2023年5月

5月1日 夜明け前流星群が連れてきた 風に踊る緑の黒髪


5月2日 大好きなタオルケットが手放せない ここで会ったが八十八夜


5月3日 深窓に育ったような柔肌が 弾くひとしずく目が離せない


5月4日 味気ない抜け殻の街猫背で往く 差し出された手は木漏れ日みたいだ


5月5日 スーパーで投げ売りされてるかしわ餅 おとなとこどもの境界はどこ


5月6日 藤の下くちづけしよう嫌いな君 綺麗事すら言えないままで


5月7日 飽きるなら優しくしないでもう消して ぬるくてまずい飲みさしのビール


5月8日 潜考齧る甘夏花盛り この人生に題をつけるなら


5月9日 さるぐつわなに言ってるのかわからんが 私のことが好きなのはわかる


5月10日 日曜日外は快晴出たくない くっつくおでこ触れる指先


5月11日 あばらやに二度と帰らぬほととぎす 右手に花束心に阿修羅


5月12日 青嵐ここは任せて先に往け 言葉を知らぬ獣共よ


5月13日 この世には知らないものが多すぎる えーと例えばコンポートってなに?


5月14日 冷静になれって言われても知らんがな 全部爆破!的な夜もあるでしょ


5月15日 窓越しに見える横顔あまのじゃく 嘘から生まれた可愛い彼女


5月16日 ある朝をはだしで駆けてくあいの風 信じられたらここにいてくれた?


5月17日 今一度こっち振り返ってほしかったなぁ 希うだけタダじゃんね(ね?)


5月18日 「『好き』なんて酔ってる時しか言えないな」 それなら言うな卑怯もんが 


5月19日 痛みには慣れたつもりでいたけれど じくじく疼く君が触れたとこ


5月20日 すべてを擲ってここまできた 望んだ世界は見えたかいキミ


5月21日 ポップコーン犬の肉球ランドリー においは記憶ふめつの証


5月22日 意味もなく汗かくグラス指でなぞる 現る和顔施泳がぬ金魚


5月23日 繭の中腕時計をただじっと見る 運命の人が君ならいいのに


5月24日 痛みには応えられないさようなら 身を任せるのは朝の凪だけ


5月25日 胸の中大事にしてても伝えなきゃ 消えてしまうから(愛ってやつはね)


5月26日 結局は逡巡しても同じこと ジャモカコーヒーキャラメルリボン


5月27日 天国も地獄も遠い夜さりに 夢見るくらい許してほしい


5月28日 退屈な古いキネマを流し見る いつまで経っても咲かないサボテン


5月29日 これは勝手な偏見だけど仰向けの 蝦蛄はギリギリ虫じゃないか


5月30日 軒下で右肩触れる走り梅雨 傘の準備はまだできてない


5月31日 マルビルはいつになっても丸いまま ぼくらの街を見守っている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る