第8話 本日の天気は脳天気

今宵も「Hell’s Gatekeepers」のサバトが開幕する。踊り狂う「華」達。狂乱の舞台の中、パワフルでアグレッシブなドラムがサバトに響き渡る。田中 龍之介。ステージネームは「リュウ」。筋肉質で健康的な肉体。顔は整っているが脳筋で脳天気な性格をしている。そんな彼の日常が始まる。


「ジリリリ…」朝から目覚まし時計10個が鳴り響く。「むにゃむにゃ…」それでも起きない龍之介。どうやら何か良い夢でも見ているようだ。


夢の中、龍之介は魔王様に仕えていた頃の前世の記憶が蘇っていた。


巨大なドラゴンの背中に乗り、敵地を目指して空を飛んでいる龍之介。彼の装備は重厚な鎧と巨大な剣、そして頭にはバカっぽいほど大きな羽飾り。


「おっしゃ、今日も魔王様のために頑張るでやんす!」と元気いっぱいに叫ぶ龍之介。彼の隣には魔王様が堂々と立っている。「今日の任務はバナナ怪獣を倒すことだ!」と魔王様の声が響く。龍之介は興奮して叫ぶ。「あれは!?バナナ怪獣!?任せろでやんす!」


敵地の広場に降り立つと、そこには巨大なバナナ怪獣が待ち受けていた。バナナ怪獣は大きな口を開けて、龍之介に挑戦する。「バナナ怪獣、お前を倒すでやんす!」と叫びながら、剣を振りかざし突撃する龍之介。だが、その瞬間、彼はバナナの皮に足を滑らせて転んでしまう。


「くっそー!バナナ怪獣、なかなか手強いでやんす!」と立ち上がり、再び挑む龍之介。魔王様は呆れ顔で見守っている。「おい、足元を気をつけろ」と魔王様の冷静な声が響く。「はい、魔王様!次は絶対に負けないでやんす!」と再び突撃する龍之介。


夢の中とシンクロするかのように「ドンっ」と龍之介の部屋のドアが開いた。


そこには龍之介の姉、舞霞まいかが立っていた。身長はモデル並みに高く、スレンダーな体型で、健康的な肌の色。長い黒髪はいつもきちんとまとめられており、凛とした目元が印象的だ。深い茶色の瞳は鋭く、その眼差しは人を圧倒するほどの威厳を感じさせる。


「とっとと起きやがれ!」平手打ちの嵐が龍之介に降り注ぐ。舞霞は龍之介だけには容赦がない。


「あ…姉貴おはようでやんす」と平手打ちで顔が腫れた状態なのにあまり気にしない龍之介。


「朝から目覚まし何個も鳴らしやがって!近所迷惑なんだよ!とっとと飯食って学校に行きやがれ!」と姉に怒られる。これは田中家では日常茶飯事だ。龍之介の朝食はバナナとプロテインシェイク。姉が用意してくれた特製の朝食を姉の愛を感じながら済ませ、学校の準備をする。


「行ってきやーす!」と家を出る龍之介。学校から家までかなりの距離があるのだが、筋トレも兼ねて毎朝ランニングする。屈託のない笑顔で、筋肉を誇示しながら駆け抜ける彼の姿は、今日も変わらず快活だった。


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登校の途中、目に見えるは我が主人の魔王様こと雷太とユリ。「おはようでやんす!」と声をかける龍之介。「ホント、龍之介は朝から元気よね」とユリが微笑む。雷太も軽く手を挙げて挨拶を返す。


学校に到着すると、龍之介の周りにはすぐにクラスメートたちが集まってくる。彼はクラスの人気者で、その明るい性格から、男女問わず多くの友人に囲まれている。


1時間目の数学の授業。先生が黒板に難しい方程式を書きながら、「田中君、これを解いてみなさい」と指名する。龍之介は自信満々に立ち上がるが、黒板に近づくと、「うーん、これは…」と悩み始める。結局、「答えは42でやんす!」と全く見当違いな答えを出して、クラス全員が爆笑する。


2時間目の体育の時間では、龍之介の筋肉が存分に発揮される。バレーボールの試合中、彼の強烈なスパイクが何度も相手チームを圧倒し、チームメートたちは大いに盛り上がる。「さすが龍之介!」と声援が飛び交う中、彼は笑顔で汗をぬぐう。


午後の授業では、歴史の先生が「幕末の英雄について話してくれる人は?」と尋ねる。龍之介は即座に手を挙げ、「坂本龍之介でやんす!」と勢いよく答えるが、教室は再び笑いの渦に包まれる。


放課後、龍之介は様々な部活からヘルプを頼まれる。サッカー部の試合前練習、バスケットボール部のシューティング練習、そして陸上部の短距離走練習。どの部活も彼の力を借りることで一気に活気づく。頼まれたら断れない性格の龍之介は、「どんどん頼んでくれでやんす!」と次々に呼ばれていく。



龍之介は吹奏楽部からもヘルプを頼まれる。普段はドラムを叩く彼だが、この日はトランペットを吹くことに挑戦。しかし、音はまったく出ず、部員たちに「龍之介、やっぱりドラムに戻って」と言われる始末。それでも、皆に愛される龍之介は、「また何かあったらいつでも呼んでくれでやんす!」と笑顔で応える。


一日が終わり、帰り道で生徒会を終えた雷太とユリに再会する。雷太は冷静に、「今日はずいぶん忙しそうだったな」と言い、ユリは「でも、みんな龍之介のおかげで楽しそうだったわ」と微笑む。龍之介は「みんなが喜んでくれるなら、僕はそれだけで嬉しいでやんす!」と満面の笑みを見せるのだった。

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