第33話 準備

今現在、シュヴァルツさんと自分、あとおまけでクオンさんは塔の最高到達階数が0階だ。よって最初は1階から登り始める必要があるため、10階までの2日間でパーティーの役割をしっかり分担しながら塔のクリアを目指す。


目標は1日につき5階分のペース。これでも頭おかしいぐらいには早い攻略ペースだし、休みなしで行けば20日で100階に到達するね。一定以上の冒険者ランクを持つ冒険者同士がパーティーを組んだ場合、敵を倒した際に貰える経験値が平坦になる道具というか腕輪を受け取れるため、それはありがたく活用する。


この魔道具のお陰で、自分とシュヴァルツさんが前衛で暴れまわって全部倒しても経験値は全員に行き渡る。……自分が斬撃を飛ばして、シュヴァルツさんが黒いオーラを投げ飛ばすだけで低階層の魔物たちは吹き飛ぶから本格的な戦闘が始まるのは塔の半分を過ぎてからになるかな。


「5階に着くの、前回よりずっと早かったんだけど未来予知って便利だね」

「階段の場所が分かっているのは普通よりもずっと楽だと思うわよ。

魔物が大量発生しているルートとかもわかるから任せて頂戴」

「おおー。魔物が大量発生してるルートに案内してくれるのは嬉しい」

「……あんた何でそんなに好戦的なのよ。下手したら事故るから避けるわよ」


ランダムに発生する階段の位置を、レクアさんは未来予知で把握できるため前回の10階までのタイムアタックよりもずっと早く5階に到着。そのまま10階まで目指さないのは、最初はペースのキープを重視しているからだね。


これぐらいのペースならテントを張って、晩御飯の用意をしてもまだ時間の余裕があるね。軽く身体を洗ったり、フィルスちゃんとエレーナさんに戦闘訓練させたり。


ちなみに今日の晩御飯はクオンさんとレクアさんが作ってくれたシチューっぽいスープと日持ちするタイプの硬いパン。レクアさんは元々のパーティーでも調理番だし、クオンさんは料理が得意なタイプの女の子。逆にフィルスちゃんと私とシュヴァルツさんは全く料理が出来ない。


エレーナさんはある程度出来る人っぽいけど調理班の人数が足りているので弓矢の訓練。いくら弓道部出身とはいえ、前衛が戦闘している後ろから矢を放つのは難しいし勇気がいることらしい。万が一エレーナさんの弓矢が当たってもステータス的に私とレクアさんは大丈夫だけどね。ただシュヴァルツさんに当たると悲惨なことになる。


テントは2つ張っていて、小さい方はシュヴァルツさんとクオンさん用。大きい方はそれ以外の4人という割り振りになった。まあ男女で分けたら女性側が狭くなるし、クオンさんはシュヴァルツさんの社畜なのでこれがベストだと思う。


そして5階でのんびりとしていたら、自分達と似たような初心者パーティーが5階の中央エリアに駆け込んでくるけど全員男のパーティーだったのでシュヴァルツさんを呼んで威嚇。まだ若い人達ばかりのパーティーだったので、シュヴァルツさんが睨んでからはこっちの方に近寄らなくなった。


「……シュヴァルツさんって神様から名前を教えてもらってないんだよね?」

「ないな。

そっちもだろ?」

「うんまあそうなんだけど……たぶんシュヴァルツさんの神様の名前、シヴァだと思う」

「……俺も予想はシヴァだけど、奉納で神様の名前間違えたら不味いって聞くし生贄になる気はねーぞ」


そのまま見張りをしてくれるシュヴァルツさんに話しかけるけど、この人も頭回りそうな感じはするね。見た目がヤンキーというかチャラ男だから違和感が凄いけど、中身がオタクというか自分に近いと考えればまあ……。


……神様の名前を教えてもらえてないのは、鑑定対策なのかな?将来的に、神様の名前がバレていると不利益を被る可能性があるっていうのは流石に考えすぎかな。お、もう一組パーティーが来たからこれで今日この5階の中央エリアで一夜を明かすのは3パーティーだね。


少ないように見えるけど、これは単純に1階から10階までの低階層を彷徨っている冒険者の数が少ないことや、4階や6階に泊まっているパーティーもいるから3パーティーだけなんだろうね。多い時にはこのそこまで広くない中央エリアに10パーティーを超えるパーティーが泊まるらしいから、通路で泊まる可能性も覚悟しないといけない。


6人パーティーを組んでの塔2日目は特に大した出来事も起きず、無事に10階までたどり着いたので1階に降りてこの日は宿に泊まる。……うん、攻略だけを考えるとこの塔は相当イージーな感じがするね。2日に1回は宿でゆっくりできるし、毎回一泊二日の旅行に行ってる気分。


モンスターのレベルはドンドン上がっていくけど、急激に難しくなる階はないみたいだし、注意するのは大量発生だけかな。あとは50階にいる中ボスだけど……このパーティーで苦戦することはないでしょ。

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