第43話 101階
明日の今頃は第1437世界の人達とドンパチするか、話し合いをしているんだろうなあと考えながら、自分は101階をちょっとだけ覗いてみる。流石にフィルスちゃんとエレーナさんを連れてはいけないのでソロでの活動になるけど、もしも第1437世界の人と鉢合わせしたらキッチリ殺さないとね。
第1438世界で今のところ、101階に行けるのは6人だけだし、そのアドバンテージを活かさないわけにはいかない。そう思って101階へとエレベーターで移動するとそこには森が広がっていた。木々が生い茂り、遠くは見渡せない感じだね。今までのいかにもなダンジョンとは打って変わって開放感のある階層だ。地味に空が見えるんだけどこの塔どうなってるの。
……中央にあるエレベーターから、何本か道が伸びていてある程度の道幅はあるんだけど、基本的には鬱蒼とした森だ。よく考えたら地図がないからマッピングをしていかないといけないんだけど、そういう技術は持ち合わせていないし森の中を歩くのって地図があっても難しい。
1階から100階までの広さのままならこの森もそこまで広くないんだけど……これ階段の位置は今まで通り四隅で固定かな?四隅で固定なら良いけど、固定じゃなかったら不味いし、そもそも隅というかこの階層に端はあるの?
……木に登って、空に登る階段を探すけどそんなものはどこにもない。とりあえず森の中を探索するしかないってことかな。新しいエリアに入ったんだからチュートリアルぐらいしてくれたら良いのに。
本当は101階の魔物と戦闘もしてみたかったんだけど、これは下手したら迷って餓死しそうだったので一時撤退。荷物もそんなに多く持ち込んでなかったしね。101階は、戦うにしても話し合うにしても第1437世界との決着が着いてから探索を開始しよう。……別にここからエレベーターが20階毎になってもおかしくはないし、101階をクリアするなら十分に準備しないと。
101階をちょっとだけ覗き見して、すぐに1階に戻って塔から出たら、例の詐欺師の女を買いに行くけど既に売却済みなのかその場には居なかった。1200万円をポンと払える人がいたということだけど非常に勿体ないことをした気分になる。男の方は当初の予定通りシュヴァルツさんが購入したね。名前はラングルさんと言うそうで、案の定転生者。
どうやら言い包めスキルを貰って転生して、転生後に偽装スキルは生えて来たそうだけどたぶん相当な悪事を働いたんじゃないかな。……パッと思いつくなら食品偽装とかその辺。まあ今後はシュヴァルツさんに絶対服従なので嘘もつけないと思う。シュヴァルツさん自身は結構真面目なオタク。チャラ男風の外見と全く一致しないから困る。
「森ですか……」
「当然ながら、エレーナさんもフィルスちゃんも森の中で探索活動なんて出来ないよねえ」
「ケホッ、無理です」
「焼き払いたいんだけど、たぶん火が付かなさそうなんだよね」
6人パーティーが解散となったことで、問題となるのはうちのパーティーの探索力不足。自分は一応地図さえあれば何とか探索できるけど、エレーナさんはちょっと怪しいし、フィルスちゃんは地図を持っても迷う。
まあ地図があっても塔の中は戦闘を挟むと現在位置を見落としやすくなるし、しょうがないことではある。101階以降の森林地帯を駆け抜けるには、マッピングが出来る人が欲しい。
「あの……地図なんですけど向こうの世界で買えば良いと思います?」
「はあ?
……あ、そうか。時間停止使って相手の世界に潜り込んじゃえばこっちのもんなんだ。
いやでも向こうの方が文明進んでたら結局身分確認で詰む気がする」
「こちらの世界に紛れ込んだ場合も発覚しますし……いえ、こちらの世界だと塔の街から出ない限り何とでもなりますね」
「……塔の出入りの場所に例の水晶を置くように進言しておこうか」
エレーナさんが時間停止で向こうの世界に潜り込む案を出してきたけど、上手く行けば相当多くの情報を得られる上に厄介な敵を暗殺して帰ってこられるね。ただ、それをするにはやっぱりステータスを偽装する力が必要になる。
そもそも鑑定で筒抜けなことがおかしいと思うんだよね。……いや待てよ?そもそも見つからなければ何とかなるんじゃ?
「エレーナさんの隠れ身スキルって自分1人だけが対象だっけ?」
「複数人でも可能ですけど、その場合はその複数人全員の回避値が高くないと……カリンさんと2人でならいくらでも潜伏出来そうですね?」
「よしじゃあ100階での打ち合わせ後、突貫出来そうなら突貫しよう。
フィルスちゃんはお留守番お願い」
「見つかったら地獄ですよ!?」
「見つからなければ大丈夫」
ふと、エレーナさんの隠れ身スキルの存在を思い出したけどどうやら複数人を対象にすることも可能らしく、上手く行けば向こう側の世界でコソコソと暗躍が出来そう。……個人的には向こうの世界がどんな感じか気になるし、行ってみたい気持ちはあるね。
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