飲食店にきた芸能人、勝手にサイン色紙事件!お笑い予選を通過した、ごほうびだとか

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 「店長?うちの店に飾ってあるこの色紙、だれのです?」それは、聞いてはならないことで…

異世界レストランで、皿洗い。

ぶつぶつ言って、住み込みで働いている。

「ちえっ…。ハイクラスの客って、いやみな人が多いよな。せっかくきたのでサインを書いてあげましょうかって、何?芸能人かぶれ」

ムカッ。

レストランの店長に、電話で相談してみることにした。

「どうしたら、良いんでしょうか?」

店長の顔は、見たことがない。

仕事で、いそがしすぎる人なのか?

いつも、声だけのコミュニケーションだ。

他の従業員皆も、店長の顔を知らないらしい。

変な店…。

すると、店長に明るく返された。

「それなら、心の断捨離をしてみなさい」

え、心の断捨離?

物を捨てるために部屋そうじをはじめると、出てくる、出てくる。

「あ、小学生時代の卒業文集。…何、何?僕は将来、異世界の魔獣使いになります?」

意外な発見に驚き、かえって捨てられず。

思いが、ぐるぐる。

「でもな~。魔獣使いというより、今は、店長という見えない魔獣に使われているよな~」

こうも感じているから、絶対に捨てられない。

「断って、だれかをがっかりさせて怒らせたくない。後が怖い」

結局は、Yesと口に出してしまう。これじゃ、物が減らない。

「Noと、言ってやりたい!」

そんな、ある日。

レストランに食事にきた良く知らない芸能人が、色紙を書いて置いていくできごとが起きた。

「あの人、だれです?」

「お笑いライブの予選を、通過した人らしい」

「へえ」

「マイごほうびで、きたそうだ」

「この色紙、捨てますか?」

「いや…。ダメだ。勝手なことをして、顔も知らない店長に怒られたくない」

皆が話しあう中、思わず口に出たのがこの言葉。

「No!」

これまでの弱い自分自身よ、さらば。

「心の断捨離」だ。

捨てられる、色紙。

そこで、まさかのまさか!

色紙を書いて置いていった良く知らない芸能人が、大ブレイクしてしまったのだ!

店の仲間から、非難の嵐。

「お前!」

「何で、あの芸能人のサイン色紙を捨てたんだ!」

「今では、プレミア物だぞ!」

が、非難も消える。

「マジか」

何と、店に色紙を置いていった芸能人は、この店の店長だったのだ。

「スーパーレストラン芸人、はじめました!」

店長、うそだろ…。

今は、そう言うこの人を断捨離したい。

捨てたい。




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