不気味なオッサン

池尾雉兎

オッサン

1ヶ月前

オッサンは、突然そこにいた。

死んだ魚の目に血色が悪く不気味な顔をしたオッサンがポツンとたっていた。不潔そうな身体に、人を寄せ付けないほどの酷い悪臭を放っている。

最初は、みんな近づこうともしなかった。

「あの悪臭ではとてもじゃないが近づけない」

みんなそう言っていたと思う。



オッサンに近づく人が現れたのは、

オッサンが現れて一週間が過ぎたころだった。

いつしかオッサンと友達のように話したり愚痴を言ったりしている人もいた。

オッサンとしゃべっている人に、

「最初に感じていたあの悪臭はどうしたのか」と聞いてみたところ

「悪臭に鼻が慣れたか、悪臭を感じる嗅覚が壊れたのか、もう感じなくなった(笑)」

とだけ言っていた。

悪臭に慣れたところでまだまだ汚いし他の人からすれば普通に臭い。

「早く追い出したい」と思う人や

「気持ち悪くないのか?」

と、疑問に思っている大人もたくさんいた。


恐らく一週間くらい前だったと思う。あのオッサンの近くにいた人たちが続々と行方不明になっていった。

そしてオッサンも行方不明になった。

近所の人に行方不明になった人たちのことやオッサンのことを聞いても、

「旅行に行ったんじゃない?」や「引っ越ししたのかなぁ~?」など

適当なことばかり言う。

ただ一つオッサン以外の人たちの共通点を見つけた。

行方不明になっていた人たちは、皆何かしら恨まれるようなことをしていた。

小さいことから大きいことまで。

ある人は、コンビニの商品を万引きしたり

ある人は、バイトテロを起こしたりとかなりやんちゃしていた。

当然恨みがある人は多かった。

ならあのオッサンは、恨みを晴らしたい人から依頼を受けてあの人たちを行方不明という名で殺人をしに来たのか、

はたまた、あやかしなどを信じるのなら、妖怪や幽霊などの心霊現象で偶然嫌われものだけを行方不明にしただけなのか。

ただ一つ言えることは、あれは、この世にいていい存在じゃないそう思えるほど不気味な存在だったこと。

ただ、もう消えたからなんだっていい。

早く寝ようとそのときは、思い眠りについた。

次の日の朝、インターホンがなった。

誰だろうと疑問に思いながら扉を空けると

そこには、

死んだ魚の目をしたオッサンがいた。




「あははは、何て馬鹿げた話だ。」

そう友人は、言った。

「言うなよ。俺にもわかってるが思い付いたんだ、仕方ないだろ。」

「それにしても、良くそんな話思い付いたな

あほ丸出しでウケる(笑)」

「そんな言わなくたっていいだろ(怒)。もう寝る」

「ちょ...」ッーッーッー

その日は、ベットに潜り込んで

「次は、もっと怖いやつ作ってやる」

と意気込み、崩れ落ちるように寝た。


次の日の朝、インターホンがなった。

「こんな朝っぱらからだれだよ」と思いながら

玄関の扉を空けた。

そこには、新聞配達員の

死んだ魚の目をしたオッサンがいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不気味なオッサン 池尾雉兎 @banana0414

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