第45話 奴隷の水着を買う



 タンファさんは渡した資料を見ながら言う。


「次の砂金買取までに鑑定と見積終わらせとくヨ!」


「お願いします」


 この人は知り合いの妹で、この店とはもう3年の付き合いになるから、任せて問題ないだろう。


 その後、砂金買取分、現金140万元を受け取った。これが俺の半月分の収入になる。日本円でだいたい3000万円くらいだな。


「あとでお姉さんの会社に行くから電話しといてもらえますか?」


「了解ネ!」


「あ、あとそうだ。銃を買いたいんですけど……、宛はありますか?」


「銃か……物騒ネ。心当たりあるヨ。聞いておくアル」


「お願いします」


 銃に関してはうちの奴隷で何れ必要になる子がいるから今の内から少し用意しておくことにした。




 タンファさんから日本にいる姉に渡す現金も預かり俺は転移魔法で、福建省にあるガソリンスタンドへ寄った。

 タンファさんに紹介してもらったスタンドで燃料はいつもここで買っている。


「ゴロウか!いらっしゃい」


 社長のおっちゃんが笑顔で迎えてくれた。


「いつもの貰っていくよ」


「おうよ」


 ここで燃料5000リットルを購入する。うちのトラクターとか重機に入れる燃料だ。

 店のタンクに入っている燃料を異次元倉庫に転送させるだけだから一瞬で終わる。


「終わったので確認してください」


「はははははっ!早いな!笑っちまうぜ!」


 笑いながら貯蔵タンクを確認するおっちゃん。


「うん、なくなってる!何度見ても不思議だ!」


「俺、魔法使いですから。じゃこれお金」


「おう、いつもありがとうな!」


 俺はラウラを連れて再び転移魔法を発動させ、日本の東京にある雑居ビルの社長室へ転移した。

 ここはタンファさんの姉で俺の知り合いが経営する映像製作会社。主にCGや3Ⅾなんかを作成している。


 社長席には、張星華セイファが座っている。

 生前の俺の大学生時代の同級生だ。


「よう」


「お金用意しといたよ」


「ありがとうな」


 砂金を売ったカネ140万元をセイファに渡し、代わりに日本円3000万円の札束を受け取った。

 昔は札束を確認してたけど、最近では確認しなくなった。


「ねぇ、その子凄く可愛いんだけど誰?てか何人なの?肌の色とか髪の色とか、あり得ないんですけど……コスプレじゃないわよね?」


 セイファはラウラを訝し気に睨む。


「俺が異世界で育てることになった子供。種族は淫魔族だな」


「ふーん、じゃぁいずれ私達の娘になるのね……」


「いや、ならないからね!」


 こいつは会うたびに求婚してくる。

 28歳でスリム。綺麗な顔してるから見た目は悪くないけど、こっちの世界で相手を見つけるつもりはないからちょっと困るんだよな。


「ゴロウ君っ!!今夜うちでご飯食べないっ!?今朝築地でカニとか伊勢海老を買ったんだけど(ゴロウ君が喜ぶと思って!)」


「ああ、美味しそうだけど、今日は予定があるのですみません!」


「そう……残念ね……」


 生前の俺が生きていたらセイファと同じ28歳になる。

 俺は24歳の時に病死して、異世界のアウダムの体に転生した。

 そして13歳で日本へ帰れるようになったわけだが、俺が帰ったのは前世の俺が病死した日だった。


 その後、実家に顔を出して事情を説明したら信用してくれて、実家に住むことになった。


 自分の葬式に参加して火葬で骨を拾ったりもした。家族は今の俺がいるからなんだか締まらない葬式になってしまった……。

 最近では自分のお墓参りに行くこともある。俺的に中身は同じだから体が変わっただけって感覚でいる。


「悪いな。また来るよ」


 俺は再び転移魔法で実家の近くにある大型ショッピングモールのトイレへ飛んだ。

 ここまでで、だいたい1時間半くらいかかった。


