第93話 奴隷と巨乳牛娘



 俺に抱き着く牛娘の両肩に手を置き彼女を引き離す。


「皆さん、ここはヴォグマン領、カロヴァ村です。この娘は若いですが村長のミルク・カロヴァさん。皆さんに農地を案内してくれます」


 俺の言葉で我に返ったミルクはピンと背筋を伸ばし、アズダールの貴族たちに向きを変えてペコリとお辞儀した。


「領主アルベルト様の命で皆さんを案内させてもらいます。村長のミルク・カロヴァです。よろしくお願いします!」


 昨日ゴロウズを通して、アズダールの貴族を連れて行くとアルベルトに伝えてある。もちろん了承済み。


「案内役は村長様と聞いておりましから、年長者だと勘違いしておりましたわ……」


 驚くアストレナ。

 ミルクは成人したばかりで15歳。ヴォグマン領に多数ある町や村の中で最年少の村長だ。胸以外はあどけない少女って感じだし驚くのも無理はないか。


「ムサシさん……じゃなかった!ゴロウさんって凄くかっこよかったんですね♪えへへへ」


 俺を見つめて、にっこり笑うミルク。

 俺が照れ臭くて頬を掻いていると、アストレナ達3人は頬を膨らませる。


「「「 むぅー!! 」」」


「ウィスタシアさんに報告しないとですわ!」

「ええ、当然でございます」

「しゅしゅしゅ修羅場ですぅ~~!」


「それだけはほんと勘弁して……。この娘はただの仕事仲間だからね」


 俺とウィスタシアの親密な関係に、うちの奴隷達の殆どが何となく気付いている。

 人前ではイチャイチャしないように気を付けているんだけどね……。


「モォー、ゴロウさん冷たいです。昨日もずっと一緒だったじゃないですかぁー?」


「いや、それ一緒に麦畑の手入れしてただけだからね!」


 俺達がそんなやり取りをしていると村民が集まってきた。この辺りは牛族の集落が広がっていて、村民は全員牛族。彼らは白黒ツートンカラーの髪で頭の左右に角があり、男性は身長2メートル越えの大柄な者が多い。因みに女性は巨乳が多い。


 どんどん集まってくるな……。今日、俺本体が来ることはゴロウズを通してミルクに伝えおいたからな。

 別に集合とは言ってないんだけど……、100人くらい集まったんじゃないか?


