短歌を毎日よむということ

2024年5月

5月1日　透明な命が響く五月晴れ　送電線はどこまで往くのか

5月2日　宙ぶらりんユラユラ揺れて遠回り　虎にもなれない八十八夜

5月3日　花屑を踏み散らす足軽やかに　あの初恋は不可逆だとして

5月4日　もう二度と会えない気がしてつばくらめ　終電を待つ秒針は進む

5月5日　今日だけは言ってもいいよ特別に　地球の裏で月を見上げる

5月6日　在りし日に置いてきたはず恋心　ゴミに埋もれた青眼が痛い

5月7日　長長し君と僕とのクロニクル　途切れても途切れても

5月8日　徹頭徹尾言い訳がましくダサい夜　お前も直にこうなるのよ

5月9日　鉄塔が見下ろすわたし錆びついて　動けないけど星は瞬く

5月10日　ただひとつの正解になれたなら　ハッピーエンドは必要なくて

5月11日　白昼夢めいた正解選びなおす　君の生きた証を辿る

5月12日　予報では今日も雨降りつまらない　夢の話も全部教えて

5月13日　檸檬じゃないわたしだけの爆弾は　導火線もタイマーもない

5月14日　都合良く信じる神は微笑んで　オムライスはひび割れもせず

5月15日　夜と朝との隙間を縫って弾けもしない　ギターを撫でるマロニエの季節

5月16日　わらびもち刮目せよと夏は来ぬ　いつもみたいに笑ってみせて

5月17日　青春は終わらせなければ終わらない　はだしのままで駆けていけたら

5月18日　正しさに歪む理解はにべもなく　夕陽が沈む様も見られず

5月19日　本棚の隙間を埋めるアルバムは　このこころにもすっぽりはまる

5月20日　星は手が届かないから星ですか　落ちて来いよと睨めつける罠

5月21日　肌は枠きみが必要もの言わぬ　夜の白鳥湖面を揺らす

5月22日　傷ついたふりして気づくかなしみは　五月の雨のようにやさしい

5月23日　一粒のあかい光が滲む闇　言葉はなくとも温度があれば　お題：豆電球

5月24日　一面を飾るニュースに成れぬまま　それでもいいと待つきみがいい　お題：新聞紙

5月25日　反芻する嫌な記憶も思い出も　膝に乗せて抱きしめられたら

5月26日　オーバーキル※この人生はイメージです　間違い探しばっかりやってる

5月27日　本棚が足りなくなって溢れてる　涙のわけは知る由もない

5月28日　吼えかかるモザイクの犬のぞき見る　可愛いしっぽがゆらゆら揺れて

5月29日　放し飼いのヘッジホッグの背のトゲの扱い方の正解の理解

5月30日　またいつかユトレヒトで会いましょう　ファンタジーが許されるなら

5月31日　夏の海に駆けてゆくあしは軽い　どうか私を見つけないで