第82話 奴隷と制服


 9月初旬、今日から午後の通常授業が再開する。

 学校の教室のように机と椅子が並べられた部屋にはペットのガイアベルテも含め全員が席に座ってる。


 俺は教壇に立ち、皆に言う。


「授業の前に配るものがある」


 俺は皆の机の上に異次元倉庫からセーラー服を出現させた。


 全員サイズは合っている筈。尻尾の穴も加工済みだ。


「お姉ちゃん!これ制服だよっ!わぁ〜可愛いぃ〜♡」

「ゴロウの世界では制服は18歳までらしいが私が着て良いのだろうか?」

「ウィスタシア、コスプレって言うの!大丈夫なのん!」

「ニャー、制服着たかったんだぁ!嬉しい!」

「にひひひ、アッチ達プニキュアみたいだね♪」

「剣を振る際、長いスカートでは足に引っかかる故、某はギリギリまで短くします」

「あんた、パンツ見えるわよ。ふーん、この制服結構可愛いじゃない」

「ボク、アニメと同じ服着れるの嬉しいかも」


 この子達、女の子向けのアニメを見ているから制服に憧れがあったのか皆嬉しそうだな。

 明日から着てもらおうと思ったのにココノとフォンが服を脱いですっぽんぽんになってしまったので――。


「じゃぁ俺は廊下にいるから皆、着替えてみてくれ。一人で着れない子がいたら周りが手伝うように」


 俺は教室から出る。服の着方も覚えてきたし皆で協力もできるようになった。もう俺が一から面倒を見なくても問題ない。


 教室は1階で廊下から旅館の中庭に出られる。俺はサンダルを履いて外に出た。


 中庭には煉瓦造りの大きな池があって水が張ってある。水深は1.5メートルと結構深いのに池底の煉瓦の模様がはっきり見える程、水は透き通っている。


 池にはまだ錦鯉を入れていない。


 煉瓦の繋ぎに使ったセメントの原料は石灰岩で炭酸カルシウムを含んでいる。

 池に水を入れた直後はこれが水中に溶け出し水質をアルカリ性にしてしまい魚を放流しても直ぐに死んでしまうのだ。

 1ヶ月間、この炭酸カルシウムがなくなるまで何度か水替えをする。PHペーハーメーターで水質を測定し、中性を保てるようになれば鯉を入れても大丈夫だ。


 この前、一緒に鯉を買ったフォン、タマ、ウィスタシアは魚が泳いでる姿を早く見たいようで、いつもうずうずしている。

 池を見る度に早く魚を入れたいと俺に言ってくるからな。


 配管とか濾過槽を完璧に作ったし、俺も魚を入れるのが待ち遠しい。


 花壇に植えた花や木を眺めているとモモが廊下の窓から顔を出した。


「先生、全員着替えたよ」


「わかった。今行く」


 廊下に戻るとセーラー服姿のモモがいた。モモは犬の獣族でゴールデンレトリバーの様な耳と髪色。褐色肌でボーイッシュな感じだけど、青い瞳の女性らしい大きな目が特徴的な女の子。

 モモも身長が伸びて今は167センチになっている。


「制服のサイズはどうだ?」


「うーん、少しだけ胸が苦しいかな……。ゴロウ先生どうかな?あたし似合ってる?」


 と褐色肌の頬を赤らめて上目遣いで聞いてくる。

 11歳でこの胸は反則だよな。これから更に成長するだろうから直ぐに大きいサイズが必要になる……。


「凄く可愛いぞ。でもスカート短くないか?」


 健康的な太腿が大胆に露出してる。


「アニメだとこれくらいって皆言ってたから」


「まぁ似合ってるからいいか」


 この島に男は俺しかいない。

 ストーカーとか痴漢とか犯罪に巻き込まれることはないから好きにさせよう。


 教室に入ると全員セーラー服姿になっていた。

 じゃ授業を始めるか。と思った矢先、俺と並んで教室に入ったモモがフォンに言う。


「先生に可愛いって褒められちゃった」


 皆その言葉に聞き耳を立てているようだ。

 これは不味いパターンだな。


 俺は皆と接するに当たって一つだけ気を付けていることがある。

 それは全員公平に扱うということだ。


 皆の前で特定の子だけ褒め続けると、あの子だけ贔屓されているとか、ゴロウは好きな子には優しいけど自分には冷たいとか不平不満が出てくる。

 もう少し大人になれば社交辞令や状況に合わせて俺が対応していると理解できるのだが、この子達はまだ子供だからそうは思ってくれない。


 こりゃ全員褒めないとな……!


 すると直ぐにタマとフォンが俺のところに来た。


「ゴロウ、ニャーはどう?可愛い?」

「ゴロウ、ココノんも見るの!」


 二人はスカートをヒラヒラさせている。

 タマは華奢で美人だから制服が良く似合う。ココノは少し大きかったな。でも可愛い系のロリフェイスがセーラー服と合う。


「タマはかなり可愛いぞ。ココノもセーラー服が似合うな。可愛い」


 すると、フォンとシャルロット、ウィスタシアも俺のところに来る。


「ゴロウ、アッチはどうかな?変じゃない?」


 俺はフォンの頭を撫でる。フォンは毎日俺の上に乗って寝ている狐族の女の子で、ついスキンシップしてしまう。


「フォンも可愛いぞ」


「にひひひ!嬉しい!」


「ゴロウさん!シャルも可愛いでしょ♡うふんっ♡」


 色白肌で銀髪ショートヘアのシャルロットはギャルって感じだな。


「ああ、凄く可愛いよ」


「やったー♡嬉しい!♡」


「ゴロウ、私はどうだ?私の場合はコスプレというらしいな」


 ウィスタシアは19歳で美人系だけど、身長151センチと小柄で小顔。制服を着ると幼く見えるから大丈夫だ。

 それに1万歳を超える龍もセーラー服着ているしね。


「ウィスタシア、とても綺麗だよ」


「ふっ、褒められると嬉しいものだな」


 頬を染め恥じらうウィスタシア……いや、まじで可愛いな。セーラー服でキスしたら新しい発見がありそう!あと、他のコスプレもさせてみたい!


 それから俺はアストレナ、レモニカ、ヒルデビア、ティアニー、ヒオリ、ラウラ、ついでにガイアベルテと全員を褒めて回った。


 制服に着替えた時間もあって、そんなことをしていたら1時間目の授業が終わってしまった。


 はぁー、授業していないのに疲れたな。皆のセーラー服を見すぎたせいか俺の頭に謎のメロディーが流れる……。


 ◯かのこのこのここしたんたん……

 ◯かのこのこのここしたんたん……








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