第24話 同期

スキル『破壊』を持つ男の人は、犬耳少女に耳打ちされた後、こちらのことを凄い目で見て来たからたぶん犬耳少女は鑑定役かな。自分と同じように、まだこの世界に染まってない感じがするし、たぶん自分と同時期にこの世界に来たんじゃないかな?


互いに初めましてと自己紹介をした後は、さっそく本題に入る。互いに新人冒険者同士、情報交換もしたいからね。転生者がいっぱいいることは相手も把握し始めたところだろうし、丁度良い。


「剣聖に、時間停止か。ここまで露骨な転生者を見たのは初めてだな」

「初代皇帝には会わなかったの?あの人の方が露骨な転生者だったけど」

「……どういう奴?」

「エターナルショタ。

生意気そうな感じの顔立ちに茶色のコート来てる10歳ぐらいの子供。再生持ち」

「んー、会ったことはない……ああああ!?あいつが初代皇帝なのか!?

めっちゃ子供っぽかったんだが!?」


そしてこの人も初代皇帝に会っているみたいで、自分にだけ特別に会いに来たわけじゃなさそう。あとこの世界に来てからの日数に関しては、自分とほぼ同じだね。大体お互いに2週間ぐらい前に転移して来た。


見た感じ色黒なチャラ男風ではあるんだけど、元々は一般的な太っちょのオタクだったとか。転移の際にガタイの良いイケメンを望んだらしい。で、気になっていたんだけどスキルの『破壊』は文字通り何でも破壊出来るっぽい。中々にぶっ壊れたスキルだと思う。加護はないから、自分と一緒で転生させた神の名前を把握できてない勢だね。


……90階に到達していない人がエレベーターで90階まで行くと、目に見えない壁で防がれるらしいんだけどこのスキルがあればその目に見えない壁とやらも破壊してくれるかな?時間停止+破壊で階層スキップ出来たら面白そうだし、やってみる価値はあると思う。


「いやまあ俺としても構わねえんだが、90階に行けるような知り合いがいるのか?普通に90階まで行くのも断られると思うんだが」

「ミリーさんに依頼したら90階の景色だけでも見せて貰えると思う。エレベーターで移動するだけだし。

そこから時間停止+破壊で見えない壁を突破して、そのまま90階に流れ込もうって話。

どうせレベリングに苦労しているんでしょ?」

「まあな。

スキルがあるからMPがある限りは問答無用で敵を倒せるけど、低い階層だと過剰火力だ」

「うわつよー」

「棒読み過ぎんだろ。時間停止の方が欲しかったわ」


ミリーさんや初代皇帝のような圧倒的上から目線がなかったし、なんだか同期って感じがするので気が合いそうではある。実際同期っぽいしね。名前はシュヴァルツさんで、犬耳少女がクオンさん。シュヴァルツさんは初手で帝国領の厄介者であるジャガーを狩っていたみたいで、それでお金があるらしい。


ただまあ自分よりかは狩りをサボっていたみたいだね。ある程度は観光とかも楽しんだエンジョイタイプか。まあ目的が合致したし、90階行ってみるだけ行ってみよう。


「ミリーさんまだこの街に居なかったけどとりあえずミリーさんのパーティーメンバー兼愛人で転生者のハプアさん捕まえたよ」

「……その愛人って紹介の仕方は何?

あとミリーが何を言ったのか知らないけど、本当にミリーに貸しがあるの?」

「あるある。だからエレベーター使って90階までちょっと行ってみて」

「はあ……まあ良いけど。どうせミリーが帰ってくるまで暇だし」


シュヴァルツさんと一緒に冒険者ギルドに突撃し、ミリーさんを探したけどいなかったのでミリーさんのパーティーメンバーについて探すと無事にハプアさんという人を見つけることが出来た。例の未来視持ちではないから、彼女がミリーさんのパーティーメンバーの残りの1人だね。


エレーナさんの鑑定によると、持ってるスキルは『健康体』で無欲系転生者かと思いきや、めっちゃ頑丈な身体を手に入れているようでパーティーの前衛を1人でこなしているらしい。まあ望んだ時には無欲だったんだろうけどね。スキルは成長するらしいから長年冒険者をしていく内に頑強な身体になったんでしょ。ちなみに加護はディエヴァスという神様。全くわかんない。


ついでにレベルも知ったけど拳闘士レベル78だった。めっちゃ強い。ただステータス的にはオール500程度らしいので自分の倍程度かな。たぶん攻撃が1レべ毎に+6ぐらいのはず。拳聖なら候補にあったから憶えているけど、こっちは攻撃が1レべ毎に+12で剣聖と同じだった。


あー、剣聖が剣士→剣客→剣豪→剣聖だから拳聖は格闘家→拳闘士→拳豪→拳聖かな?攻撃のステータスで比較すると1レべ毎に上がる数値が+3、+6、+9、+12って感じで成長するのか。


このステータスでいつもは90階から99階の敵相手に余裕を持って戦えているなら、自分達だけでもある程度は大丈夫かな。そんなことを考えて90階まで行き、謎の膜で行方を阻まれハプアさんからは「ほらそうなるのよ」的なお言葉を頂く。殴ってもビクともしないからステータスで判断しているわけじゃなくて謎の力で到達階層を把握しているんだろうね。


それじゃあまあ、この壁突破していこうかな。

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