ハコブ復活!
また、スノーとは関係が無いが最近、雪太にとって非常に嬉しいニュースがあった。
雪太お気に入りの通販会社が息を吹き返し、サービスを再開させたのだ。
一度はシステムを崩壊させ、派手にこけた上に誹謗中傷、フェイクニュースも相まって大炎上してしまった例の会社だが、持ち前のハングリー精神とチャレンジ精神でロボット配達システムを作り上げ、業界のトップに立っただけはある。
簡単には死ななかったし、転んでもただでは起き上がれなかった。
再発防止に向けてシステムを見直して改善と強化を行っただけではなく、サービス内容も強化し、配達ロボットまで大幅にアップグレードして帰って来たのだ。
これによって以前までは配達物を渡すだけだった卵型の配達ロボ、ハコブに様々なオプションをつけることができるようになった。
勿論、それなりに追加料金は発生するが自分専用の配達員データを作成し、使用することで世間話ができたり、名前を憶えてもらえたりするのは以前からハコブを可愛がっていた雪太的には堪らない。
特別感がある事は勿論だが、不意に訪れる可愛い来訪者に気にかけてもらえると、道端で密かに咲く野花を見つけたような癒しを感じ、日常に彩を添えることができるのだ。
ちなみに雪太もオプションをつけており、彼はハコブに、
「配達を頑張った見返りとして液体燃料を差し出すように要求してくる」
という機能も追加でつけている。
当然のことではあるが、液体燃料は会社から指定されたものを渡している。
間違っても個人で購入したハコブの機体に適合するかさえ分からない燃料は渡していないし、そういったものを渡すとハコブの方が、
「これは食べられません」
と、少し高い機械音声で拒否してくるらしい。
その姿が可愛らしくて、ついおにぎりなどを渡してしまう人もいるのだとか。
ともかく、ハコブは液体燃料を貰えて満足であるし雪太も配達ロボに甘えられてホクホクな気分を味わえるという、非常に優れた機能だ。
ハコブのオプションはどれも配達そのものには全く関係が無いものばかりなのだが、意外とユーザーの中で人気があるらしく、雪太と同じようなオプションをつけている者も少なくない。
好きなものや価値を感じたものに金を払うという行為は非常に楽しくて幸せなことなのだ。
大切なスノーの存在に、復活してくれたお気に入りの通販会社。
『幸せだな。スノーが来てくれてから、ずっと。スノーが幸せを運んでくれたみたいだ……だからこそ、向き合わなくちゃいけないよな』
向き合わなければならないこと。
それは勿論、スノーのバグについてだ。
ところで、雪太がしつこくスノーのバグについて知りたがり、定期的に彼女を観察するのには、好奇心以外のきちんとした理由がある。
それは、バグの詳細を知っていなければ急な故障や不具合に対応することができないからだ。
特にスノーの場合は、思考や感情を司る部分に問題があると予想される。
これらの場所は機械全体を操る部分であり、彼女の判断能力や行動にも大きく影響する部分である。
元から持っていたバグが原因で激しい攻撃性を持つ可能性や、突然に記憶を無くしてしまったり、体を動かせなくなってしまったりする可能性もあるのだ。
そもそも、エラー自体はいつからあったものなのか。
加えて、エラーそのものは直すことができるのか。
雪太が想定する最悪の事態に繋がりうるエラーであるのか。
最愛を失いたくない。
そう強く願うからこそ、雪太はスノーのバグという難題に真摯に向き合う必要がある。
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