甘えん坊系スケベなロボットちゃんと就寝

 それからの時間は付き合いたての甘い同棲カップルだ。

 少し味付けの濃いハンバーグに舌鼓を打って、沸かしてもらった風呂に入る。

 入浴後は髪を乾かしてもらい、肩を揉んでもらう。

 その間に他愛のないおしゃべりをしたりして、楽しく穏やかな時間を過ごした。

 可愛い女の子とのイチャイチャは健康に良い。

 すっかり肌艶が良くなってリフレッシュした雪太は、一気に疲労が解れるとともに眠くなって、ベッドへと向かった。

 勿論スノーもついてくる。

「スノーもこっちで寝るの?」

 よく見なければわからないが、スノーのお尻には防水性能のある蓋が付いており、そこからコードを引っ張り出して直接コンセントから電気を得ることができる。

 てっきり雪太の就寝時には充電に徹するのかと思ったが、ベッドの上に座り込んでいる辺り、そのつもりはないのだろうか。

 部屋の隅にあるコンセントを指差すと、スノーは寂しそうな表情になった。

「スノーちゃんはスーパー高性能なので、お腹の所に内蔵されているモバイルバッテリーを交換すれば、いくらでも動けるんです。それに、バッテリーは市販の物を使用可能ですから雪太の持っているのをお借りすることもできるんです。スリープモードに入ればかなり節約できますし、市役所のお姉さんにフル充電してもらったから、あと三日は自由に動けるんです。だから、雪太、スノーちゃんにあっちに行けって言わないで。一緒に眠ってください」

 しゅんと落ち込むスノーにNOとは言えない。

「大丈夫だよ。ただ、スノーは充電するつもりなのかなって思ってただけだから。平気ならおいで」

 雪太が毛布を開いて中に招いてやると、スノーがパッと表情を明るくしてイソイソと入り込んでくる。

 雪太の懐に潜り込んだスノーが胸に頬をすり寄せて、開いた襟から覗く鎖骨にキスを落とす。

 ほんの少しだけ甘噛みをした。

 痛くはないが妙に甘く、少し痺れた感じがする。

「スノー!」

 目を丸くした雪太が頬を羞恥に染め、クルリと彼女に背を向けた。

 手足を縮めて丸くなる雪太にスノーはクスクスと笑みを溢した。

「ねえ、雪太。スノーちゃん、大好きな雪太と一緒にいると悪い事考えちゃいそうです。ねえ、雪太?」

 口元に無邪気な笑みを浮かべ、シュルリと布の擦れる音を立てると後ろから雪太に抱き着いた。

 ムギュッと柔らかな体を押し付けて雪太の足に自分の足を絡め、彼の節くれだった手を握って恋人つなぎをする。

 布越しの熱い体温やスベスベの肌が触れ合う感覚が妙に心地いい。

 後頭部は柔らかな胸の中に押し込まれて、すぐ上から微かな吐息が聞こえてきた。

 フワフワとした気持ち良さと同時に激しい緊張を覚える。

 雪太は溶けてしまいそうなほど体を熱くしてカチコチと固まった。

「雪太、こっちを向いてください、雪太。スノーちゃん、雪太が大好きなので、頭をギューって抱っこしたまま眠りたいですよ」

 絡めていた手を解いて両腕で雪太の肩回りを優しく包み込む。

「雪太、良い匂いです。柔らかくて甘い、スノーちゃんとお揃いの良い匂いがします」

 上から雪太のつむじを嗅ぎ、触れるようなキスを落として笑う。

 モチモチとしたスノーの身体に抱きしめられると強い幸福を感じるし、甘えられるのも全くもって悪い気はしなかったのだが、雪太の雪太が大変なことになってしまい、諸事情からそちらを向けなくなってしまった。

「スノー、そこに足を絡めないで!」

 ギチギチと密着して太ももに足をかけ、かなり際どい所にまでせり上がってくるスノーの内ももに半泣きになる。

「だって、雪太が丸まっちゃうから、もっと抱っこしたくて。駄目なんですか? スノーちゃん、雪太が大好きなのに……でも、雪太が嫌ならやめますね。ねえ、雪太。抱っこをするのも、本当は駄目なんですか?」

 スノーが優しく雪太の前髪を梳いている。

 抱き着く力を緩めたスノーの声は少し寂しそうだった。

「いや、その、駄目じゃないんだけど、あんまり煽らないで欲しいというか、危険地帯には触れないで欲しいというか」

 流石に勃○しました! とは言えない。

 曖昧に言葉を濁していると、スノーは不思議そうに首を傾げた後で、

「よく分かりませんが、抱っこできるのは嬉しいです。雪太、大好きですよ」

 と、微笑んで頭を抱く力を強め、数分後にスヤスヤと寝息を立てた。

 ところで雪太、非常に恥ずかしがり屋で奥手な性格をしているのでガッと襲ったりはできないが、年相応に性欲のあるスケベな青年である。

 そのため、スノーの寝息が熟睡に変わるのを見計らって彼女の方へ体を向け、顔を巨乳に挟み込みながら、そろーっとお尻に触れてみた。

『柔らか……』

 ここまで来たら揉むしかないだろう。

 指先を折り曲げてモチッと柔らかく揉んでみると、頭上から「ふふふ」というスノーの悪戯っぽい笑みが零れて雪太の耳に入り込んだ。

 勢い良く心臓を跳ね上げさせ、恐る恐る顔を上げる。

 すると、スノーの悪戯っぽく歪んだハートの瞳と目が合った。

「ふふ、雪太。スノーちゃんはご主人様の有事の際に備えて眠らないんですよ。あれはスリープモードなので、触れられたり声をかけられたりすれば、すぐに起動するようになっているんです。それにしても雪太、お尻が好きなんですか? 寝込みを押そうなんて、エッチでかわいいですね。もっと触ってもいいんですよ、どこでも。好きな人に触れられるのは好きですから」

 スノーは上機嫌にふわふわと笑っている。

 彼女から正式にお触り二重丸! と許可が出たわけなのだが、雪太はとんでもなく照れ屋で小心者な青年なので、こっそりとしたスケベがバレた時点で激しい羞恥に襲われ、これ以上は触れられなくなってしまい、慌てて毛布の中に潜り込んだ。

 その姿は防御態勢に入った亀である。

「なんで逃げちゃうんですか、雪太! スノーちゃんはもっともっと触ってほしいですし、雪太のことをいっぱい触りたいんですよ! もう! どうせなら雪太が襲ってくれるまで寝たふりしておけばよかったです!」

 プクッと頬を膨らませ、スノーが詰まらなさそうに不満を溢す。

 スノーは己に触られたら触り返してもいいというルールを課しているため、丸まった雪太のお尻をモッチモチと揉みしだいた。

 それからも誘惑と溺愛を繰り返すスノーだったが、雪太がつかれ始め、ウトウトと眠り始めると優しく背中を叩いてあやし始めた、

「雪太、就寝時間、遅くしちゃってごめんなさい。つい、雪太が大好きすぎてずっと甘えてしまいました」

 ポン、ポンと穏やかに背中を叩かれて寝かしつけられた雪太は、眠る瞼にキスを落とされたことも、すっかり受け取り損ねていた姉からの、

「そのロボットって数年前に『人間の感情を持つロボット』を作り出したって会社の子だよね? ちょっと前にも、その子と同じモデルの子が事件を起こしてたし、なんというか、話題性が強い子をお迎えしたね~」

 というメッセージがスノーによって消去されたことも知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る