第17話 雷降臨

廃倉庫の中、アスモデウスとHMKの抗争が激化する中、ついに雛形と猛のリーダー対決が始まった。二人は互いの存在感と威圧感で周囲を圧倒し、まさに頂上決戦の様相を呈していた。


「おい!猛!そんなヤツに負けるんじゃないぞ!」と龍之介が猛を鼓舞する。


「へっ…お前もそんな雑魚にやられるんじゃないぞ…」と猛は苦笑しながらも龍之介を鼓舞し返す。その言葉には信頼と決意が込められていた。


龍之介はその言葉を胸に、一人でHMKのメンバーたちに立ち向かう。彼の動きは鋭く、そして速かった。一撃一撃が重く、確実に敵を倒していく。


「こ…こいつバケモノか…」とHMKのメンバーたちは龍之介の圧倒的な力に恐怖を感じ始めた。彼らの士気は次第に低下し、龍之介の勢いに圧倒されるばかりだった。


一方、猛と雛形の対決は壮絶を極めていた。雛形の強烈な一撃が猛に襲いかかるが、猛もまたそれを巧みにかわし、反撃に転じる。二人の拳と拳が激しくぶつかり合い、その度に周囲には強烈な衝撃が走った。


「貴様、ただの筋肉バカじゃねえな」と猛が息を切らしながら言う。


「お前もな。だが、俺はもっと強いぞ」と雛形は余裕の笑みを浮かべながら応じた。


二人の攻防は一進一退を繰り返し、互いに一歩も譲らない。しかし、次第に猛は雛形の圧倒的な力に押され始めていた。雛形の一撃一撃は重く、猛の身体にじわじわとダメージを蓄積させていく。


「くっ…こいつ、本当に強えな…」と猛は心の中で呟き、必死に反撃を試みるが、次第に動きが鈍くなっていく。


その様子を見ていた龍之介は、一瞬の隙を見逃さなかった。彼は一気にHMKのメンバーたちを打ち倒し、猛のもとへ駆け寄った。


「猛!ここで倒れるわけにはいかねぇだろ!」と龍之介は叫び、その声には仲間を守る強い意志が込められていた。


「龍之介…頼むぞ」と猛は苦笑いを浮かべながらも、その目にはまだ戦意が宿っていた。


龍之介と猛は互いに連携し、何とか雛形 明勅を追い詰めることに成功した。激しい攻防の末、ついに雛形が膝をついた。


「くっ…負けるのか…」雛形は意識を失いドサッと倒れ込む。


「へっ…ザマァ見ろ…」と猛は力を出し尽くし、満足そうに笑った瞬間、そのまま気絶してしまった。


「やったぜ…」と龍之介も疲れ切った表情で呟いた。しかし、その瞬間、背中からバリバリバリと電気が走り、身体中に痺れが走った。


「テメェ卑怯だぞ…」と龍之介が振り返ると、そこにはスタンガンを持つ蛭間が立っていた。蛭間の顔には冷笑が浮かんでいた。


「ひっひっひ…いい戦いだったが、結局は力じゃなくて頭脳ココが優れている奴が勝つんだよ」と蛭間は自分の頭に指を刺し不敵に笑った。


龍之介は全身の力が抜け、倒れ込む。彼の目には悔しさと怒りが浮かんでいたが、身体は動かない。蛭間はその姿を見て、さらに笑みを深めた。


蛭間は倒れた雛形を無情に蹴りながら、冷酷な笑みを浮かべて語り出した。


「ひっひっひ…初めからこの抗争は俺様が仕組んだ事なんだ。雛形の肩に付いているひよこの事を、アスモデウスの連中がバカにしていると言いふらしたのも俺。」


倒れている雛形に指を刺す蛭間。「案の定、バカの雛形は激昂する。そして、アスモデウスの連中も闇討ちで襲いかかり、HMKの仕業だと見せかける。バカの猛も激昂する。」


両手を広げながら得意げに語り出す蛭間。「そして、お互いが消耗しきった時に俺様が全て、頂くって寸法さっ!ひっひっひ…」


龍之介はまだ意識が残っており、悔しそうに声を絞り出した。「くっ…テメェ…」


蛭間は龍之介の声を無視し、ふと倉庫の奥に目を向けた。「あっ?なんだアレは?」そこには古びた楽器が並んでいた。「なんだコレは?ひっひっひ…お前らこんなもん大事にしているのか?」と、彼は楽器をひとつひとつ蹴りながら嘲笑った。


龍之介は必死に意識を保ちながら、心の中で怒りを募らせた。「や…やめ…ろ」


猛たちが大事にしている楽器、そして大好きだったドラムが蛭間に蹴り上げられる様子に、龍之介の怒りは頂点に達した。「ひっひっひ…そんなに大事か?ひっひっひ…」と蛭間はさらに蹴り続けた。


「やめろー!」龍之介は叫びながら立ち上がろうとしたが、身体は動かない。



その瞬間、ドゴーンと大きな音を立てて、倉庫の天井から一筋の黒い雷光が落下した。まわりは黒煙が舞い上がりその中から一つの陰が現れた。


その陰は黒装束を纏った男だった。龍之介はその姿を見て、夢で見た光景を思い出した。


「あれは…俺の夢で出てきた…ま…おう…」

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