第2話 天使の少女エルラ

「ぴ、ピースラグナロクだと・・・」


「そうそう、【ピースラグナロク】異世界を誰よりも早く救う天使のゲームだよ!」


 少女はキャンディーをガリガリと食いながら、ニヤニヤとした顔でそういった


「・・・はあ、つまりは、お前のいいなりの道具になって、そのゲームに参加しろってことか・・・随分と偉そうなだな。・・・はあ、平和主義者の俺みたいな一般青年が異世界に行き、世界を救うってヤバいぐらいに荷が重すぎるんだけど!」


 拓斗は溜息を大きく吐きながら右手を顔に当て、少女の言葉に対してそういう。


「いいなりの道具って聞き捨てならないわ、すごく怒っちゃうんだから!」


 少女は拓斗の「いいなりの道具」って言葉に少しイラっとして可愛い声で反論をした

 それに対して、拓斗は「はいはい」と少女の反論を軽く返した。


「でも、いくら俺が他の人よりも優れているからって、そんなことで選ばれてもこっちはいい迷惑なんだよ。どうせ呼ぶんなら俺じゃなくても、もっといろんな人がいただろ。正義感が強い人とかさ!」


と拓斗は異議の申し立てを少女にした

 その言葉を聞いた瞬間、少女は懐に二つ目のキャンディーを出し、すごく狂ったようないい笑顔で 


「イーヒッヒッヒ、本当にそれでいいのか夜空拓斗。大切な人の命を失ってもお前は今のセリフをもう一度言えるかな?」


「・・・・・おい、それはどういう意味だお前、大切な人の命を失うって」


 少女の言葉を聞いた拓斗は途端に顔の表情を暗くし、鋭い目でにらみ、声を低くしてそういった

 さっきの、呆れた表情が嘘みたいに、まるですでに何人かの人を消してきたベテランの暗殺者のようだった・・・


 それに対し、少女はさっきの狂ったような笑顔をやめ、クルリと体を拓斗と反対の方向へ向き、両手を後ろで組み


「うーん、君がこの【ピースラグナロク】に異議申し立てがあればこのゲームを降りていいよ」


 少女はそういいながら、再び拓斗のほうを向くとニヤリとした表情で


「ただし、それで君の大切な人の命がどうなっても私は知らないよ♪」


「・・・まさかお前、俺に脅しをかけているのか。・・・大切な人たちを人質にして」


 拓斗がにらんだ目で見てそういった瞬間、少女は急に高らかに笑いだして


「あーはっはっはっはっは、イーヒッヒッヒ、そうなんだよ。私はね、今までお前みたいな奴の大切な人を人質にしてね、ゲームのコマにしてきたんだよ!」


と信じられないぐらいなことをいい始めた!


「お前みたいな優しい奴はね、大切な人たちを人質にして脅すとな、簡単にコマになってくれるんだよ!」


「ニュースで俺みたいな高校生の行方不明者が続出してるって・・・・・まさか、あれはお前が!」


 拓斗のその言葉に少女は狂ったような笑顔の表情で


「そうさ、お前みたいな才能がある奴らを次々と召喚して、ゲームのコマとして扱ったんだよ、私の勝利のためにね!」


 傍から見れば、少女は完全に許されないことをしている。だんだんと拓斗の怒りのゲージがこみ上げようとしていた。


「でもね、今まで呼んだ奴はどいつもこいつも世界を救う前にやらかしてね」




 そういいながら少女は両手を組み、今まで自分がゲームのコマ"アバター"として選んだものたちの末路を語った



 あるものは、世界を救う勇者の素質を持ったものだった・・・けどダメだった。なにせ、そのものはプライドが高すぎて誰にでも構わずに上から目線。そのせいか一緒に戦ってきた仲間からたくさんの反感を買い、とある怪物との戦闘の中、背中を剣で斬られた。・・・仲間の手によって。

 あるものは、素晴らしい才能を持った青年だった・・・けどダメだった。その力"スキル"を駆使して活躍をつづけた。でも、青年はそのスキルのせいで狂ってしまい、人を次々と殺戮する凶悪な殺人鬼になってしまった。狂ってしまった殺人鬼の最後は・・・処刑であった。

 あるものは、太陽のような優しい心を持ったものだった・・・けどダメだった。あまりにも人を疑わない性格のせいで、その世界の悪い人たちに騙され、挙句の果てには誰にでもいいように利用され、たくさんのいやなことを経験した。・・・そしてそのものは廃人に。



 その他にもいろいろな人を召喚して、勝利するためのゲームのコマにしても、結局は自分の私利私欲やあれやこれやで他の召喚者に負けるのがほとんどであった。


「で、次に目をつけたのがすべてのステータスが人間離れした平和主義者・・・つまり、夜空拓斗・・君なんだよね♪」


と少女は懐から二つ目のキャンディーをとりだし、拓斗に「どうぞ!」とにこっとした顔であげた


「ど、どうも。・・・うっ、す、酸っぱい!」


 少女からもらったキャンディーを一口かじると、あまりにもキャンディーが酸っぱすぎて拓斗はその場で少しぐらい体をジタバタした!


