ああ、木枯らし。 舞台「少女夢幻論Ⅲ」より

列柱廊の頂点をかすめた

道の先に舞い降りる黒い蝶がいた

ばらばらに置かれた砂の時計を

傘寿の祝いにそいつの咥えた簪は、比叡山の楽坊にあがり角部屋の土曜日をリードする

病にふせり血の汗に悶えるぼくの背中は黒い斑点を描いては、狩られる野獣を求めてテントの中でなどとは語らない、そいつの目を見つめ返す


少ない、とても少ない

円形都市の硝煙は

喉が赤黒く腫れた、昨夜の深酒を後悔するジープの哨兵にぼくの脇腹を掴まさせるだろうか

盗み見た作戦図面のようには、ならない

つぎはぎだらけな翼は真っ暗な市販の工作機械を作り上げて、操作を楽しむことなくぞんざいには返品しないが、アルゼンチンの地下にある温泉を指さして微笑む

あなたの胸のロケットは、孤児たちの抱く微笑みにある、白い溺れる鳥

暖炉の前の昔話に、老婆は最後までは言わずに咳き込み始める

鋼のキューブを2つと同じものはなく

邪な天使たちの歌と春とをジュースした

どんなに幸福だったかと!


譜面台は優しく

ハート型のサングラスを

清水の滝を借りている帽子に

八つの鞭は、見下ろした月の笑顔を輝かす

足は糸車の途切れる枕を抱き起こし、

ライトをLEDに交換して、枕投げを庭でやる

意識の水溜りは

傷だらけの階段を登る音に、白と黒を読み込み始めよう

滑らかな腹の尾に行こうと、


なんだ、なにもないじゃないか

おどけた倉ぼっち

今朝の屋根瓦をキャタピラーはぼくの発電機に巻き髪して

岬の地下にドロドロと、探偵する


古代の壺は燃えていた、中と外の呼びかけは波紋のように産声を上げ

ずっと雲の上の塔から空想して死んでいた

原形を留めない古代の金貨はさすらう矢尻を捉えて、とぼくのまるい皮膚を咥える

どこか近くで塔をしている黒い紙を舐めていたときのように。

誘惑の手足はカマのあるぼくが、古木のようにスルスルと枝を落とし

頭上を円形に揺らした、夜の黒さ

出て行ったぼくの枯れ草と粉を吹いた団子を眺めて、電話する 餅作りのひさしが濡れる、野焼き後の2つの景色はアナグラをスカした


吉本隆明「対幻想論」を読んで。

#猿みたいに高等に

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る