第42話 偽装

最終的には物理的に口封じしたけど、70レべの戦士の人から得られた情報として第1437世界が134階まではクリアしていることと、100階の封鎖をしていた面子は攻略組の一部という言葉はある程度信用しても良い気がする。まあどうあってもあそこで自分を鑑定した人間を、殺さない選択肢はなかったけど。


「……鑑定持ちならまず間違いなくステータスは見られてただろうし、もう既に封鎖している面子を殺しているなら間違った行為じゃないと思うよ」

「だよねえ。

で、ミリーさんは100階行くの?」

「レクアが戻って来るし、3人パーティーでなら100階のボスを倒すのは行けると思うけど……相手の攻略組ってMAX130レべ付近が出てくるって認識で大丈夫かな?」

「最高到達階数が134階ならそのぐらいじゃない?まだ101階に足を踏み入れてないから分からないけど」


一応現段階でも101階には行けるんだけど、普通の魔物に加えて第1437世界の人間と鉢合わせする可能性があるため第1438世界の面子はまだ誰も足を踏み入れていない。……これ先行有利過ぎるなあ。200年前から一定の人数を100階に送り出していたのに、封鎖が解かれたタイミングでの100階クリアが出来なかったのは本当に不運でしかない。


さて。レクアさんがミリーさんのパーティーに戻って、初代皇帝様を含む100階攻略組を見送った後はシュヴァルツさんと情報共有。……『破壊』はわりと大雑把で何でも出来るスキルであり、戦闘力もあるこの人は何だかんだでこの世界のキーになる人だと思う。


「シュヴァルツさんは神様の説明を聞いてどう思った?」

「……ソシャゲだな。それもクソゲー寄りの、サーバー同士で戦わせるようなソシャゲ」

「うん。ソシャゲだね。プレイヤーが神様の」

「最後の質問は分かりやすかったぞ。

しかしまあ、こうなるなら15階の未探索エリアは第1437世界と繋がるんじゃねえか?」

「可能性としては高いと思うけど、流石に相手世界側の15階まで辿り着いてからじゃないと開かないだろうし、すぐには開かないんじゃない?

……もし開いたら相手の世界から大量の人が流れ込んで来るだろうし、終わりだね」


シュヴァルツさんもあの運営からの説明を聞いて、ここがソシャゲのような世界だと認識をする。……2人で一緒に塔から叩き出された仲だし、100階をクリアして「はい終わり」の関係にはしたくないね。


とりあえず80階で救助して、そのまま社畜販売所へと売られた2人組がステータスを改ざん出来るスキルや職業である情報を共有し、男の方をシュヴァルツさんが、女の方は私が引き取る提案をしたら無事通る。……たぶんこの世界で、ステータスを偽装出来る力は大事になって来ると思う。


女の人は珍しいわけじゃないけど『発火』スキル持ちだからわりと応用も効きそうなんだよね。職業が詐欺師で、どうやったら詐欺師に至れるのか全然分からないから信用するつもりはないけど。


男の人は『偽装』と『言い包め』スキル持ちだからほぼ確定で異世界人。固有スキルを2つ持ってるのはもう異世界人と思っていいだろうね。……こっちの方が価値は高そうなんだけど、社畜で男を買うのはちょっと抵抗感ある。


逆にシュヴァルツさんはあまりそういうの気にしない感じだね。クオンさんで手痛い失敗をしたからかな?あとはまあ、シュヴァルツさんの手持ち資金的に、男の方しか買えなかったのもある。たぶんシュヴァルツさんは1200万円のお金をポンと払えない。


「……というかそういう偽装とか詐欺師のスキルの詐称を見破れるならエレーナの鑑定って凄い価値なんじゃないか?」

「まあ間違いなく普通の鑑定じゃないし今後は生命線にすらなりそう。

そういえば初代皇帝の鑑定した?」

「しましたけど……何ですかあれ。

たぶんほぼ全職業の5レべスキルや10レべスキルを持っていたんですけど……ステータスも全て2000近くありました」

「あー……中級職とかは全て100レべまでコンプリートしてそう。詐欺師も持ってるのかな?

双弩兵が見つかってなかった辺り、50で止まってる職業もいくつかはあるだろうけど200年も時間あったらねえ」

「……あいつが100階に挑戦してたらもっと早かったんじゃねえか?」

「そうとも限らない。

相手世界のレベル上限だけが200レべになっていたとして……上級職の剣豪が200レべなら攻撃は最低でも1800だし」


エレーナさんの鑑定は、初代皇帝様の偽装されていたステータスすら看破したようで今後も頼りになりそうなことが分かった。未だに普通の鑑定だと世界欄の追加ってなかったから、今後エレーナさんだけが相手の出身世界を一方的に把握出来るのかな?


……24時間後、自分とシュヴァルツさんもエレベーターで100階に向かうことを決めてその場は解散した。100階をクリアしたというのにお祭り騒ぎにはなっていない辺り塔の街、バーメインの住民達も不安になっていることがよく分かる。向こうの世界は長い時間をかけて準備をしていただろうし……自分が向こう側の立場なら嬉々として侵攻計画を立てていたと思うから覚悟しておこう。

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