2023年7月

7月1日 そういえばここは何の店だったっけ 見ているようでなんも見てない


7月2日 三尺寝否定ばかりの扇風機 たまには縦に首を振ってよ


7月3日 この世の終わりをどう過ごそうか 日傘の下のきみは笑顔で


7月4日 あの石を穿つ雨のよに 僕らの時間は一方通行


7月5日 毎度毎度夏の訪れ待ち侘びる 高鳴るような心臓もないのに


7月6日 川端の『雨傘』みたいな過去はない でも懐かしく思うのはなぜ


7月7日 運命の人と出会えますように 覗き見たきみの短冊


7月8日 焼きすぎたパンケーキ撫でるこの指で どれだけの人傷つけてきたか


7月9日 蛍の夜遠くにいても手を伸ばす 輝いていて気付けるように


7月10日 ひたむきな瞳は時を加速して (でも) たまには寄り道してもいいかも


7月11日 蝉の音が聴こえる頃に浮かぶ疑問 スイカバーってスイカの味する?


7月12日 きこえるは針の音だけ熱帯夜 また私を置いてくんだね


7月13日 錆びついた六畳一間の新世界 月下美人は夜に微笑む


7月14日 蜘蛛の巣には気づかないままでいてよ 所詮私は蟻だけど


7月15日 サイダー 空っぽな日々に口づけを どうかこれ以上奪われないよう


7月16日 剥げかけたネイル見つめる夕立は 偶然会った君みたいで


7月17日 汐鳴りに揺れる脳がこそばゆい 思い出はいつもグレー


7月18日 相も変わらず炎熱の坂下ってく 金切り声を上げる自転車


7月19日 ドーナツをふたつ並べて∞ どこでもいけるなんでもできる


7月20日 フラッシュバック鬼灯市で見かけた2人 気づかなければ永遠だった


7月21日 日に焼けた幼気な手が追いかける 羊羹の中を泳ぐ金魚


7月22日 合わない眼わたしに触れないその指も かき氷にして食べてしまえば


7月23日 マジックアワー右に左に人の群れ 音だけ聴こえる打上花火


7月24日 いつだって失ってから気づく幸せの 青い鳥は近くにいたのに


7月25日 頬にあたるフローリングがやけに固い 絶対零度の星が降る夜


7月26日 水縹薄いガラスに隔たれて 眺めてるだけそれだけでよかった


7月27日 この日までなんとかやってきたせっかくだし 走馬燈は4DXがいい


7月28日 『君たちはどう生きるか』の『君たち』に きっとわたしは含まれていない


7月29日 陽に向かうひまわりですら俯いた この酷暑酷暑酷暑


7月30日 ついよそ見こぼしたコーヒー文字は滲んで ほんのり薫る敗北の匂い


7月31日 文は葉に姿を変えて進み往く それじゃあたしはなにになれるの

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