「ゴロウ様、我が村へようこそお越し下さいました!」

「ゴロウ様、我々を助けてくれてありがとうございます!」

「ゴロウ様のおかげで毎日腹いっぱい食べれています!」

「ゴロウ様の魔法で病気の子供元気になって……なんとお礼を言えば……」

「ゴロウ様、子供達に毎日たくさんご飯を食べさせられて本当に感謝しております!」

「ゴロウ様、今度生まれる私の子供の名付け親なってください!」

「ゴロウ様!」「ゴロウ様!」「ゴロウ様!」「ゴロウ様!」「ゴロウ様!」


 物凄い熱気だ……。


「皆さん、いつも畑仕事に協力してくれてありがとうございます。今日はアズダール王国のお客さんを連れて来たのでよろしくお願いします」


 俺が頭を下げると、すかさずミルクが叫ぶ。


「みんなぁー!ゴロウさんに協力するよぉー!!」


「「「「「 モォーーーッッ!!! 」」」」」


 取り敢えず大丈夫そうだ。

 村民が盛り上がり、アズダールの貴族たちが借り物の猫のように大人しくしている横で、アストレナ、ヒルデビア、レモニカの3人は俺を尊敬の眼差しで見詰めている。


「ゴロウ様、凄いですわ!」


「いやいや、皆が頑張っているから上手くいってるんだよ。それよりアストレナ、後は頼むぞ。俺は手筈通りフルーゲルを連れてくる。おい、ミルク!ミルクも頼んだぞ!」


「「 はい! 」」


 俺は二人の返事を聞いて頷く。

 それから転移魔法を発動させてこの場から消えた。




◇◇◇



 現在ヴォグマン領では雪が降る前に本格的に麦の種蒔きを始める為、ゴロウズ達が物凄いスピードで荒地や湿地帯、中山間地域などを開拓し畑を増やしている。

 セブンランドで家畜の飼料用に栽培し蓄えていた大量の麦をヴォグマン領の種蒔きに使う予定だ。来年5月、更に大量の麦収穫を期待して。


「い、一瞬で草木生い茂る大地が消えたぞ!」

「うおぉおおッ!土の山が現れたッ!!」


「えっと、これはあそこにいるムサシさんが大地をセブンランド大陸に転移させて、石とか木の根を取り除いた土を再びこちらに転移させているのですよー。モォー、凄いですよねー」


「凄いなんてもんじゃないんだが!?」

「びっくりして腰抜かしちゃったぞ!!」


 ミルクの説明にアストレナが補足する。


「ゴロウズ鉱業という所で回転する金網に回収した土を通入れると土、砂、石に分別されるのですわ」


「アストレナ様は行ったことあるんですか?」


「はい!先日見学に連れて行ってもらいました。色々な施設があってとても勉強になりましたわ」


「へぇー、いいなぁー、ウチも行ってみたいです」


「ごごごゴロウ様にお願いしてみましょうか?」

「ええ、そうですね」


 和やかな雰囲気で見学を続けていると馬車が到着した。

 そこから煌びやかな服を着た若い男女が降りてくる。


「アルベルト様、ヨハンナ様!今日は来られないとゴロウさんから聞いていたのですが!?」


「やぁー、ミルク君」

「ふふっ、こんにちは、ミルクさん」


 アルベルトと聞いて直ぐにオスカーが動く。貴族の礼をして。


「かの有名な大六天魔卿ヴォグマン閣下にお目に掛かれるとは光栄でございます。こちらはアズダール王国ベアトリクス・サジャック・ハイデン女王。そして私はアズダール王国ハイデン公爵家の家長を務めておりますオスカー・ライト・ハイデンにございます。以後お見知りおきを」


 続けて他の貴族達もアルベルトに自己紹介をした。


「よく来てくださいました。僕は大六天魔卿アルベルト・エル・ヴォグマン。こちらは妻のヨハンナ・ルラ・ヴォグマンです」


「ふふっ、よろしくお願いしますね。ベアトリクス様、お疲れではありませんか?」


「ヨハンナ様……、お気遣いありがとうございます。数年ぶりに外に出ましたので少し疲れましたわ……」


「あら、いけませんわ。直ぐに椅子を用意させますね」


「ふむ、ところでミルク君、ゴロウ君は何処かな?本体が来ると言うから久しぶりに会いたくて顔を出したのにね……」


「それがウチもわからなくて……」


 するとアストレナが前に出た。


「ヴォグマン閣下、お初にお目に掛かります。わたくしはアズダール王国第三王女アストレナ・サジャック・アズダールと申します。いつもウィスタシア様、シャルロット様にはお世話になっております」

「ヒルデビア・ルート・ハイデンと申します」

「れ……レモニカ・ドレナードですぅ~~」


「ああ、君達はセブンランドの……。いつも娘達と仲良くしてくれてありがとう」


「はい!それでゴロウ様は亡きアズダール王を第五位階魔法、服従音吐ふくじゅうおんとで操った夢魔族むまぞくをここに連れて来るため、今は出ております」


「本当なのですか?国王が操られていたというのは!?」


 アストレナの言葉にオスカーが即座に反応した。ヒルデビアが答える。


「はい!本当でございます。ですからそれを証明する為にゴロウ様は動いておられます」


 アルベルト、ヨハンナは冷や汗をかき顔を青くする。


「第五位階魔法を扱えるのは5000年以上生きる大魔族、神代の民だけなのだけど……、アストレナ君、君はその夢魔族の名前を知っているのかな?」


「はい!ゴロウ様はフルーゲルと仰っていましたわ」


「ふ、フルーゲル様……!」

「まだ、生きておられたのですか……」


「有名な方なのですか?」


「そりゃぁ……、前魔王様よりずっと強い方だからねぇ……」


「「「 えっ!? 」」」







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