「ラウラ大丈夫か?」


「うん……でも、なんか凄いね……。言葉はわからないけど、建物は大きいし人や車もたくさん」


「そりゃ驚くよな。俺と一緒にいれば大丈夫だから。この後は買い物する。ついてきて」


「うん!」



 トイレから出た俺達はショッピングモールを歩く。服や靴、小物等の店が、先が見えない程ズラッと並ぶ店内をラウラの手を引いて進んでいく。


「凄い人だね……。綺麗で可愛い服がたくさんあるなぁ。本当に凄い世界だね……」


「欲しいものがあったら買ってやるからな」


「うん♪」


 俺達は水着売り場へ向かっている。

 ネットで買おうと思ったのだが女性物の水着はいまいちサイズがわからくてラウラに試着させることにした。


 ラウラとティアニーが12人の中で平均的な大きさだから、この子合わせてサイズを上げ下げした水着を選べば全員丁度良いサイズになると考えたのだ。


 ティアニーはエルフで耳が長くて目立つから、今回はラウラを連れて来た。

 それでもかなり目立ってるな。


 すれ違う人、全員が振り返りラウラを見る。

 雪のように真っ白な肌と桜色髪、空のような水色の瞳だから、この子何人って感じだよね!!


 水着売り場に到着して俺は片っ端から女性物の水着を買い物カゴに入れていく。

 12人分買わないといけないのだ。恥ずかしがっている場合じゃない!


「皆の分も買うからラウラも好きなの選んでいいぞ」


「うん♪」


 すると俺の後ろを歩くラウラが。


「ボクこれがいいな……」


 ラウラが手にしたのはデニムパンツようなボトムと水色のトップのビキニ。

 露出は控えめだし、青い瞳のラウラに似合いそうな色だ。


「うん。良いんじゃないか、似合いそうだ。着てみよう」


 で、ラウラに色々試着してもらい、買う水着を選んだ。

「どう……かな?」

「うん、可愛いな」

「これ、ちょっと露出多いかも……」

「いや、可愛いと思う」

「ボク、この色好き」

「似合ってる、可愛いぞ」

「これはちょっと微妙かな……?」

「そんなことはない。凄く可愛いぞ!」

「いっぱい可愛いって言われると、ちょっと恥ずかしいかな。ふふっ」


 性的な魅力は皆無だけど、ラウラはマジで可愛いから眼福なんだよな。例えば小人サイズの妖精を可愛いと思うのと同じ感覚だな。

 まぁラウラは妖精顔負けの可愛さだけどね。



「これ……殆ど紐だよ?お尻も全部みえちゃう、ほら?」

「……(絶句)」


 露出狂のウィスタシアにマイクロビキニを買っていこうと思ったのだが、流石に可哀想だから普通の黒ビキニにしよう。


 マイクロビキニ……ラウラが試着する必要はなかった。カゴに入れといた俺も悪いけど……。そう、これは事故だ。事故なんですよぉー!


 その後、シュノーケルやゴーグルを人数分とパラソルも買った。


 俺達は通路に設置されたソファーに座って休憩する。自販機でラウラにオレンジジュースを買ってあげた。


「ふぅー、結構疲れたな。はいこれ」


 蓋を開けたペットボトルを渡す。

 買い物は2時間程で終わったが、周りの目もある中で慌ただしく動いたから結構疲れた。


「ありがとう!んん〜おいしい!ボクもたくさん着たからヘトヘトぉ〜。 ねぇゴロウ、どうして布の少ない服をたくさん買うの?」


 ラウラは首を傾げる。


「それは……、明日のお楽しみだ。凄く楽しいところに連れて行ってあげるよ」


「えぇーー!気になるぅー!教えてよ〜ゴロウ〜」


「うーん。口で説明するのが難しいんだよ。明日になったらわかるから」


「そっか……、楽しみにしてる♪」


 ラウラは微笑み俺も笑う。


 まだ向こうはお昼になってないか……。

 もう帰ってもいいけど、どこか寄っていくか……。

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