと消えていった。
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