「君なら今から渡すスキルを誰よりも正しく、それにうまく使えるはず♪」


と少女は満面な笑顔でそういった



 ふと、ちょっとした疑問点が頭に浮んだ拓斗は、それを少女に聞いてみた


「誰よりも早くっていうけどさ、もし他のプレイヤーが先に異世界に入られたらどうするんだよ。まったくのフェアじゃないだろ?」


 そう、今二人が話しているうちに他が異世界を先に救ってしまう可能性があるのだ。それはゲームとしてどうなのかと拓斗は思った



「心配は無用だよ拓斗、今の時間はプレイヤーがゲームのコマを選ぶ期間なんだ、その期間中にコマ"アバター"を選び、スキルを与えて説明するのよ♪」


と、少女は拓斗の疑問に対して説明をしてくれた



「拓斗が質問してくれるなんて、私の"アバター"として【ピースラグナロク】に参加してくれるのね!」


 少女はそういって、翡翠の瞳を輝かせながら、拓斗の目の前でニコリと笑みを出した

 

「・・・まあ、大切な家族を人質に取られたら、こっちは従うしかないからな。お前のお望み通りに"アバター"になってやるよ」


 拓斗は少女の要求通りに異世界を救うゲーム【ピースラグナロク】コマ"アバター"になるようだ。家族を人質にとられているからしぶしぶだけど


(もし、ここでゲームの参加を断ったら、俺の家族が命がこいつの手によって・・・)


 そんなことを思ってしまう拓斗、自分が少女の要求を断ったせいで家族の命が失ったら、絶望の淵に落ちてしまう・・・


「・・・もしも、ピースラグナロクに負けてしまったら、人質はどうなるんだ?」


 拓斗の負けてしまった時の質問をした。それに対して


「さすがに人質に手をかけないわよ。あくまでも、参加させるための人質だからね。参加してくれたら、人質は解放してあげるわ♪」


と少女はにこりとした笑顔で答えた。


 少女が負けたものから大切な人たちを奪うことをしないとわかって、拓斗は心のどこかで安堵した


「でもね、それをいってしまったらね、わざと負ける人が出るかもしれないから、人質を解放している件に関して秘密にしてるわ」


と少女はそういいながら、懐から三つ目のキャンディーをとりだしてガリガリと食べ始めた


 それじゃあ、なんで自分にはそんなことを話すのかと拓斗は目を閉じてそう思った・・・




 ・・・時間は少し経ち、少女は【ピースラグナロク】の大まかなルールを拓斗に話し始めた!


「このゲームはさっき話した通り、天使たちが人々の中からゲームのコマ"アバター"を選択し、天使がギフト"スキル"を三つを与える。それで、スキルを与えられたアバターは天使に契約を結び、異世界にいってその世界を救う。」


 拓斗は少女の説明を聞いている途中で、ある疑問が浮かび、少女に聞いてみた


「異世界を誰よりも早く救うのが目的ってことは分かったけど、具体的にどうやったらその世界を救った判定になるんだ?」


 拓斗の疑問点は、どうやったら世界を救った判定になるのか?

 世界を救うにもいろいろある。例えば、魔王が世界を征服しているから、魔王を倒して世界を救うとか、部族の争いでみんなが困っているから止めるとか。

 そんな拓斗の疑問点に少女は腕を組みながら、うーんと頭を傾げた。


「うーん、それは実際に行ってみないとわからないんだよね。異世界に転移するとね、その世界の救う条件がプレイヤーの天使とアバターに出るんだ♪」


 それを聞いた拓斗は「なるほど!」とうなずき、納得をした



「それじゃあ、大まかなルールを一通り話したから、あとは三つのスキルを与え、私と契約をしたら、とりあえずはオッケーよ♪」


「そういや、まだお前の名前を聞いてなかったな。アイツとかこいつとかお前とかの呼びは多分きついし、名前を教えてよ」


 少女は「確かに教えてなかったわ!」と両手をたたき、拓斗に自己紹介をした



「私はこの世界に存在する五つの教団『天界五大教団ヴァルハラフィフス』の一つ、『エルランサー』そこのトップである"エルラ"よ。ゲームの間はサポートしてあげるから今後ともよろしくね拓斗♪」


 エルラと名乗る少女は、両手を腰におき、とびっきりの決め笑顔を拓斗に見せそういった!

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