第5話 フライング・ヒューマノイド
僕が初めて空を飛んだのは小学六年生の時だった。
僕は修学旅行で京都に行っていた。
清水寺で記念写真を撮ろうと友だちのカメラにむかってピースをしたら、僕の身体が宙に浮きあがった。
僕は文字通り清水(きよみず)の舞台から飛んだ。
僕はしばらく空をただよって、碁盤(ごばん)のようにそろった京都の街並みを上から眺めていた。
その後地面に落ちて、目の前に金閣寺があった。
僕は困惑したが、先生たちはもっと困惑した。
人がいきなり空を飛ぶなんて、その場にいた友だち以外だれも信じなかった。
先生は僕が観光コースを抜けだして、勝手に行動をしていたと結論づけた。
僕はなんと書けばいいのかわからない反省文を書かされた。
その後も登下校中に空に飛ばされたことが三回あった。
遅刻で怒られるのはどうでもよかったが、ずっと遠くの知らない町まで飛ばされたらどうしよう、という不安がいつもつきまとっていた。
そんなとき、若菜が僕に『浮遊病』の存在を教えた。
若菜は幼馴染で、家も近かった。
小さいころはよく一緒に遊んだが、学年が上がるにつれて次第に遊ぶことがなくなった。
小学六年生になったら、たまに登校中に会うくらいしか接点のない関係になっていた。
ある日、僕が登校中に宙に舞ったとき、若菜は偶然その後ろを少しはなれて歩いていた。
僕が空を飛んだ瞬間を目撃した彼女は、すぐにネクスタの視界レコーダーに残っていた映像を検索にかけた。
検索結果のほとんどは一世紀前の『フライング・ヒューマノイド』という生命体についてのオカルト記事だったが、若菜はその中から、
『浮遊病』
という未知の病に関する論文を見つけた。
論文を書いたのは川村(かわむら)教授という人物だった。
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