第21話 奴隷達の目標
「最後は俺か。俺はゴロウ・ヤマダ、17歳だ。皆には快適に暮らせるよう衣食住を保証する。それと色々学べる場があった方が良いから勉学や魔法、農業等を教えようと思っている」
これは一応聞いておいた方がいいか……。
「それで君達に聞きたいことがある。皆は奴隷ではなくなったわけだが、今直ぐもしくは、将来的にここを出て自分の道を進みたい子は手を上げて欲しい」
即座にヒオリ、ティアニー、アストレナが手を上げた。続けてレモニカとヒルデビアが手を上げる。一呼吸置いてラウラ、犬のモモ、狐のフォンが手を上げて、少し遅れてだるそうに猫のタマが小さく手を上げた。
手を挙げなかったのは兎のココノとヴァンパイアのウィスタシア。
「ココノは明日家に帰るんだよな?」
「うん。ココノん早くおうちに帰りたいの……」
ウィスタシアは国に帰ってもらうから……。つまり、全員出ていくってことか!!
まぁそれならそれでいいか……。俺の寿命は長い。こいつ等を自立できるまで育てたら、またのんびり女探しをしよう。
「私もいつかふらっと出ていくかもな。まぁ行く宛はないがな。ところでお前、何故私達を買ったんだ?」
ヤリ目だけど?
オブラートに言うなら嫁探し?ただ、これから出ていく奴等にそんなこと言っても虚しいだけだな。
適当に何か言っておこう。
「実験だよ」
「「「「 実験? 」」」」
「ああ、俺が君達に最高の教育を施し、皆が国に戻って、この腐りきった世の中がどう変わるのか見てみたかったんだ」
「つまり、あんたは世の中を変えたいってこと?」
ティアニー聞かれた。
「それは違うな。世界を変えたいか変えたくないかを判断するのは君達だ。俺は知識や技術の提供と皆がやりたいことをサポートするだけだ」
「私は変えたい、クロイセンを。朝から晩まで死にそうになるまで働いているのに、今日食べる芋を買えない国なんて絶対におかしいもの!」
「そう思うなら、それが叶う力をティアニーに与える」
「おのー、ゴロウさん、あたし商人になりたいんだ。あたしにできるかな?」
とモモが言う。
「なら勉強しないとな。教えてやるよ」
「ボクは冒険者になって、捜し物をしたいかな。その為に強くなりたい。だから魔法を教えて欲しい」
「もちろん教えてやる」
「そ、某にも剣術を教えていただけないでしょうか!?」
「アカシックレコードに記録された世界最強の剣技を教えよう」
「おおー!」
「他の皆もここで学びたいことがあれば協力は惜しまない。ただし、さっきも言ったけど、俺はこの世界になるべく関わらないように生きている。だからここから出て色々協力してやることはできない」
とその時、料理担当のゴロウズが顔を出した。
「できたけど、運んでいいか?」
「ああ、頼む。あとは食事しながら話そう」
ゴロウズが俺達12人が座る座敷テーブルに手をかざすとテーブルの上全体が白く輝き、全員分の料理が出現した。
異次元倉庫内で予め用意しておいて、それを出現させたのだ。
「「「「「「えーっ!?」」」」」」
「わわわわけがわからないです!」
「ボク、夢を見てるのかな……」
「美味しそうですわ……美味しそうなのですが……」
「本当に不思議なことばかりです」
「あの〜ゴロウさん、さっきも商会で何も無いところに服とか料理がポンポン出たけどどうなってるの?」
「モモ殿、妖術ですよ妖術。それより早く食べましょう!なんと美味しそうなのでしょう!某涎が……じゅる」
「空間操作系の魔法だろう。魔力光と術式を見るに先程、我々がここに転移した魔法と同じ類のものだな」
やはりヴァンパイア族は魔法に強いな。
「ウィスタシア、その通りだ。空間、時間、次元に干渉する魔法だよ。商会からここに転移するときも別の次元を通過している」
皆料理に刮目して話を聞いていないな。
「取り敢えず食べよう!作りたてだから冷めないうちに。一応うちでは食べる前に『いただきます』と言う決まりになっている。俺が言うから皆も続けて言ってくれ」
「「「いただきます?」」」
「こっちの世界では言わない言葉だけど、俺がいた世界では食材の命に感謝と敬意を込めてそう言うんだ。うちで食事するときはこのルールは守ってもらう。じゃぁいくぞ、俺が言った後、皆も言ってくれ」
俺は一呼吸置いてから落ち着いた声で言う。
「いただきます」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
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