2023年10月

10月1日 はてしなく海が広がるこの星で よすがとなるきみ見つかるだろうか


10月2日 薄っすらと浮かぶ残月ゆびでつまむ 意味のあることばかりはできない


10月3日 狭霧晴れ寝惚け眼が追いかける 一段飛ばしに駆け上がる背を


10月4日 芒野を掻き分ける風深く吸い込む 使い果たした夏のゆくえは


10月5日 畦道を静かに染める死人花 短足の犬はしるはしる


10月6日 もういくつ寝ると晦一日が 五十時間とかにならんか?


10月7日 求めれば求めるほどに離れてく 夏でもないのに恋しいスイカ


10月8日 息を吸う転ばないよう息を吸う わかるだけが理解じゃないから


10月9日 わからないこともあなたの一部であると わかるまでに200年かかった


10月10日 わたしのためじゃない眼差しよ わたしのためじゃない言の葉よ


10月11日 いつもより高い視点に広い視野 ブランコにもたまには乗ってみるものだ


10月12日  紫とオレンジの街10月は 毎日ハロウィンって認識でいい?


10月13日 ほっといてぜんまい仕掛けの心臓は 錆びついてもう動かないから


10月14日 今日、金木犀が薫ったから 旅に出よう胸中には書


10月15日 憧れも好きも嫌いも悲しみも 伝えるのなら指先から


10月16日 救えないたわごとはもう聞き飽きた 君は来ませり眠れぬ夜に


10月17日 ふざけんなふざけんなふざけんなを包んだオムレツ(ちょっとしょっぱい)


10月18日 終点までいこうよ手に手を取って 途中で眠ってもいいから、ほら


10月19日 独白の住処にひとつ青蜜柑 顔をしかめる犬の背撫でる


10月20日 偶像に目が眩むほんとのことは教えてくれなくてもいいのよ


10月21日 今日じゃない明日がみたい鰯雲 空を飛ぶのに翼はいらない


10月22日 柿食えば犬も鳴き出す午後六時 今日は河川敷までいこう


10月23日 何気無く手繰り寄せた赤い糸 大抵途中で千切れている


10月24日 鵙笑い歌う様こそロマネスク 目抜き通りはいつも優しい


10月25日 流れゆくアシンメトリーな日常 独りごつ雑踏のまにまに


10月26日 何気ない日々を愛する様に君、自分自身を愛せているか


10月27日 夏は遠く秋は一瞬間に 霧雨のきみ優麗なあなた


10月28日 街灯がスポットライトに見えたなら わたしはマルメロ煩瑣でごめん


10月29日 循環の悪い心と同居して 冷まじ部屋はガラクタばかり


10月30日 いつの日か君が骨になったなら 宇宙に撒こう僕だけの銀河


10月31日 無防備なあなたの背中に忍び寄り 言う合言葉、もうわかるでしょ

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