短歌を毎日よむということ

2023年8月

8月1日　風も死す革命前夜目は冴えて　巻いていこうか、いやストレート？

8月2日　もし明日世界が終わると仮定して　それでも僕は言わない（愛してる）

8月3日　私じゃない私じゃなかった夕焼けが　目に染みただけ水色の浴衣

8月4日　嬉しくて軽くスキップちょっと寄り道　路傍の猫は大きな欠伸

8月5日　闇の中だからこそ見えるものもある　ねぇ流星群そうだと言ってよ

8月6日　絶え間なく綴った文字は透明で　きっと誰にも伝わらないのに

8月7日　旱星明日に続く道はどこ　朝と夜とを縫い合わすとき

8月8日　いくつものバッドエンドを踏み潰し　今晩もまたきみと眠るの

8月9日　ここのか残暑と呼ぶにはまだ暑い　恐竜も汗をかくのだろうか

8月10日　落蝉のもげた手足を攫う風　モザイクばかりの人生はいらない

8月11日　雲の峰いつまで経っても来ないバス　瞳の奥で死にゆく季節

8月12日　落花生体躯に合わぬその服も　いつかしっくり来るのだろうね

8月13日　本物がすべてではない在り方が　重要であるかじるメロンパン

8月14日　なぁ少年教えてやろう　めんつゆの賞味期限は意外と短い

8月15日　傷ついたことにも気づかぬ不器用さん　ここでだけは泣いてもいいよ

8月16日　この街のどこかで轟く雷鳴は　花氷の冷たさも知らぬ

8月17日　突然の出会いだったねわたしたち　だからきっと別れも突然

8月18日　満ち欠ける月は見ているこの恋を　それもあなたは覚えてないでしょ

8月19日　「これなに？」とちいさきいのち輝く瞳　増えていく語彙広がる世界

8月20日　ひと夏をパチパチ爆ぜる胸中の　線香花火ぼとりと落ちた

8月21日　悪意無き潮に傷つき泳ぐ僕　普通というレッテルの海

8月22日　あなたからたくさん貰った優しさで　つくってみたいのバケツプリンを

8月23日　マウンドを降りるとき　運命はもう廻りはじめた

8月24日　雨上がりの街を吸い込むこの身体　知る前には戻れないのだ、と

8月25日　霞掛かった記憶の中の懸煙草　緑の駱駝は今日も旅する

8月26日　君のため拵えた浴衣丈足らず　短いお端折り短い命

8月27日　猫じゃらし摘む左手の力強さ　ひとりたつ者には餞別を

8月28日　流れ星みたいな汗を雑に拭う　爽籟を待つ横顔が好き

8月29日　屋上の壊れたフェンス蹴り飛ばす　とどまることを知らない青は

8月30日　牛乳でふやけたシリアル飲み下す　枯れた朝顔いのちの滴り

8月31日　葉は落ちて忘我の日々も後の祭り　長々しき夜をやり過ごすのみ