第19話 ファンタジークッキング
美鎖はエプロンを身につけ、黒崎家のキッチンで手際よく料理をしていた。カウンターには新鮮なトマト、パプリカ、チリペッパー、ガーリック、バジルの葉、そしてパスタが整然と並べられている。彼女は真剣な表情で、料理に集中していた。
「まずはトマトソースを作らなきゃね」と、美鎖はさっとトマトを湯剥きし、細かく刻んで鍋に入れた。ガーリックをみじん切りにし、オリーブオイルを引いたフライパンで香りが立つまで炒める。
「うーん、良い匂い」次にチリペッパーをスライスし、フライパンに加えて辛味を引き出す。
「これでベースのソースは完璧」と、美鎖は自信満々に微笑んだ。トマトを加え、じっくりと煮込むことでソースに深みを出す。そこにエディブルゴールドの粉を一振りし、ソースに美しい金色の輝きを加える。
「よし、パスタを茹でるわよ」と、美鎖は大きな鍋にたっぷりの水を入れて火にかけた。塩を少々加え、パスタを茹で始める。その間に、パプリカを細かくスライスし、飾り用のバジルの葉を準備する。
パスタがアルデンテに茹で上がったら、美鎖はそれをソースの鍋に移し、しっかりと絡める。
「これで完成ね。あとは盛り付けるだけ」と、美鎖は慎重にパスタを皿に盛り付け、赤と金色のソースが美しく見えるように整えた。
「最後にパプリカとバジルの葉を飾って…」と、美鎖は細心の注意を払いながら、パスタの上に赤いパプリカと緑のバジルを配置した。料理が完成すると、美鎖は満足そうに微笑み、出来上がったパスタを見つめた。
「よし、これは自信作が出来た。お兄ちゃん気に入ってくれるかな?」と、美鎖は自信満々に呟いた。彼女は慎重にパスタを持ち上げ、リビングへと運んでいった。
雷太は食卓に座り、美鎖が自信満々に持ってきた「ドラゴンの息吹パスタ」を見つめた。
「コレは美味しそうだ」鮮やかな赤と金色のソースが美しく、食欲をそそる。
美鎖は期待に満ちた目で雷太を見つめながら、「お兄ちゃん、どうぞ食べてみて!」と促した。
「いただきまーす」雷太は一口パスタを口に運んだ。最初はトマトの爽やかな酸味とガーリックの香ばしさが広がり、続いてパプリカの甘みが感じられた。しかし、その直後、チリペッパーの辛味が口中に広がり、まるで火を吹いたかのような感覚が襲ってきた。
「う、うわぁ、これは…!」雷太は目を見開き、辛さとともに感じる深い旨味に驚いた。「すごいな、美鎖、これクセになる辛味だね。本当にドラゴンみたいに火を吐いちゃいそうだけど」
美鎖は嬉しそうに笑った。「ふふっ…気に入ってくれて良かった!辛さはちょっと挑戦だったけど、ちゃんと美味しい?」
雷太は大きく頷き、さらにパスタを食べ始めた。「うんうん、かなり辛いけど、美味しいよ。トマトの酸味とガーリックの風味が絶妙だし、バジルが爽やかさを加えてる。この金色の輝きも素敵だし、まさにドラゴンの息吹を感じるよ」
美鎖はほっと胸を撫で下ろしながら、「良かった!お兄ちゃんが喜んでくれるなら、また作るね!」と満足げに答えた。
「ごちそうさま。今日も最高に美味しかったよ」とお腹も満たし、満足気な雷太。
「へへっ…嬉しいな」と照れる美鎖を見て、なんて可愛い妹なんだと、さらに幸せを噛み締める雷太であった。
「あ、ごめん。そろそろバイトに行く時間だ。今日は遅くなるから、先に寝とくんだよ」と美鎖の頭を撫でてから、そそくさと支度を整え、出掛ける準備を始める雷太。
「うん。いってらっしゃい。気をつけてね」と雷太を見送る美鎖。いつもなら素直に言うことを聞く美鎖だが、今夜は何か思案顔で考えている様子だった。
「お兄ちゃんのバイトしている姿を見てみたい…」
美鎖はそう心に決めると、雷太が家を出てから少し経って、そっと部屋を抜け出した。外はすっかり暗くなり、街灯が道を照らしている。美鎖は心の中で何度も繰り返していた。
「大丈夫、大丈夫…ちょっと見るだけだから」
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