第1話 ゲーム前のはじまり

 青い空、白い雲、心地よいそよ風、きらきらと明るくて眩しい太陽、空気も澄んでいる

 ごく当たり前な日々を過ごせるほどの平和な日常


「うーん、やっぱりのんびりしながら見る、空の景色は格別で平和を感じるなあ」


と黒髪の青年"夜空拓斗"はそういいながら、2階建ての屋根の上で仰向けになりながらのんびりと過ごしていた。

 毎朝、こうして屋根の上でのんびりと過ごすのが彼の日課らしい


「これなら今日も平和に過ごせそうな一日になりそうだな」


「・・・お兄ちゃん、屋根でのんびりしてるのは結構なんだけど、危ないからさっさと降りてよ」


 近くの窓から聞き覚えのある、女性の声が聞こえてきた


「おお、この声は俺の妹である沙代里じゃないか!」


 聞こえた声の正体は拓斗の妹、"夜空沙代里"である

 茶髪のポニーテイルが揺れる妹は、中学生には見えないほど成熟した雰囲気を持ち、そのかわいらしい顔立ちは誰もが振り返るほどだった


 そんな妹がこちらのほうをにらみながら、声を低くして


「お兄ちゃん、さっさと降りないと、朝食なしで学校に行くようになるけど・・・」


「ふっ、その心配はない。今から降りようとしていたからなっ!」


 そういいながら、拓斗は屋根の上から大ジャンプをかまして、庭にドンと着地した

 普通の人間なら、2階の屋根から大ジャンプで降りたら怪我をしてしまう

 怪我はしなくても捻挫とかでどこか負傷するに違いないのだが、彼はいたって無傷だった


 そんな兄の行動を毎朝も見ている妹の沙代里は呆れながら


「・・・はあ、お兄ちゃんはなんで、屋根から大ジャンプをしても無傷なんだろう。・・・まあ、今更なんだけど」


と沙代里は諦めた感じで朝食の準備をしに、1階のキッチンに向かった。




 そんな兄妹の光景を遥か上の世界から一人の少女は見ていた。


「イーヒッヒッヒ、これはいい光景を見せてもらったわ!」


 少女は狂ったように笑いながら続けざまに


「これは、久しぶりに当たりを期待してもいいかもしれないね」


といいながら楽しそうな雰囲気で拓斗を見ていた。




 拓斗はコーヒーを飲みながら正面にあるテレビを見ている

 そこには一本のニュースが流れていた


<ここ最近、高校生の行方不明者が続出しています。行方不明者は未だに見つからずにいます>


 ニュースで流れたのは最近多発している高校生行方不明のことだった。


「最近、物騒だよねお兄ちゃん、他の地域でも高校生が行方不明になってるって友達から聞いたよ」


「ふーん、本当に物騒だねえ。平和な日常を望んでいる身としては、非常に不愉快な事件だ」


と二人は朝食を食べ、行方不明のニュースを見ながら話した


「高校生の行方不明者が続出だから、お兄ちゃんも行方不明になってしまうんじゃ」


「こ、怖いこというなよ沙代里・・・、もし本当に起きてしまったらどうするんだよ」


 拓斗は冷や汗を出しながら、朝食のパンを一口食べた!




 学校に行く通学路


「あ、お兄ちゃん、そういえばなんだけど」


 二人で学校に行く途中、沙代里は何かを思い出したかのように


「今日、お父さんとお母さんが出張から帰ってくるらしいよ」


「な、なんと、父さんと母さんが今日、出張から帰ってくるのか!」


「・・・うん、だからそういってるんだよ」


 拓斗と沙代里の父と母は二人ともに海外で働いているため、基本的には妹と二人暮らしをしている

 でも、そんな忙しい父母でも、数ヶ月に二、三回は帰っているので二人は全然寂しくはなかった


「で、父さんと母さんはいつぐらいに家に帰ってくるんだ?」


「たしか、17時ぐらいには帰ってくるってお父さんがいってたよ」


「へえ、そうなんだ。だったら、今日の夕飯はちょっと豪勢にしないとな!」


「やったー、今日は豪勢な夕飯だー、お兄ちゃん大好き!」


という感じで、二人は楽しく会話をしながら通学路を歩くのであった。




 学校が終わり放課後


 妹は中学の部活があって帰りが遅くなることが多いのでいつも、一人で家に帰っているのが当たり前だった。

 そんな感じでいつものように一人で帰ろうとしたら


「うん、ここに神社なんてあったのか?」


 目と鼻の先に見覚えのない神社があった

 見た目的には10、20年前に建てられたと思わしき木造建築でどこか風情を感じさせる神社だった。

 

「・・・おかしいなあ、ここら辺はよく通っているから記憶してるけど、こんなところに神社なんてなかったはずなんだけど?」


 昨日までここになかったはずの神社に拓斗は疑問に感じていた


 拓斗は疑問に思いつつ、気にせずに神社の前をそのまま素通りしようとして帰ろうとしたが、神社の前を通ったその瞬間、神社から何か不気味な音が聞こえてきた!


