第44話 装飾品を売却する



 翌朝、朝食後にアイスクリームを出してあげた。

 牛乳を煮詰めて水分を飛ばし濃厚にたものに砂糖と塩を少々入れて冷やしがら掻き混ぜて作ったソフトクリーム。

 皆かなり気に入ったようで夢中になって食べている。

 ココノとタマはヒオリを警戒しながらも食べ始めると瞳をキラキラ輝かせてペロっと食べてしまった。


「アッチ、もっと食べたい!」

「ココノんも食べるの!」

「ニャーも!」


「もうおしまい。糖分の食べ過ぎは良くないんだぞ」


 そう言うとお子様三人はあからさまにがっかりした。


「多めに作り置きしたから、また出してあげるよ」


「「「 うん! 」」」


 お!機嫌が直った。わかりやすくて可愛いな。


「今日は歩いて出掛けるから着替えたら外に集合してくれ。それと、服は毎日洗うから風呂に入る時に洗濯籠に入れておいてくれよ。こっちで洗うから自分で洗わなくていいぞ」


 何人か昨日、一昨日と一日着た服を部屋に持ちかえっているようだったので注意しておいた。

 今後は服に名前を書いて一人一個タンスを用意してあげた方がいいな。

 こっちで全員分の洗濯物をまとめて洗って干す。

 畳んでタンスにしまうのは自分でやってもらうか……。

 今はそれでいいけど子供達が大きくなったら下着は自分で洗うとか、俺の洗濯物と一緒に洗わないでとか言いそうだよな……。

 まぁそうなったらまた考えよう。




 旅館の玄関に集合した俺達は海に向かって田んぼ道を歩く。

 この道には等間隔に電柱が立ち送電線が通っている。


 そうして10分くらい歩いて訪れたのは海沿いにある〈ゴロウズラボ〉〈ゴロウズ電力〉〈ゴロウズ機械工業〉である。ここでは主に金属加工や様々な器械、器具、車両等の部品製作を行っている。

 ゴロウズの半分150体がここで働いていて、自作エンジンや発電機なども作成中。既に試作機は何台かできている。


 俺達が住んでいる旅館に電気を供給している発電機はゴロウズ達が作った回転式ゴロウズ発電機3号。


 ここでは強力な地熱発電を採用していて、生み出されるエネルギーは発電機を増設すれば街一つ賄える程だ。


 地熱発電の仕組みだが、この辺りは地下15キロメール付近にマグマが流れている。地上からマグマまで鉄の配管を通して、その配管の中に水を落とすとマグマの熱で沸騰した水蒸気が地上へ戻ってくる。その時起こる水蒸気の上昇気流で扇風機のような風車を回して発電をしている。

 鉄の配管を通って地上へ戻ってきた水蒸気は海水で冷やされて再び水になり、マグマ溜まりまで落ちていく。

 水が通る鉄配管は密閉された空間だ。水がマグマへ落ちる側と水蒸気が地上へ昇る側は一周できるフラフープのような造りになっている。

 マグマの温度は約900度で鉄配管の融解温度は1500度だから配管が溶けることはなく中を流れる水だけを加熱できる。

 密閉されているから、配管の中の水が地上と地下マグマをグルグルと勝手に回る永久機関となっている。


 因みに人も通れるトンネルのような巨大な鉄配管にはアイアンアントの外皮が使われている。

 建設時は転移魔法で土を掘り、ブツ切りにした配管を炎魔法で溶接しながら設置していった。

 マグマ周辺の作業は防御結界を張りながらやったけど熱かったな。



 俺は『安全第一』と書かれたヘルメットを全員に配る。


「今日の午前中はここを見学してもらう。俺はちょっとやることがあるから案内はゴロウズに任せてある。危ない場所もあるからゴロウズさんの言うことをよく聞いて行動するように!」


「「「「「 はーい! 」」」」」


 取り敢えず最初の数日間で俺の領地を案内して興味を持ったことを教える予定だが、ここの施設を見てもここで学びたいとは思わないだろうな。全員女の子だし。まぁでも選ぶのは彼女達だから一通り全部案内した方がいいだろう。


 あ、そうだ。


「ラウラは俺と一緒に来てくれないか?」


「ん?わかった」



 俺はラウラを連れて自室の隣、この世界と日本を繋ぐ転移魔方陣がある部屋へ転移した。


「ラウラこっちだ」


 俺は彼女の手を握り、転移魔方陣に入る。

 俺達二人は日本の俺の実家に転移した。


「ここは?」


「前世で俺が住んでいた家だよ」


「ふーん?」


「取り敢えず、サクサク終わらせていくから付いてきて」


「うん!」


 玄関と納屋に行きネットショッピングで買った俺の荷物を回収する。


 それから、ラウラを連れて中国福建省にある知り合いの店に転移した。

 店の裏方に転移すると社長の娘、張丹華チョウタンファが鑑定の仕事をしていた。


「おお!ゴロウ、そろそろ来る頃だと思ってたネ。いらっしゃいアル。砂金いっぱい取れたか?」


 ここは貴金属買取店で俺が異世界で採取している砂金は月二回、決められた日にこの店で販売している。

 日本だと金を売るにも身分証が必要で、戸籍すらない俺には売ることができない。

 だから、わざわざ中国まで来ている。まぁこっちだと税金を取られないから助かっているが。


「そっちの子供は誰アルか?凄く可愛いネ!」


「こんにちはタンファさん。この子は異世界で俺が引き取ることになった子供だよ」


 そう言いながら俺は異次元倉庫からゴロウズ達がセブンランド大陸中央で集めた砂金とこの前賊から回収した装飾品や貴金属を取り出しテーブルの上に置いた。

 装飾品は1000点を超えていて使われている宝石や金が多いから高値で売れるだろう


「これ……どうしたアルか?す、凄いアルね??……これ本物ヨ!」


 驚きながら装飾品を見渡すタンファさん。


「この前、異世界でゲットしました」


「おお!異世界最高ネ!」


「はいw これも売りたいんですけど大丈夫ですか?」


「これなんてダイヤでしょ。サファイア、エメラルド、初めて見る希少宝石もたくさんあるネ。たぶん凄い額になるから、うちだけじゃ買い取れないかも……。鑑定に時間が掛かるけどいいアルか?」


 俺は異次元倉庫から装飾品一つ一つの詳細を纏めたレポート用紙を取り出してタンファさんに渡した。

 事前に宝石の種類や使われている金のグラム数をゴロウズに調べさせたのだ。


「大丈夫ですよ。これ参考にしてください」


 因みに今回の賊討伐も含め、戦時に敵の城から回収した超レアな希少宝石や一際綺麗な宝石は異次元倉庫に保管してあって売りに出さない。

 将来、別の用途で使う可能性があるので保管してある。


「おお!これ助かるネ!」


 タンファさんはメモをパラパラ捲る。この人は日本語が堪能なのだ。


「うんうん、凄い……凄すぎる。これ全部売ったら2千万元、余裕で超えるネ……ヤバいネッ!」


 日本円で換算すると4億4千万か……。結構な額になりそうだな。


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