第36話 80階

塔の77階から80階までは現状塔の中でトップクラスに嫌らしい敵が続く。77階は下手に攻撃を受けると猛毒を受ける大きなサソリ。78階は魔法攻撃をして来る上に鋼鉄の槍を持っており、俊敏な動きで空を飛んでいるインプ、79階は全身が鉄でできている巨大なゴーレム、80階は地面から急襲してくるサメ。


中々に殺意が高い感じの階層が続いていて、80階に到達していれば戦闘力的にはAランクの評価を貰える。まあ全部斬撃飛ばす奴で一撃だし自分が疲れたらシュヴァルツさんが剣を構えながら黒いオーラを投げつけて一撃で倒しているから1階層と何も変わらない。シュヴァルツさんは何で剣持ってるのこの人。たまに黒いオーラを剣に纏わせているけど黒いモヤみたいなものを投げた方が速いという。


何というか、敵の防御力を無視して攻撃している人が2人もいるから苦戦がない。99階までトラップみないなものもないし、マッピングが済んでいるから迷う要素もない。99階まで何回も行ってるレクアさんがいるのも大きいね。


ただまあ、地面を泳ぐサメは中々厄介で後列に初めて被害が出た。レクアさんの結界がなかったら結構なダメージを負いそうな感じだったけど、レクアさんが結界という名のシールドを張ってくれていたお陰で襲われたフィルスちゃんはノーダメージ。このパーティー強い。


「ちなみにこのサメってフカヒレとれる?」

「とれるわよ。

……いやさっきフィルスちゃんが危ない目にあったのに何で乱獲しようとか考えてるの!?」

「私単独だったら危険性なくない?アースシャーク君の命中250しかないし確定で避けれそう」

「……今のあんたなら噛まれたところでダメージ入らないでしょうしね。

アースシャークは地味に高騰している素材だし、単独で狩るなら止める気はないわよ」


剣聖のレベルアップが40を超えてからさらに遅くなったので、ここで塔に1人残って居残りレベリング。この近辺では一番高い魔物だし、食べれるからね。他の5人がエレベーターで1階へ戻るのを見送ってから、サメの索敵を開始。


たまに背びれが地面から生えているので、そういう時はこちら側から攻撃出来るしそこまで嫌らしい敵ではない。ただたまに潜っている奴から奇襲を受けるのが厄介だし、仲間を呼ぶ速度も早いからあっという間に窮地に陥り全滅するパーティーもある模様。


普通のパーティーだと、気付かない内に後列の1人が食べられたとかあるみたいなんだけど……そこまで大きい個体でもステータス的にはオール300ぐらいだから何とでもなる。


今の自分のレベルは48だし、ここで50まであげちゃおう。そう思って自慢の敏捷を活かし、80階を駆け回っていると救援要請の音が鳴り響く。


ピーという音が3回鳴った後、ビーという音が3回鳴って、また3回ピーという音が鳴る。これを繰り返しているのでどう考えてモールス信号を参考にした救援要請の音だね。冒険者ギルドではこの音がなる魔道具を売っているので、それを起動したということ。すぐに音が消えてない時点で、誤作動じゃなくて本当の救援要請だね。


救援要請は必ず助けに行かないといけないわけじゃないけど、報酬が美味しいし恩を売れそうだから人助けはしておこう。音の大きさ的に、かなり近いだろうしね。


急いで駆けつけると、サメが10体ぐらい群がっており、その中央には簡易的な椅子の上に立っている男性と、右足のふくらはぎ部分から先がない女性が戦っていた。どう見てもピンチだし、さっさとサメの集団を倒す。これ、報酬は確か敵の数×階層×1000円で固定。つまり80万円ってことでやる気出て来た。


時間を停止させ、顔を地面から出しているサメたちを全部一刀両断にしていく。お、一気に50までレベルアップした。今までは6分割されていたけど、今は経験値が全部自分に入ったからかな?


「あ、あれ?助かった?」

「助かりましたよ。サメ10匹、救援要請に従って殺したので報酬の80万円を払ってください」


時間停止を解除して、声をかけたら自分に驚いて椅子から転げ落ちる男の人。ふむ、鑑定を使ってみるとレベルは90で高いんだけど初級職の剣士のままだね。転職を100レべでしようとしていたのかな。


もう一人の女性の方も鑑定すると、こちらは火属性魔法使いでレベルは44と低め。初級魔法使いからの転職先にあったはずだからこっちは中級職だね。まあでもステータス的に低いしこの階層で苦戦したのは納得。むしろどうやって今まで突破して来たんだろう。


「あの……私が戦っていたアースシャークは3匹だったんだが」

「……サメ10匹、救援要請に従って殺したので報酬の80万円を払ってください」


鑑定の結果、この2人の関係性も大体把握できたところで向こうの男性から報酬の値切りが来たのできっちり80万円払うよう再要請。もしかしたら最初は3匹だったのかもしれないけど、実際に囲んでいたサメの数は10匹だ。……んー、きちんと録音出来る魔道具で救助前に言葉を交わすべきだったのかな。いやでも命の危機の前にそういうことしてられなくない?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る