「えっ!なんか神社から不気味な音が聞こえるんだけど・・・」


 でも周りの人々は不気味な音に全く気付かず、神社の前を素通りしていった

 というか、周りの人たちがこの神社の存在を認識しているかも怪しい。もしかしたら、自分だけが見えているかもしれない。


「なんで、周りの人は素通りして行っているんだよ。・・・もしかしたら、この神社は俺にしか見えていないのかも知れない」


といいながら拓斗は恐る恐る不気味な音がする神社へ歩いて行った。


 拓斗が神社の鳥居の下をくぐる瞬間に神社から光が一気にあふれ出し!


「な、なんだ、急に光が・・・う、うわああああああああああああ!」


 拓斗は光に飲み込んだかのようにその場から姿を消した


 そして、そこにあった謎の神社も拓斗同様になくなってしまった。




「・・・おい」


(う、うーん、誰かに呼ばれてる気が・・・)


「さっさと目を覚まさないか夜空拓斗!」


「!!」

 

 謎の声ではっきりと目を覚ました拓斗!

 目を覚ましたら、そこはさっきいたところではない見慣れない風景が目の前に広がっていた。

 周りには無数の星々が飛び交い、月に酷似した惑星が青年の上にあり、今にも接近しそうな感じで、どこか神秘的で、まるで宇宙空間ような場所であった!


 いきなり、見慣れない風景が自分の周りに広がっていることに拓斗の頭は混乱状態になった。


「な、なんだ!ど、どこなんだここは。さっきまで俺は神社にいたはずなのに・・・」


 拓斗が混乱状態になっていると


「はあ、やっと目が覚めたか夜空拓斗・・・」


とこの世とは思えないぐらいの美しい少女がこちらを見て溜息を吐いていた。

 銀色の長い髪をなびかせ、翡翠のように輝く透き通った瞳を持つ、まるで女神のような美しい少女だった。

 

 少女は未だに混乱状態になってる拓斗を見て


「まあ、混乱になるのも仕方がないか。なにせ、ここは普通の人間では一生これないところだからね」


と銀髪の少女は少し笑いながらいった。


「・・・一生これない、それって一体どういうことなんだお前。じゃあ、ここはどこなんだよ」


 拓斗は少女にそういうと少女は狂ったように笑いながら


「キャハハ、ここはな、私たち天使の世界"ヴァルハランド"という場所だよ♪」と答えてくれた


「"ヴァルハランド"ね・・・とても神秘的ですごそうな名前の場所だな」


「・・・まあ、私的にはもうちょっと名前はなんとかならないかなと思うけどね」


 拓斗の感想に対して少女はちょっとだけ何ともいえない顔で返した


「な、なんで俺はこんな神秘的なところに来てしまったんだ」


 拓斗が疑問を問うと少女はにこりとした笑顔で


「拓斗、君には私の勝利のため、ゲームのコマ"アバター"になってもらうよ、イーヒッヒッヒ!」


とだんだんと狂ったような笑いを拓斗に見せる。

 そんな少女に対して拓斗は


「ゲーム、コマ、アバター・・・いきなりわけわからないこといってるんだ」


と疑いの目をしながら口を曲げ、少女に向かって返した

 少女は疑いの目をしている青年に向けて


「まず、今日朝のあなたの行動をここから見させてもらいました」


と少女は狂ったかのような喋りから、急に、真面目な感じで話し出した。まるで別の人が話しているみたいだ!


「それで私はそのあとにあなたのことを調べさせてもらいました。並大抵の一般人とはかけ離れた身体能力、洞察力、判断力、素晴らしい力を持っているわ」


 少女が急に真面目に喋りだしたことに拓斗は少し戸惑いながら


「そ、それがなんだよ・・・それって俺が呼ばれたことに関係あるのか!」


と青年がいったら、少女はにやりと笑みを浮かべ、キャンディーを懐からとりだし、青年の前に突き出した!

 

「私たち天使は、すばらしい能力を秘めている人間を求めている。じゃなかったら、ゲームには勝てないからね、イーヒッヒッヒ!」


と少女はさっきの真面目な感じをやめ、狂ったような笑いをした。



「ということで、これから拓斗には【ピースラグナロク】に私のコマ"アバター"として参加して、優勝をしてもらうわ!」


 少女はそう話した。突き出したキャンディーを「ガリガリ」と嚙み砕き、食べながらニヤリとした顔でね・・・

 

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