第31話 喫茶店

露店巡りが終わった後は、レクアさんの行きつけである喫茶店みたいなところへ案内されるけどコーヒーが普通に出てくるんだねこの世界。そこで改めてお話するけど、話題に困った時に前世の話に頼るのは転移者、転生者あるあるらしい。


「私は前世で高校生だったけど……今世を含めると40近いわね。

2人は転移組だから、私の方が年上かしら?」

「俺は前世で死んだの20歳だったから倍近く生きてることになるな」

「私は14歳!」


とりあえずレクアさんは前世高校生で、生まれつきの難病を克服できずに高校2年生で死亡。シュヴァルツさんは前世大学生で、親に金出して貰って大学に通っていた話と月の小遣いが3万円という話からそれなりに裕福な家庭の一般人。死んだのは車が歩道に乗り上げて突っ込んで来たから、とのことだったのでプリウスミサイルだったのかな。


私は正直に話す理由がないので前世で死んだのは中学生という設定にしておこう。そしてこの3人と、エレーナさんに共通している項目としては「異世界に関してある程度知識があること」だった。要するに全員、オタクだったのね。


よく考えたらエレーナさんとか異世界物の小説知識がないと転生特典で鑑定なんて選ばないでしょ。シュヴァルツさんは前世で中学時代、高校時代と虐められていたようで、異世界転生に関しては希望していたレベル。


異世界転生願望は全員少なからず持っていた感じかな。で、神様に出会ってお願いを聞いて貰える流れはみんな一緒。その際、レクアさんとエレーナさんはそのまま転生を選択し、自分とシュヴァルツさんは転生の流れだったのを転移に変えたと。


基本的に神様達は、異世界人に転生して欲しい感じなのかな?自分もシュヴァルツさんも元の世界の身体とは程遠い身体になっているし、私なんて性転換してるし。


「まあみんな異世界に行きたい気持ちがあって、若い内に死んだ流れは一緒ってことだね。

あ、私は駅のホームから突き落とされました」

「一番ひでー死に方してるじゃねえか」

「いや自動車に敷かれるのと同じじゃない?

……レクアさん、何で頭抱え始めたの?」

「……えー、この感じだとパーティーリーダーは私が務めるのが無難だと思うのだけど、パーティーリーダーはカリンの方が良いって神託来たわ」

「神託って何?

あ、『信仰(モイラ)』『モイラの加護(小)』の他に『神託(モイラ)』ってある!?」


死に方談議をしていたら、唐突にレクアさんが頭を抱え始めたけどどうやらレクアさんは転生させた神様から神託という形で助言を貰えるようで、その神様によるとこのパーティーのリーダーは自分がベストらしい。


というかモイラは聞いたことのある神様だね。そう思って何の神様なのかレクアさんに聞くと運命を司る女神様らしい。まあレクアさんの能力的に、そういう感じの神様だとは予想してた。


この後、レクアさんから大人数のパーティーにおけるパーティーリーダーの役割についてレクチャーを受けるけど、まずはパーティー名を考えるのと役割分担を決める。あとは王国派か帝国派かを宣言しないといけないらしい。


「え、派閥の宣言とかそんなの必要なの?」

「99階到達者がいるパーティーは100階を目指す宣言をすると国から大規模なバックアップを受けられるわ。その際、王国からバックアップを受けるか帝国からバックアップを選ぶかはパーティーリーダーであるカリンが決めなさい」


……どうやら、この世界において100階制覇は相当な悲願らしい。まあ昔は大量に王子達が突っ込んでいるし、今までも数多の冒険者を送り出しては誰一人として帰ってきていないという事実が挑戦する判断を鈍らせる。


ちなみにこの世界の魔道具で『命の灯火』というランタンみたいな魔道具があるんだけど、このランタンの灯が消えるか消えないかで100階に突っ込んだ人が亡くなっているかどうかが分かる模様。そして大体の人は100階に突っ込んで10分から15分後、遅くても30分後ぐらいには死んでいるらしい。


ここからは推測になるんだけど、可能性としては99階から100階が一方通行、が自分の中では1番だった。その推測が『100階に突っ込んだ人間はほぼ確定で死んでいる』という情報により覆って……より最悪な方向の答えが導き出された。


「これもこの世界の冒険者トークでは鉄板なんだけどね、100階には何があると思う?私は100階の環境が灼熱とか極寒とかとても過酷なものだと考えているんだけど」

「いや、とてつもなく強いボスだろ。時間停止とかがないと話にならないって感じの強さなんじゃないか?」


レクアさんやシュヴァルツさんの思考は、わりと一般的だ。どちらも可能性としてはそれなりにあるだろうけど、その程度で今までの99階到達者が全滅するとは思えない。


レクアさんの「クリアして良いタイミング」の話も加味するなら、100階で待ち受けているのは99階層にいる魔物よりもちょっとだけ強いボス敵と……100階にあるのであろうエレベーターまでの道に、待ち伏せしている人間かな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る