第3話 おとしもの


 放課後、僕は一人で学校をあとにした。


一緒に帰るような友達は僕にはいない。



 学校の周りの道で、陸上部がランニングをしている。


その後ろに義足陸上部が続いている。


 僕の車いすが歩道をふさいでいるので、彼らは車道側に飛び出して僕をよけた。


 僕の家までは実は30分くらいかかる。


だが、電動車いすで移動するので疲れたりはしない。


段差につまづかないように注意するだけだ。


 僕は登下校中の時間をだいたいぼーっと空や街を見て過ごしていた。


 僕の住む街には大きな川が流れている。


僕はいつも川にかかる牛越橋(うしごえばし)という橋を渡って家に帰る。


今日も寄り道もせずにまっすぐ家に向かい、いつものように牛越橋を渡った。


 橋の真ん中まで進んだとき、僕は地面に黒い長財布が落ちているのに気がついた。


 僕の財布よりいくらか膨れているように見えるのは、中身がたくさん入っているからだろうか。


 まわりを見渡したが、それらしい人の姿はない。


僕は少し考えて、財布を拾うため肩と腰についているベルトを外し…



車いすをおりた。



 

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