短歌を毎日よむということ

2023年3月

3月1日　流る世に在り続く為のこの魂　閃光だけが価値でないなら

3月2日　打算打算打算打算打算打算　愛じゃなくても傍に居てよ

3月3日　人間も猫もイルカもアザラシも　あの子に言わせりゃ全部「ワンワン」

3月4日　いつのまに降っていたのかわからない　まるで通り雨みたいな恋だ

3月5日　先の無い交わらぬ道歩幅は狭く　花開くのを待つのはやめた

3月6日　春泥に足を取られて夢の中　髪を梳かす手はいつもやさしい

3月7日　春愁は則ち落梅不可逆の　瞼を閉じてやり過ごすだけ

3月8日　空を舞う羽化したばかりの鳳蝶　はばたくたびに聴こえる鼓動

3月9日　行き場ない思い出苦い思い出も　手当たり次第胃に収めれば

3月10日　二百余年在り続けても井底の　いつかやりたい砂で揚げ物

3月11日　蜃気楼憧れでは終わらない　孤独な心臓縫い合わせては

3月12日　不干渉世界の外で遊戯する　ポタージュポットの木屑のように

3月13日　うらぶれた寒くて暑いこの部屋は　白木蓮の香りも知らない

3月14日　君と僕はただの友達それでいい　雲雀鳴く日と廻る木の葉よ

3月15日　片方のガラスの靴を落としても　探しに来るのは君じゃないよね　

3月16日　目に痛い陽光が差す昼下がり　カーテンの裏に隠した言葉

3月17日　迷い込む泥に塗れた革靴で　猥雑な街碧は元気か

3月18日　ざらついた砂粒みたいな幸せも　かき集めればあなたの貌

3月19日　回れ右何度も願った夢であれ　ぼくがさきにすきだったのに

3月20日　独り言みんな私を置いていった　香りさえも思い出せない

3月21日　銀色のクッキー缶に手を伸ばした　もうこの場には戻らないのでしょ

3月22日　ヒール鳴る人波掻き分け改札口　そちらの桜は咲いていますか

3月23日　手つかずの花壇は凪いでがらんどう　昨日も今日も傘は持ってない

3月24日　暑き春額に汗が滲むけど　冷やし中華はじめないで（まだ）

3月25日　誰にでも優しい君がふと見せる　刺すような目は僕だけのもの

3月26日　ホットコーヒーアイスコーヒー悩むから　暑いか寒いかどっちかにして

3月27日　紅碧世界は僕で僕が世界　瞼を閉じれば融ける境界

3月28日　サボテンの花の咲かせ方教えてくれた　こんなの愛じゃん143じゃん

3月29日　通い慣れた知らない街へ悪路越え　今日からここが帰るべき場所　

3月30日　善き人に教えてほしい悪いこと　倦怠感は気にしてられない

3月31日　できるだけ遠くにいこうできるだけ　助けてくれよトワイライト