第60話 奴隷とR18映画鑑賞
遺跡観光後は自宅の日本行き転移魔方陣の上に飛んで、日本に転移した瞬間渋谷駅へ飛んだ。
移動時間3秒。
「こ、ここは……いったい!?」
「日本っていう生前俺がいた世界だよ」
駅前のスクランブル交差点に出現したのだが、周りにいた人達は一瞬俺達を見て、すぐに視線を戻し歩き去っていった。
都内の人は基本的に忙しいし他人に興味ないからね。
まだ時間がある。これからお昼を食べよう。
ビルや人混みに戸惑い、キョロキョロと周りを見るウィスタシアに俺は声を掛けた。
「ウィスタシア、こっちだ」
「あ、ああ、それにしても凄い人だな……。皆貴族なのか?全員上等な服を着ている」
「こっちじゃこれが普通なんだよ」
異世界では平民は貧しくて、毛皮とか藁で編んだ服を着ている。彼女がそう思うのも無理はないだろう。
「道も建物も全て1枚の岩でできている……あれは城なのか……」
「ビルって言うんだ。地面はアスファルトな。こっちじゃ普通だから」
「そうなのか……」
滅茶苦茶強張ってるな……。
鎌倉時代の人を連れてきたら、こんな感じになるのだろうな。
で、歩き出すと派手な格好をした少女に声を掛けられた。
『ちょっと待つっスよぉ〜。お兄さぁ〜〜ん!』
女は俺にスマホを向けている。これ、撮影しているな……。
『自分、NouTuberで、たまこインタビューチャンネルってのやってるんスけど、知ってるスか?』
『知らんな。それ撮ってるだろ?』
『顔は映してないっス!』
『迷惑だから撮らないで。じゃ俺達行くところあるから』
で、歩き出すと女も付いてきて俺の横を歩く。スマホはしまってくれたが、聞いてもいないことをベラベラと喋ってくる。
『自分、まだ登録者1000人くらいなんで知らないッスよね〜w。 ねぇねぇ、さっき突然現れたっスよね!めっちゃ凄いっス!ちょっとインタビューさせてくださいよ~!あれって手品っスかぁ!?』
こいつどこまで付いてくるんだ。
『魔法だよ魔法。俺、異世界人なんで』
『え?マジっスか!!最高っスね(笑)。つか、ちょッ!よく見たら彼女さん、めーーーっちゃ綺麗じゃないっスかぁーー!!えええええぇえええぇぇ!!コスプレっスか!超超超ちょぉーー可愛いぃ~!やっばぁ〜〜〜ッ!』
「ゴロウ、こいつ何を言っている?」
ウィスタシアは日本語がわからない。
「付きまとわれて迷惑している」
「殺すか?」
「殺さない、殺さない」
『ええぇぇえぇ!!ちょ何語ぉ!?もしかしてロシア語でデレたんスかぁ〜?』
あんたを殺すって言ったんだよな……。
異世界じゃ人の命が銀貨1枚より軽いなんてことがあるから注意しろよ。
さて、デートの邪魔だから消えてもらおう。
第五位階精神魔法、
『俺達の動画は削除して、あそこの電柱に1時間インタビューしてこい』
『了解っスぅ~!』
笑顔の女は舌をペロと出して、ウインクしながら敬礼すると電柱の元へ向かった。
スマホを弄っているからさっき撮影した動画は削除していることだろう。
一件落着だ。
◇
俺はウィスタシアを連れてカフェに入った。
「ここでお昼を食べる。メニューから好きなのを選んで」
「見事な絵だな……」
「写真っていうんだよ。ウィスタシアの好みだとコレとか、コレなんか好きじゃないか?」
俺はメニューの写真を指差していく。
「これがいい……」
「BLTサンドだな。飲み物はオレンジジュースでいいか?」
「うん」
俺は店員を呼んで注文を済ませた。
すると対面に座るウィスタシアは深刻な顔で口を開く。
「ゴロウ……」
「ん?」
「私にはわからないことだらけだ。こんなとんでもない世界があるなんて知らなかった……。ゴロウは何でも知っていて本当に凄いな……」
「俺なんてまだまだだよ。今日だって初めて女の子とデートだから、正直何をすれば君が喜んでくれるかわからなくて、いっぱいいっぱいになっているし……」
はっきり言って俺には女のことなど、さっぱりわからない!
「そ、それって、私のことをたくさん考えてくれているってことだよな?」
「恥ずかしい話、その通りだ。ずっとウィスタシアのことばかり考えてる……。流石にキモいよな……」
「そそそそんなことはないぞ……! ま、まぁ私はゴロウと一緒にいられたら何をしていても楽しいよ……」
「そう言ってくれると助かるよ……」
それから料理が運ばれてきてた。
食事中、目が合うと頬を染めた彼女はそっぽを向いてしまう。目を合わせてくれない。
さっきの俺の発言、キモかったか!?
◇
お昼を食べた後は個人経営の小さな映画館へ入った。
これから観るのはR18映画。
初デートで、例えばラブホに入って二人でずっとAVを見るのはどう考えても無し。それでR18映画でお茶を濁すことにした。
前回水晶で見た無修正裏ビデオと比べれば、ウィスタシアさん的に物足りないと思うが……!
映画館入場の際の身分証確認は〈服従音吐〉で何とかして、映画は日本語だから昨日レモニカに貸した翻訳イヤフォンをウィスタシアの耳に付けさせた。
翻訳イヤフォンの音は女性の機械音声を採用。
俺の声で女の喘ぎ声を再現してウィスタシアに聞かせるのは俺の精神崩壊に繋がる為、ゴロウズを駆使して今朝までに改良版を完成させた!!
映画は濡れ場の多い恋愛作品、「愛してる」と言い合いながら滅茶苦茶可舌を絡ませるディープキスシーンが5分くらい続いたり、全裸で激しく絡み合うベッドシーンも多くて、ただやるだけのAVよりエロかった!
最初こそ巨大スクリーンに驚いていたウィスタシアだが、彼女は終始夢中になって映画を観ていた。
感情移入しやすい性格なのか上映中、緊迫したシーンなると俺の手を握る彼女の手に力が入ったりしていた。
2時間の上映が終わり外に出ると辺りはすっかり真っ暗になっている。
「どうだった?」
「とても面白かったよ!ずっとドキドキしていた……。 なぁゴロウ。我が種族にキスという習慣はないが、ゴロウはしたことあるの?……キス」
「ないよ」
「ふ、ふーん。そ、そうか……」
つか、女と手を繋いだのも今日が初めてだし!因みに子供はノーカウントね。
時刻は20時。
こっちの世界と異世界では約4時間半、時間がズレている。
異世界では今15時半頃だ。
17時に家に帰るからあと1時間半、二人で過ごせるわけか。
俺達はビルの物陰から東京湾沿いにある綺麗な夜景が見える海の公園へ転移した。
夜になるとカップルがイチャイチャすることで有名なスポットだ……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます